訓練場
「スキル統合狙いかい?」
ナバロさんに質問される。
「はい。長杖と根はスキルレベル30になったので次は短杖と棍棒を上げる番なんです」
「それじゃその後は何をメインに使う気なんだい?」
「えっと魔法棍って複合武器があるそうなのでそれをメインにしようかなと思ってます」
何かアドバイス貰えるかと包み隠さずナバロさんの質問に答える。
ナバロさんは顎に手を当てて頷きながら何か考えてる。
「なるほどねぇ。他の2人は?」
「私は両手斧と鎚の複合武器を手に入れたので、それの使い方を習いたいなと思って来ました。あと投げ斧と大盾も使っています。私も斧系のスキル統合を狙ってます」
サンドラが簡潔に答える。
「あの、私は片手剣の二刀流の動きを習いに来ました。他に片手剣と小盾のスタイルでも戦います。あと長弓も使います。よろしくお願いします」
ヒルデがサンドラを真似して答える。
「3人パーティーかい?」
「はい。私は魔法使いで、ヒルデは回復も使うので3人で戦ってます」
「なるほど。ベーススタイルはサンドラが盾役でヒルデが回復と遊撃、エリザが魔法アタッカーか」
「エリザは隙あらば魔物に近寄って殴り掛かるんですけどね」
サンドラが余計な事を付け加える。
「よし、ちょっと待っててくれ。流石に俺1人で3人は見れねぇ。他のスタッフも呼んでくる。ついでに武器も持ってくらぁ」
そう言うとナバロさんは運動場奥の建物に入って行ってしまった。
「ねぇエリザ、ここ本当に大丈夫なの?」
ナバロさんの姿が見えなくなるとヒルデが不安を表し聞いてくる。
「ん・・・少なくともナバロさんはまともだったよ?教え方も優しく丁寧で分かりやすかったし」
「ヒルデ、客商売なんだからオラオラ系のスパルタ軍曹みたいなやり方をする訳が無いでしょう?そんなんだったらお客さんが来なくなって直ぐに潰れちゃうって」
「ねぇ、サンドラ。まわりを見てここが人気のある訓練場に見える?」
ヒルデのツッコミにサンドラが黙り込む。
今、訓練場には私たちしか居ない。
「いやいや、前回来た時はちゃんとした訓練を受けれたから」
ん?なんで私がフォローしてるんだろ?
訓練場に来たいと言い出したのヒルデなのに。
「おう。またせたな!!」
ナバロさんと一緒に出てきたのはナバロさんと同じぐらいの年齢に見えるマッチョのおっちゃんと2人よりは若く見れる細マッチョのお兄さん。
年功序列なのか細マッチョのお兄さんが大盾を2つ持ち、色々な武器が入った籠を背負ってる。
「よーし、それじゃ始めるか。えっとサンドラちゃんを担当するのはマテ、エリザちゃんの担当はロッタ。ヒルデちゃんの担当は俺ナバロがやる。それじゃ今から4時間コース開始な」
それぞれに分かれて訓練を開始する。
私は棍棒での攻撃方法や攻撃の逸らし方などを習い、更に身体を動かしての攻撃の避け方、避けてからの攻撃の仕方などを練習した。
ロッタさんは理論派なのか、5分話して20分実戦のあと5分休憩と言うサイクルの繰り返しだった。
休憩中に他の2人の訓練を見るとサンドラを教えてるマテさんは口で煽って闘争心をかき立てるタイプの様で盾でサンドラの攻撃を捌きつつ口撃でサンドラを煽っていた。見てるだけで暑苦しい。
ヒルデとナバロさんのコンビは二刀を駆使しつつ即座に近付き攻撃したら速やかに離脱する方法を練習してるみたい。ヒット&アウェイって言うんだっけ?
