夏休み最終日
翌日、ログインすると早速3人で大橋まで戻る為に街道へ向かう。
「やっぱり第3の村まで来てるプレーヤーが少ないせいか魔物の数が多いねぇ」
既に2回戦闘を終え、自然回復だけでは心許なくなったサンドラがMPポーションを飲みながらボヤく。
「私たちが強くて安定して狩れるなら、狩場独り占め状態で美味しい場所なんだけどね。ギリ勝てる今の状態ではただのハードモードだよ」
「第1陣のプレーヤーはスキル変化させて一時的に弱体化してるし、第2陣プレーヤーは廃人以外はまだここで狩りが出来るほど強くなって無いでしょうねぇ」
「それだけじゃないよ?私たちは明日から学校の2学期が始まるけど、他の地域では既に2学期が始まってる地域があるし、平日昼間は社会人プレーヤーはログイン出来ないから全体的にインしてるプレーヤーが減ってるんだよ?」
「でも明日からは第3陣が参加するからイン数は増えるんじゃない?」
まぁイン数が増えても四方の町や村に散るからここはそこまで変化は無いだろうけど。
「今度は第3陣は1万人って話だから、明日の夜、4Qの王都は人混みで地獄絵図だろうね」
ヒルデが明日の王都の惨状を想像して微妙な顔をしてる。
「でも、生産系プレーヤーとしては武器やアイテムの売り時なんじゃない?初期の所持金の10万マニ持ってるプレーヤーが大挙してやってくるんだから」
「そう言う意味では生産系プレーヤー限定のイベントっぽいよね」
「そうだねぇ。私たちみたいな戦闘系スキルオンリーのプレーヤーは関係ないけどねぇ」
「あ、ここのドロップアイテムを王都に運んで生産プレーヤーに売ってば一儲け出来てクランハウスの建設の足しになったかも!?」
ヒルデは色々と金策を考えているようだ。
「えっ?流石に第3の街に着いたその日に乗り合い馬車に乗っても日数的に王都までは戻れなかったでしょ?」
「それにここの素材の装備とかは初心者に買える値段じゃないよ?」
「あ・・・それもそうだね。あとで掲示板でここら辺のドロップアイテムの相場がどう変わってるか色々と調べてみようかな?ドロップアイテムが高い魔物を狙って狩るのもアリかも」
「ヒルデ、明日から学校なんだから夜更かしすると明日起きれないよ?」
「ん?大丈夫だよ明日は始業式だけだから」
「休む気かい!!(笑)」
「冗談よ。うちの親がそんな事を許すわけがないじゃないの」
そんな事を話しながら街道を歩いていると、森の中から3人のプレーヤーが駆け出して来た。
そのプレーヤーの1人が私たちを見ると声を挙げた。
「スマン!!引き返して逃げてくれ!!巻き込んでしまう!!」
一瞬、何の事か分からず頭にクエスチョンマークが浮かんだが、しかし直ぐに何が起こってるか理解できた。
森から身長2メートル以上ある大きな人型の魔物が姿を現した。
そして森から飛び出してきたプレーヤーに向かって手に持つ大きな棍棒を振り下ろす。
プレーヤーは大きく横に飛んで棍棒を避け、その隙に別のプレーヤー2人が弓と魔法で巨人を攻撃する。
「な、何あれ!!初めて見る!!」
「ちょっ!!引き狩り!!ヒルデ、サンドラ、逃げるよ!!ターゲット取っちゃったら面倒な事になるから!!」
街道を戻って逃げるようとする私たちの前にもう1匹の巨人が森から姿を現す。
「挟まれたんだけど!!反対側の森の中に逃げる!?」
ヒルデが相談してくる。
「森の中は駄目!!別の魔物に遭遇しちゃう!!」
私が反対すると、次はサンドラが叫ぶ!!
