ほんの出来心
「えっ、ヒルデもイベントポイント交換したの?」
「うん。サンドラの話を聞いてたら負けてられないなと思って」
なんだ?その対抗心は。
「それで何を取ったの?」
「えっと【聖魔法】と【邪魔法】。本当は【光魔法】と【闇魔法】がレベル30に成ったらスキル変化させようと思ってたんだけどね」
ヒルデが何を言ってるか分からない。
「じゃ、何で取ったの?スキル変化で取れるのに」
「いやだってサンドラが魔法スキルを4つも取ったから。そのままだと私が回復魔法を数えても魔法スキル3つで最下位になるじゃない?これで私は魔法スキル5つでトップよ?」
ヒルデがドヤ顔をする。
「意味が分からないから。なぜそこで張り合う必要があるの?」
「だった武器スキルの数でもサンドラとエリザに負けてるのに魔法スキルでまで負ける訳にはいかないじゃない?」
「いや、だからそこで張り合う必要ないでしょ?」
「いいの。問題は自分が納得するかどうかだから。それにもう取っちゃったんだし今からキャンセルら出来ないんだよ?エリザ」
「いや、それはそうだけどもう少し計画的に取っても良いんじゃないの?」
「それにね。これで現在確認されてる魔法属性は3人でコンプリートした事になるのよ?」
なるほど。
結局それがやりたかったのか。
「それでもエリザは何取るの?」
サンドラが私に聞いてきた。
「えっ?私はもう少しゆっくり考えてから取るよ?」
「あぁ・・・エリザ、ノリが悪い・・・」
「サンドラ、エリザってそう言うとこがあるよね」
えぇ、今取らなきゃ駄目な流れなの?
「何で今取らないと駄目なのよ?」
「だって話の始まりはアインとラメドのスキルスロットが空いてるのは勿体ないって話からでしょ?」
あれ?そうだったっけ?
「何が良いか思い付かないんだよねぇ・・・」
「だから【巨大化】が良いって言ってるのに」
「いや、それはちょっと」
「エリザって優柔不断だよねぇ」
ヒルデが呆れたように呟く。
えっ?私が悪いの?
ちょっとイラッと来る。
「もう。分かったわよ!!アインとラメドはヒルデとサンドラの代わりなんだから、ヒルデとサンドラのスキルを取るわ!!」
「あ、エリザが怒った・・・」
「ちょっと、スキル被りはあれじゃない?」
「良いの!!私は決断しました。えっとヒルデからは【跳躍】、サンドラからは【反応速度up】を真似てスキルを覚えさせます!!」
「それ、私が取ったけどまだ試してないスキル!!」
「ヒルデがエリザを追い詰めるから・・・【巨大化】を覚えさせてモフモフしたかったのに」
「いや、サンドラもエリザをイジってたじゃないの!!」
と言う訳でアインとラメドのスキルは決定しました。
『従魔 アイン(オオカミ)』
【遠吠え Lv.2】
【噛み付き Lv.4】
【回復魔法 Lv.3】
【跳躍 Lv.1】
【反応速度up Lv.1】
『従魔 ラメド(オオカミ)』
【遠吠え Lv.3】
【噛み付き Lv.3】
【回復魔法 Lv.3】
【跳躍 Lv.1】
【反応速度up Lv.1】
あれだけ戦闘してるのにレベルの伸びが悪いのは従魔との経験値分配で1人頭に入る経験値が悪いからだろう。
翌日、ログインし黙々と歩く。
昨日話した通り、今日は狩りをしないで延々と街道を歩く。
「あれだね。やっぱり乗合馬車で向かえば良かったね
」
私たちを追い抜いて行った乗合馬車を眺めながらヒルデが泣き言を言う。
「ヒルデが言いだしっぺなんだからね?ちゃんと反省するように」
「あの乗合馬車、魔物に襲われて乗ってる人はみんな死に戻りして、馬車だけ私たちが手に入れるとかイベント無いかなぁ・・・」
サンドラも思考が少し現実から逃避してる。
「ほら2人とも。あと少しで今日の目的地の大橋が見えて来るから」
「あれ?大きい川は明日って言ってなかった?」
サンドラが聞いてくる。
あ、ちゃんと私の話を聞いてたんだ。
「川の手前にログアウトポイントがあるんだよ。今日はそこで野営して、橋を渡るのは明日」
ヒルデは掲示板で調べてきてるのかちゃんと知っていた。
・・・前もって調べちゃうからネタバレしちゃって歩いてる時の発見や驚きを感じないんじゃないのかな?
