従魔の力
「数十回も狼戦を繰り返してテイム失敗してたのに、連続して2匹も成功するとは・・・」
ちょっと呆然としてしまった。
正直言えば1匹で良かったのに。
従魔にスキル覚えさせるのにもスキルポイントを消費するんだから。
「エリザ、あとは名付けを済ませればいつでも呼び出せるようになるよ?」
「名前か・・・」
ヤバい。名前なんて全く考えて無かった。
「何にしよう?2匹なんだからセットの名前が良いよね?助さん格さんとか?」
「なんで和風なのよ?」
「ん・・・ヒルデとサンドラの代わりだから・・・ヨルデとヨンドラとか?」
「エリザ、名前はおふざけ禁止だからね?」
「ヨルデとヨンドラのヨーヨーズ、語感的には悪くないと思うんだけどな・・・」
「だーめ。ちゃんと考えた方が後で後悔しないよ?」
ん・・・全く思い浮かばない。
昔からゲームとかのキャラの名前を考えるの苦手なのよ私。
新しいゲームを買ってゲームを始めて、キャラの命名画面のまま30分進まないとか普通にあるんだから。
「ちょっと時間ちょうだい。もう暗くなるしログアウトポイントに戻る時間でしょ?ログアウトした後に色々と調べて良い名前を考えてくるから」
ログアウトポイントへ戻りテントを張って、ログアウトする。
ベッドから起き上がり、パソコンと向かい合って色々と検索する。
ん・・・狛犬は阿像に吽像か・・・えっ、片方は狛犬じゃなく獅子なんだ・・・。
オーディンの連れてる2匹の狼ねぇ・・・。
何か魔女や魔法に関係するものから取った方が良いのかな・・・。
ん・・・何にするかな・・・。
食事をとり、再びログインする。
テントから出るとサンドラだけでヒルデはまだログインしてなかった。
「あ、エリザ。名前は決まった?」
「まぁね。色々と調べちゃったよ。知ってた?神社の狛犬って片方は狛犬じゃなく獅子なんだよ?」
「えっ?エリザそれ常識じゃない?」
「嘘だ。そんな常識無いわ。サンドラ知ったかぶりしてるでしょ?」
「そんな事ないわよ?口を開いてる方が獅子で阿、閉じてる方が狛犬で吽なのよ?」
サンドラが自信満々に語る。
「おかしいじゃん!!獅子ってライオンでしょ?犬じゃなくて猫じゃん!!狛猫じゃん!!」
「あのねエリザ。昔の人にイヌ科とか猫科とかそんな知識が有る訳ないじゃない。犬でも猫でも狐でも4本脚で中型のはみんな狗だったんじゃないの?だから神社によっては狛犬の代わりに狐が飾ってあったりするのよ?」
「そんな馬鹿な・・・」
「・・・ねぇ、あんたら何の話をしてるの?」
ログインしてきたヒルデが私達をジト目で見てる。
「ねぇ、ヒルデ知ってた?神社の狛犬って片方は狛犬じゃなくて獅子なんだよ?」
「もういいから!!それより狼の名前決めたんでしょ?ヒルデも来たんだから発表してよ?」
「それでは発表します。片方はアイン、もう片方はラメドに決めました」
発表を聞いたヒルデとサンドラからは特にリアクションが無い。
「えっ?無反応?」
「あ・・・いや、そうなんだとしか」
「何から取ってるかすら分からないし・・・」
「いや、違うの。聞いて?私も色々と考えたの狛犬の阿像と吽像から取って阿狛と吽狛とか、オーディンの連れてた2匹の狼のフレキとゲリとか。でも吽狛とかゲリとか音が悪いじゃん?だから魔術的な方面から名前を貰ったのよ?」
「へぇ・・・」
駄目だ。
ヒルデは完全に興味を失ってる。
「それじゃ名前を設定して呼び出してみるね」
メニュー画面を開いて新たに追加された従魔の項目を選び名前を付ける。
いつの間にかネックレスは1つになっていて、そこに2つのタグがぶら下がっていた。
「それじゃおいで!!アイン!!ラメド!!」
私の胸のネックレスから光が2つ飛び出して狼の形に変化する。
「ウォン!!」
「ワン!!」
鳴き声を上げたアインとラメドは顔の上半分と背が焦げ茶色系で目の周りと腹や脚が白い魔物として出てくる狼そのままの姿だった。