「なら後の魔物と戦う?1匹相手に囲めば何とかなるかも!!」
「もしくは殴りつつも隙を付いて脇を抜けて逃げるとか?」
別に倒す必要は無いんだから。
「ちょっとエリザ!!それ魔物の横取りに成らない!?横殴りは駄目だよ!!」
ヒルデの言う通り横殴りはマナー違反であとでトラブルに成る可能性がある。
しかし、そもそもは相手が街道まで引き狩りをしてきた事がマナー違反だと思うんだよね・・・。
「そっちのプレーヤーさん!!私たち逃げられないのでこっちの巨人を殴って良いですか!!」
とりあえず相手のプレーヤーに聞いてみる。
「申し訳ない!!巻き込んで!!こっちは気にせずそっちのトロールは殴っても良いけど、強いから被弾しないように気を付けて!!」
相手プレーヤーから殴っても良いと返事がくる。
それを聞いたサンドラは早速シエロに魔法攻撃の指示を出す。
シエロが雷魔法のサンダーニードルを放つと巨人改めトロールに命中する。
それに合わせてサンドラが駆け寄り両手斧で脚を斬りつけ、更にヒルデが二刀で追撃をする。
2人を攻撃しようとトロールが棍棒を振り上げた手を狙って私が土魔法のソイルボールを撃ち込み攻撃を妨害する。
続いてアインとラメドが飛び上がりトロールの首筋に噛みつく。
「ナイス連携!!」
最近は数が多い魔物を相手にする事が多かったので、こっちが最初から数的有利で戦える魔物を相手にするのはちょっと気持ちが良い。
「まだ倒してないよ!!」
トロールが怒った様に咆哮を上げる。
するとトロールを中心に爆発が起こりサンドラやヒルデ、アイン、ラメドがその爆風で吹き飛ばされる。
「今のってウインドボム!?なんで魔物がそんな高レベルの魔法を使うの!?」
私はHPポーションを【収納】から取り出しヒルデに投げ付けヒルデのHPを回復させる。
ヒルデは回復魔法をサンドラにかけ、アインとラメドは回復魔法を自分にかけて回復させてる。
「・・・あっちのパーティが引き狩りをやってる理由が分かったわ」
ヒルデが独り呟く。
「そっち行ったぞ!!気を付けろ!!」
声が聞こえて振り返ると私の身体に横から強い衝撃が走り吹き飛ばされる。
「エリザ!!」
私が声の方に目を向けるとアインとラメドが光と成って消える所を目にした。
えっ?何が起こった?直ぐに動こうとすると身体が動かない。
視界の上に見えるHPバーが全損していた。
「えっ、私
死んだの?ワンパンでHP全損!?」
私が死んで・・・と言うよりアインとラメドが消えてサンドラとヒルデは一気に劣勢になる。
2匹のトロールの挟み撃ちを受け攻撃を受けるサンドラのHPがどんどん削られる。
ヒルデとシエロが次々と回復魔法をサンドラに使い何とか維持する。
そこにあっちで戦ってたプレーヤー3人が加勢に入るが2匹揃ったトロールの連携攻撃は無駄に強い。
横殴りの棍棒を攻撃を受けて、あちらのプレーヤーが1人死亡する。
更に2匹のトロールに挟まれたサンドラが左右からの横殴りの棍棒攻撃を受けてHPを大きく減らす。
直ぐにヒルデが回復魔法をサンドラにかけるが、その隙に別のトロールの振り下ろしの棍棒攻撃を受けてヒルデが死亡する。
残ったサンドラはウインドボムを受け吹き飛ばされた
所を棍棒攻撃を受けそれを大盾で受けるが体勢を崩し、そこに追撃の攻撃を受けて死亡した。
そして私たちパーティは光に包まれる。
気が付くと神殿の中のベッドの上で目を覚ます。
「う~ん、久しぶりに全滅したな・・・」
まわりを見るとヒルデとサンドラも起き上がったところだった。
次々と光の中からプレーヤーが空いてるベッドに現れる神殿のこの光景は何度見ても違和感ある。
まぁ私が見るのは2度目だけど。
「酷い巻き込まれ事故だね。あんな処にあんな魔物が出るなんて」
「しかも挟み撃ちとか」
私たちが話してると後から声を掛けられる。
私がそっちを見ると6人組の中の1人の男が声をかけてくる。
「すいません。巻き込んでしまって。まさか街道で運悪くプレーヤーが歩いてるとは思わなかったので」
どうやらあそこで私たちもあっちのパーティーも仲良く全滅したようだ。
「どこからあんな魔物を釣ってきたんですか?」
ヒルデが質問する。
男は少し考え込むと、意を決したように語り出す。
「すいません。私たちユニーククエストを受けて森の奥に進んで行くと番のトロールが居て突然襲って来たんです」
トロールに遭遇するユニーククエストか・・・。
「それでたちまち前衛の3人がヤラレてしまって、残った3人では引き狩りで攻撃を与える方法がしか頭に浮かばなくて・・・まさか街道に他のプレーヤーが歩いてるとは思ってなくて」
その最中に私たちを遭遇してしまったって事ね。
完全な巻き込まれ事故だった。
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