ま、私が休憩中に見た限りはだけど。
「ん・・・良い汗掻いた」
2時間を経過した辺りの休憩中にロッタさんに現状の問題を説明してみる。
「ん・・・俺は魔法はナバロさん程詳しくは無いんだが連射が効かないなら、1発の威力を上げる方にシフトしたら良いんじゃないかい?」
「やっぱりそれしか無いですよね?スキルのレベル上げを頑張らないと」
「あとは・・・魔法ギルドって知ってるかい?魔法の悩みなら魔法ギルドに相談してみると良いよ。この街にも魔法ギルドは一応あるから」
「あっ、私は王都の魔法ギルドの会員証を持ってるんですよ」
「おぉ、王都の魔法ギルドの会員とか凄いじゃ無いか。それなら王都に戻った時にそっちで相談する方が良いかな。魔法ギルドは各支部毎に対抗意識があって色々と面倒臭いと聞くから」
あ・・・つまりこの街の魔法ギルドに王都の魔法ギルドの会員が行くと対抗意識から面倒臭い事になると?
・・・それギルドの意味があるのかな?ライバル団体になってるじゃん。
と言う事で後半は魔法と棍棒を組み合わせた戦い方を練習した。
棍棒で攻撃を受け長し出来た隙を魔法で攻撃する方法は短杖の特長である魔法発動時間の短縮効果で有効的に感じられた。
そんなこんなで4時間はあっと言う間に過ぎた。
「疲れた・・・まさか私が指導員ガチャでハズレを引くとは思わなかった。ハズレを引くのはエリザの役割だと思ったのに」
サンドラはマテさんの暑苦しさに参ったのか練習場を出てからボヤき始まった。
「マテさん、ハズレだったの?ナバロさんはあんな見た目だけど優しくて解り易かったよ?」
たぶん、3人の指導員の中では1番のアタリのナバロさんを引いたヒルデは満足げだ。
ロッタさんは丁寧なんだけど理論派故か正統派な攻撃方法ばかりで前にナバロさんに教えて貰った様な泥臭い技は教えて貰えなかった。
「マテさん、細かいコツとか色々と教えてくれたんだけどねぇ。投げ斧の曲射的な投げ方とそれを使うのに有効な場面とか、石突きの上手い使い方とか他にも色々と。でも4時間も口撃で煽られるってのは神経すり減ったよ。私に体育会系のノリは無理だって実感したよ」
普段、のほほんとしていて動じないタイプのサンドラが精神的に疲労してるのは珍しい。
マテさんの熱気はそんなにキツかったか。
「それじゃ今日は慰労会って事でちょっと奮発して南の街名物の焼肉でも食べようか?」
ヒルデが散財を提案してくる。
いやヒルデ、そのノリはサンドラが苦手って言った体育会系そのものだぞ?
「えぇ・・・、甘いものが食べたい・・・」
「甘いものは王都の方が色々とあるのよね。甘味処をやってるプレーヤーがこの街に居れば良いけど、私たち知らないよね」
あ、この口振りだとヒルデが焼肉を食べたいだけだなこれ。
「サンドラは焼肉屋さんで野菜でも食べたら?最近の野菜は甘くなったって良く聞くし」
ちょっとイジってみる。
「その甘いと違う甘味がいい・・・」
むぅ?サンドラの返しのキレが悪い。
これは本当に参ってるな。
「ほら、話してるだけでは何も始まらないからお店に行ってから色々と考えよう」
ヒルデに押し切られて焼肉屋さんで食事をする。
なんだかんだ言ってもサンドラもそれなりに楽しんでる。
「それでね、今後の私たちは何をする?って話よ?」
肉を焼き焼きヒルデが語る。
「何をするってスキルレベル上げじゃないの?」
「何をしてスキルレベル上げをするかよ?モチベーション的には何かをやってて副産物的にスキルレベルが上がるのが望ましい訳」
「それで?」
「夏休みももう直ぐに終わりじゃない?最後に何かやりたいなと思って」
そんなヒルデの提案を受けて私たちが考え出した案はこの5つ。
・徒歩で南東の大森林の先にある第3の村への旅
・南の街から西の街へ直線移動旅
・南の街から東の街へ直線移動旅
・南の街の更に南にあると言う旧神殿へ礼拝
・馬車で南西の砂漠の村へ移動して砂漠を満喫
ん・・・達成感のあるチャレンジ企画か、観光メインで遊ぶか。
迷いどころなんだよね・・・。
「あ、ヒルデ。あんた夏休みの宿題は終わった?」
「えっ?まだ」




