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17 本当にミランダさん……だよね?

「み、ミランダさん……いつの間にそんなに強くなったんだい?」


「えっ? えっ? い、いやいやいやいやだなぁレイブンさんったら。普通ですよ普通!」


「い、いや。相当おかしかったぞ。あのビッグフットの一撃を物ともせずカウンターの魔法まで……」


 オーネスの村に着く途中のキャンプ地で、私はレイブンさんとマックスさんから怒涛の質問攻めに遭っていた。

 南無三。

 戦闘ではみんなの足を引っ張らないように&死にたくないで出し惜しみせずいつも通りやっていたら、こうなってしまった。

 というか、このパーティーでのミランダさんの強さ位置とかあんまし分かんないんだけど。

 レベル1で初期装備だったことからなんとなく察しは付いてるけど……。


《ふふんっ。私のマスターは強いんですよ!》


 どーだ思い知ったかと妖精さんが鼻高々に宣言する。

 そ、そんなにマスター推しをされましても……。


「いつもだったら俺やスラッシュの後ろに張り付いて……なぁ? めっちゃビクビクしてたってのに」


「うん。あと魔物に襲われそうになるとたまに気絶してたよね」


「へ、へぇえええ……じゃなかった! あっえっその…………鍛えて、ますから」


 2人に向けて親指の腹を天に向けたグーサインと気色の悪いウインクを見せつける。

 落ち着け。ええか。こういう時こそ笑顔忘れたらあきまへんで。

 苦しい時、悲しい時、辛い時、なんか誤魔化すのが面倒な時、

 笑顔が大事やで。どないにけったいな事が起こってしもても笑顔でおれば大抵の事は解決するさかい。


 今は亡きおばあちゃんの教えに従い、しきりに不気味な笑顔を見せつける私にも、仲間たちは素直に称賛の声を上げてくれた。


「だからかな? ミランダさん、すごくカッコよかったよ! 敵の前にバッと立ちはだかって……『雷魔法(サンダー)』に『竜巻魔法(トルネード)』! って!」


 レイブンくんのテンションは、完全に特撮か何かでヒーローが活躍するシーンを見た時の子供そのものだった。

 興奮して目をキラキラさせ、腕をぴょんぴょん揺らしてやがる。

 素直に可愛いです。お持ち帰りしたいです。


「あの土人形との修行の時からそうだったけど……ミランダ見てると日々のたゆまぬ努力が実を結ぶもんなんだなって、同じ人間として尊敬しちまうぜ」


 ああ……。チーム内外問わず強強(つよつよ)戦士なマックスさんにそう言ってもらえるなんて……。

 素直に感激です。お持ち帰りはご遠慮します。


 日々の努力どころかまだ三日坊主の域を出ない私ではありますが、これからも頑張っていきたいと思いますよ!


 スラッシュさんも遠巻きで会話には参加しなかったけど、私を見て「フッ……」と不敵に微笑んでくれたので良しとします。


 さてさてすっかり夜も更けて参りましたが、今晩のご飯は何になるんでしょうか。

 今からとても楽しみです。


「今日は釣りして獲物取ってこようと思うぜ」


 でっかいバケツと釣り竿を背負ってマックスさんが言った。

 出た出たキャンプ地恒例の『釣りイベント』。

 これはゲーム内でもあるイベントで、タイミングに合わせてボタンを押したりなんだりして、とりあえず自分が納得するか飽きるまで延々と楽しめる行事である。


 良い魚を釣ると食べた時にステータス上がるとか、次の戦闘時にバフが付与された状態で始まるとかじゃなかったっけ。

 まあこれから味わう魚なんでレアリティにさほど意味はない。

 獲った後の末路は換金所ではなく私たちの胃袋の中だ。


 よーし、久しぶりに釣りの腕を見せますか!

 余っている小さめの釣り竿を手に取って湖の釣りスポットに出向いていった。




「全然釣れねええええええっ‼︎」


 さっきから何百、何千と魚が食いついていったはしから逃げていく。

 おかしい。このミニゲームってそんなに難しくなかったはずだが。


 まてよ。もしかしてこれ『運の良さ』のパラメータが参照されるのか?

 そう考えたら、これまで私は自動的に先頭になる勇者くんで釣りしてたから楽に釣れてたというだけなのか。


 先頭メンバーを入れ替えれば誰でも釣りに参加できるのだが、ミランダさんで試した事は未だかつて一度もなかった。


 なんたる不覚。

 起こりうる全てのイベントを把握できていないとは、ゲーマー失格にござる。


 諦めてトボトボ帰ってきた私に、妖精さんが笑顔で出迎えてくれた。


《おかえりなさいマスター! 実は今良い事に気付きましたよ!》


「えっ。良い事? なんですか?」


《実は……マスターがかねてより育てていた植物たちですが、この度なんと収穫可能になりましたよ!》


「おおおおおっ! それはスゴイです!」


 箱庭農園を見ると、それはもう夢のような光景が広がっていた。

 どこもかしこもスタミナ草とスピードキノコの楽園。

 これは収穫、せざるを得ない!


 一手に大量のドーピングアイテムを確保してホクホクな私に妖精さんもにっこり笑っていた。


「あ、そうだ。これもまた増やせるんだよね?」


《ええ! それと今回マスターがとっても真心込めて育ててくれたので、この箱庭もバージョンアップしたのです!》


 それまで4×4くらいまでしかなかった農園のスペースが一気に8×8まで大幅に広くなっていた。


「よーし! ここにありったけの夢詰め込むぞ!」


 そうして私は回収したドーピングアイテムから新天地に植えられるだけ植えていった。


 スタミナ草、10枚。スピードキノコ、7つ。

 今回収穫できたのはスタミナ草が30枚、スピードキノコが10個だから、あと20枚と3つのドーピングアイテムが残っているわけだ。


「いただきまーす」


 私のダメダメ釣りとは違い、大豊作であったマックスさんのお釣りになった魚を、炎の料理人レイブンさんによって華麗な味付けへと転身していた。

 それらとまとめて頬張るように、ドーピングアイテムを混ぜ込んで食べた。


「うーん美味しい……!」


 ドーピングアイテムの不味さを吹き飛ばすくらい魚は美味しかった。

 とりあえずこれで大分先のレベルアップ分のHPを先取りしてしまったはずだ。

 敵の攻撃回避や行動順に影響する素早さは欠かせない。

 大抵素早さとHPさえあればどうにかなる。

 あとはMPと守備力と力と……うん全部だ。


 贅沢な料理とドーピングに満腹満足した私は、その後もスムーズに眠りにつくことができた。

 もう微かに雪道が見えかかっているが、キャンプ地の中では不思議と寒さを感じない。


 明日もどうにか生きるべく頑張るぞ……むにゃむにゃ。

 キャンプ地から見上げる夜空は綺麗な星が沢山輝いていた。

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