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六人掛けの食卓  作者:
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第一章 あの日

面白かったらはんのうしてほしいです!

                   はじめに



私は第三者であり、この話を公表する必要性があると判断したのでここに記録します。






これは、とある方から聞いたある家族の話です。仮にこの話の主人公をAさんとして話しましょう。


Aさんの家は六人家族で、母方の祖母の家であり、そして母の実家に住んでいたそうです。


その家はとても開放的で、とても広く古い家だったそうです。


家族構成は、父、母、母方の祖母、母の兄である叔父、そしてAさんと妹で構成された三世代家族です。


Aさんの祖母は朝早くに起床し、そのまま外に出て散歩をするような健康体で、母の兄である叔父はそこら辺にある会社のサラリーマンだったそうです。


父と母は共働きで夜勤が多く、AさんとAさんの妹が学校から帰るころには、家には祖母と叔父しかいないことがほとんどだったそうです。なのでAさんは家から帰ると、同じ部屋で寝泊まりをしていた妹か、叔父と一緒に過ごすことが多かったそうです。


Aさんは当時十三歳。


成績は普通で、どこにでもいる中学生でした。


Aさんの妹は十歳でしたが、勉強がよくできて、学年一位を取ることも珍しくなかったそうです。


家は決して裕福ではありませんでしたが、Aさんは幸せな家庭だと思っていました。


ただ、一つだけ。


今でも説明できない不可解な出来事があるそうです。


それはAさんが入る中学校の入学式の前日の夜でした。


翌日から環境が変わる緊張のせいか、Aさんはなかなか寝つけませんでした。


深夜二時ごろ。その日は天気が悪く、豪雨が続いていたそうです。


ふと目を覚ましたAさんは、トイレへ行こうとして部屋を出ました。


そのとき、リビングの明かりがついていることに気づいたそうです。


こんな時間に誰か起きている。


そう思って、廊下からそっと中をのぞきました。


すると、六人掛けの食卓に、妹が座っていました。


しかし、その様子が妙だったそうです。


妹は食卓の向こう側を見つめていました。


まるで何かを見ているように。


いや、何かというより。


誰かを見ているように。


顔色は悪く、肩はこわばり、今にも泣き出しそうな表情でした。


Aさんは不思議に思いました。妹が何を見てそんなにおびえているのか。


Aさんのいる位置からは妹が見ている先が見れなかったので、妹が何を見ているのかを見ようとして、Aさんは少し体を傾けました。


その瞬間です。


窓の外で大きな雷が鳴りました。


直後にブレーカーが落ち、リビングは真っ暗になりました。


Aさんは怖くなり、そのまま自分の部屋へ戻ったそうです。


もうそのころにはトイレに行こうとしていたことなど忘れ、考えを巡らそうとする自分を抑え、必死に目をつむり眠ったそうです。




翌朝、妹に昨夜のことを聞こうとしたのですが、妹の顔を見ると


本当に覚えていないように見えたので、Aさんは聞くことをやめたそうです。


それ以来、中学校で勉強や遊ぶことに夢中になっているうちに、あの夜のことを次第に忘れていったそうです。


そしてAさんは大学に入ると同時に実家を離れたそうです。


――それから十数年後。


祖母が亡くなったことをきっかけに、Aさんは実家の整理を手伝うことになりました。


死因は老衰だったそうです。


久しぶりに来た実家を懐かしみながら押し入れの奥から古いアルバムが見つかり、何気なく開いたそうです。


最初は懐かしい思い出ばかりでした。


運動会。


誕生日。


家族旅行。


ページをめくりながら笑っていたAさんでしたが、途中で手が止まりました。


あることに気づいたのです。


それはほとんどの写真に共通することだったそうです。


運動会にも。


旅行にも。


家族写真にも。


不自然なくらい、写っていたのです。


Aさんの隣に叔父さんが。


肩に手を置いている写真。


背中に手を添えている写真。


隣で笑っている写真。


一枚ではありません。


何十枚もありました。


それなのに、Aさんにはそのときの記憶がほとんどありませんでした。


写真は残っているのに。


思い出だけが、妙に曖昧だったのです。


違和感を覚えながらページをめくっていると、さらに気になることがありました。


妹です。


妹は写真の中で、ほとんど叔父を見ていました。


カメラではなく。


叔父を。


まるで何かを確認するように。


あるいは警戒するように。


最後のページ近くに、一枚だけ見覚えのない写真がありました。


食卓を囲む家族写真でした。


父。


母。


祖母。


叔父。


妹。


Aさん。


六人全員が写っています。


他の家族は笑っていました。


妹だけが笑っていませんでした。


妹は叔父を見ていました。


そして叔父は、Aさんを見ていました。


その写真を見た瞬間。


Aさんは不意に、あの夜のことを思い出したそうです。


食卓に座る妹。


怯えたような顔。


向かい側を見ていると思っていた視線。


でも本当にそうだったのでしょうか。


記憶の中の妹は、ときどき廊下の方へ視線を向けていた気がしました。


つまり。


妹が見ていたのは、食卓の向こうではなく。


自分だったのかもしれない。


なぜ妹はあんな顔をしていたのか。


なぜ叔父はどの写真にもAさんの隣にいたのか。


なぜ自分は、そのことを不自然だと思わなかったのか。


答えは分かりません。


ただ、アルバムを閉じる直前。


Aさんは初めて気づいたそうです。


写真の中で叔父を見ている妹の表情は、


恐怖ではありませんでした。


あれはきっと。


誰かを心配している顔だったのです。


そして、その誰かは。


ずっと自分だとは思っていませんでした。


Aさんは今でも、ときどきあの夜のことを思い出すそうです。


妹が見ていたものは何だったのか。


本当は何に怯えていたのか。


もう確かめることはできません。


けれど、あのアルバムを見た日から。


Aさんは一度も、あのアルバムを開いていないそうです。


第二章もあります!!

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