「予定ではあと1時間ぐらいで着くから頑張ろう」
地図で現在地を確認し2人を励ます。
地図を見ながらだと歩くだけでも結構楽しめる。
ログアウトポイントに到着すると結構な数のプレーヤーが居て賑わってる。30人ぐらい居るだろうか?
「随分とプレーヤーが多いねぇ」
「ここは乗合馬車の宿泊地にもなってるのよ?ほら馬車が並んでるでしょ?」
ヒルデが示した方向を見ると馬車の駐車場になってるエリアがある。
幌付きの馬車の中に幌無しの荷台だけの馬車がある。
「ねぇ、あれプレーヤーの馬車かな?既に馬車を手に入れるプレーヤーって結構いるのかな?」
「どうなんだろ?未だに掲示板では馬とかの確実な入手法は出てないのよ?」
「確実な?」
「そう。ユニーククエストで手に入れた人は居るんだけどね。ユニーククエストだから誰でもそのクエストを受けれて獲得出来るって訳じゃないのよ」
このゲームのクエストは基本的にユニーククエストのみで、全く同じクエストは発生しない。
その為にこのクエストはこうやると受けれてクエスト報酬は・・・と言う定番の情報交換が出来ない。
「じゃあ、馬が魔物として出る場所でテイムするしかないんじゃない?」
「その馬が出るエリアがまだ見付かってないのよ?ユニコーンとかペガサスとかも居て良いハズなんだけどね」
「馬もまだ見付かってないんだ?誰か知ってそうなNPCに聞くしかないんじゃないの?馬を捕まえて市場に流してる人が居るから乗合馬車とかに馬を使われてるんだろうし」
「あ、一応ケンタウロスの魔物は見付かったらしいよ?」
「はぁ?馬が居ないのにケンタウロスは見付かったの?」
何その訳の分からないゲームバランス。
「乗合馬車でお金を詰めば隣の国まで行けるのは知ってるよね?」
「あの50万マニ払って15日間も馬車で揺られるってやつでしょ?」
「それそれ。第3の街を越えて、国境を越えて、隣の国の辺境の村の近くに出没したんだって」
「それでテイム出来たの?」
「いや、呆気なく全滅して死に戻ったって」
「うわ・・・悲惨」
まぁ、スキルレベル上げも満足にしないで馬車に揺られてたんだからそりゃそんな奥地の魔物と戦ったら、やられるよね。
スキルレベルが充分に上がったプレーヤーにでも護衛を頼むしかないのかな?
「ねぇケンタウロスって下半身が馬で上半身は人だよね?コミュニケーションは取れなかったの?」
サンドラが疑問を口にする。
「あぁ、人じゃなくて人のようなものだったらしいよ?ゴブリンとかオークと同じ扱いじゃない?」
完全な魔物なんだケンタウロス・・・。
「素朴な疑問なんだけどさ・・・豚頭で身体が人間だとオークだよね?牛頭で身体が人間だとミノタウロス、なんで馬だけ頭が人で身体が馬なんだろう?」
「いや、そう言うもんでしょ?上半身が人間で身体が4本足の豚とか想像してみ?そんな可哀想な生物を人は空想でも作らないから」
私の素朴な疑問はヒルデに即座に否定された。
「あのねヒルデ、件って頭が人で身体が4本足の牛の妖怪が居てね・・・」
今度はサンドラがヒルデにツッコミを入れる。
「違うって、ヨーロッパの話だよ?ファンタジーの話。牛は角があるでしょ?豚と言うかイノシシは牙があるでしょ?だから牛も豚も角や牙がある頭が獣の半人半獣なのよ?馬は角も牙もないでしょ?だから1番の武器である足が馬の半人半獣なんだよ?」
「へぇ・・・そうなんだ。それは知らなかったわ」
サンドラがヒルデのウンチクを素直に絶賛してる。
「・・・ねぇ、ヒルデ。その嘘ホント?」
「もちろん、今思い付いた口からデマカセ」
ヒルデがニコッと笑った。