「・・・普通だねぇ」
「もっとこう白銀の毛並みとか、胸に返り血が付いてるとか、脚が6本あるとか何か凄いのを想像してたけど」
「いやいやいや、狼をテイムしたんだから狼が出てくるの当たり前でしょ?何勝手にハードル上げてガッカリしてるの!?サンドラのシエロを見れば想像付いたでしょ!!」
私はアインとラメドと抱き締め頭を撫でてあげる。
「ちょっと!!エリザ!!うちのシエロは可愛いでしょ!!」
「うちのアインとラメドだって可愛いもの。ねぇ?アイン、ラメド」
「ストップ!!何親バカ発揮してるのよ?それじゃ試しに狩りに連れてってみようよ?サンドラもシエロを出して私達初の6人パーティーやってみようよ?」
「えっ、うちの子をいきなりこの大森林で戦わせるの?」
「いや、狼なら狼を相手にしても五分五分でしょ?」
「それはそうなんだけど・・・」
気持ち的に最初はもう少し弱い魔物で様子をみたい気持ちがある。
「ねぇ、スキルは何を持ってるの?不安なら早速なにかスキルを獲得してセットして強化すれば良いんじゃないの?」
サンドラの指示に従ってアインとラメドのスキルを見てみる。
『従魔アイン(オオカミ)』
【咆哮 Lv.1】
【噛みつき Lv.1】
【(未セット)】
【(未セット)】
【(未セット)】
『従魔ラメド(オオカミ)』
【咆哮 Lv.1】
【噛みつき Lv.1】
【(未セット)】
【(未セット)】
【(未セット)】
「両方とも【咆哮】と【嚙みつき】ってスキルを持ってるね。と言う事は1匹追加で3つづつ。合計6スキルポイントも必要なのか・・・」
「あれ?エリザは自分のペットにスキルポイントを使うのが惜しいの?もしかして育児放棄?」
サンドラが妙に突っかかってくる。
シエロが居る分、対抗意識があるのか?
「壁役にするんでしょ?それなら【HP自動回復】とか【耐久値up】とか定番じゃない?」
「対空を考慮すると魔法系か【跳躍】とかのスキルが必要じゃないの?」
なんで2人は私を差し置いてスキル編成を考えてるんだろ?
とりあえず私がソロでアインとラメドを使役して戦う事を想定して考えながらスキルリストを眺めてみる。
イベントポイントで取れるスキルも一通り目を通して・・・足りないのは・・・。
「よし、決めた!!」
『従魔アイン(オオカミ)』
【遠吠え Lv.1】
【噛みつき Lv.1】
【回復魔法 Lv.1】
【(未セット)】
【(未セット)】
『従魔ラメド(オオカミ)』
【遠吠え Lv.1】
【噛みつき Lv.1】
【回復魔法 Lv.1】
【(未セット)】
【(未セット)】
「とりあえずこれで。あとはもう少し考えて決める」
「回復魔法って・・・」
「しかも両方に取らせるって。普通は片方を攻撃的でもう片方は守備的とかにするでしょ?」
「良いの。決めたの。この2匹は双子設定にするの。私の脳内では。双子なら能力は同じじゃないと変でしょ?」
私が宣言するとヒルデもサンドラも残念な子を見る目で私を見つめてくる。
「そう?片方が火魔法使いでもう片方は水魔法使いとか割りとある設定だと思うけど?」
「あとあれだよねぇ。片方は脳筋な体育会系でもう片方は虚弱な勉強出来る系とか」
「そうそう。熱血とクールの組み合わせの双子」
ヒルデとサンドラがあるある話で盛り上がりだした。
「あのね?アインとラメドは、双子が瓜二つで見分けが付かず入れ替わっても分からないパターンの双子設定なの。それに回復役が複数いるのは結構重要だよ?」
「ねぇ、私たちが3人と3匹のパーティー組むと1人と3匹が回復魔法を使えるって多過ぎじゃない?」
ヒルデが呆れたように指摘してくる。
「いいの。ヒルデが攻撃寄りに立ち回り変えるんだし、従魔は私もサンドラもソロの時の補助が主目的なんだから」
「えっ?うちのシエロは3人一緒の時も偵察で役に立ってるよ?」
・・・この親バカ。