誤算
「じゃあ、行くよ!!」
サンドラを先頭に大森林を進む。
今回はサンドラが【調教】スキルを外してるので従魔のシエロを呼べず、散策して魔物を探す。
先頭のサンドラは両手斧と鎚の複合武器と大盾を装備している。
通常は両手武器と盾は同時に装備出来ないが【剛力】と言うスキルの効果で装備が可能になっている。
両手で持って振り回す両手武器を剛力のスキル効果で片手で振り回せるように成ってる訳だ。
その後ろを歩くヒルデは二刀流では無くいつもの片手剣と小盾の組み合わせ。
今回、私がスキル変更して初めての戦闘で【服】スキルレベル30を【服Ⅱ】スキルレベル1に変更し、どれだけ守備面でのステータスが下がっているか分からない。
下手したら1発で即死の可能性もある。
今の私は2人に守って貰う立場なのだ。
「一昨日の狩りは楽勝。昨日の戦いはまずまず。このパターンだと今日は苦戦するのかなぁ?」
「エリザの魔法の威力がどれだけ下がってるかだよね?」
「ん・・・魔法スキルは統合してレベルが下がったせいで範囲魔法とかが使えなくなってボール系しか使えないけど、魔法補助系のスキルはレベルが高いままで、5つフルセットしてるからステータスの魔力の高さで何とかなると思うのよね」
「レベルが上がるまでは後方で固定砲台で良いよ。と言うか武器を構えて突撃するスタイルがおかしいのよ?魔法戦士を狙ったのスキル設定じゃないのに」
「ふっふ。戦闘魔術師と呼んで」
「あれ?古き良き伝統ある殴り魔じゃなかったの?」
「棍棒を振り回す殴り魔か・・・エリザにピッタリね(笑)」
「殴り魔って響きは嫌いじゃないんだけど・・・何で棍棒が杖スキルの括りなのか納得いかない。このゲーム設定おかしくない?棍棒は斧とか鎚の括りで良いと思うの」
「各武器カテゴリーに必ず1つは地雷臭のする武器スキルがあるよ?剣系なら刺突剣、槍系なら馬上で使うのが前提の突撃槍とか。弓系なんて投矢よ?もう嫌がらせとしか思えないわ」
「斧系は地雷武器が無いわよ?」
サンドラが自信満々に指摘する。
「サンドラ、投げ斧は地雷武器だと思うんだけど?」
「えぇ?そう?投げ槍とかもあったよね?」
「ん・・・投げ槍も地雷臭がするけど、投げ槍は投槍器を使わずに短槍や長槍をそのまま投げても特に問題は無いからね?しかも飛距離出るから空の魔物を狙えるし」
「あぁ、投げ斧は飛距離がねぇ・・・頑張って20mぐらい?」
「命中を無視すればそれぐらいかなぁ。【命中率up】のスキル補正で命中率は上げれるけど」
「ね?武器スキルを統合しようと思ったら地雷武器も頑張って上げないと。棍棒なんて地雷武器の中では良い方だと思うよ?」
ヒルデは既に自分の中で地雷武器と言うカテゴリーを作ってるようだ。
そして何で私は説教されてるんだろう?
「いたよ!!狼4匹」
サンドラの声で直ぐさま戦闘態勢を整える。
今回は盾持ちのサンドラとヒルデが前衛で、私が後衛と言うオーソドックスな布陣だ。
「いくよ!!」
私は短杖を構えて魔法を唱える。
「ファイアボール!!」
「ソイルボール!!」
「ウインド・・・あれ!?」
魔法を乱射出来ない。
ファイアボールは撃てたのにソイルボールを唱えても発現しなかった。
ファイアボールを受け戦闘態勢になった狼たちはこちらに向かってくる。
「ちょっとエリザ何してるの!!」
ヒルデの声が響く。
「アテンション!!」
サンドラが鎚で狼1匹を殴り飛ばし、大盾でもう1匹を受け止める。
その隙にサンドラの脇を通り過ぎようとした狼をヒルデが斬りつける。
「ソイルボール!!」
「ウインドボール!!」
私はもう一度魔法を乱射しようと試みるがやはり2発目が発現しない。
「もうっ!!」
連射出来ないと想定して立ち回りを変える。
メイスを肩に構えて隙を窺う。
サンドラとヒルデが奮闘してるがスキルを変えてステータスが落ちてる今の2人で狼4匹は接戦だ。
「こんの!!」
ヒルデを横から襲おうとしていた狼に駆け寄りメイスを狼の背中に叩き込む。
「ウォーターボール!!」
【魔力操作】を使い魔法を放つ。
通常の直線的にではなく、弓なりに飛んだそれはサンドラの身体を避けその奥の狼に命中する。
「エリザ、前に出ると守れないから!!」
サンドラの声が飛ぶ。
「魔法を乱射出来ないから立ち回りを変えるよ!!」
私はそう叫び、再び後方に下がる。
「ウインドボール!!」
再び【魔力操作】を使いサンドラに襲い掛かろうとする狼に向かって魔法を曲射する。
やってる事はメイン火力じゃなく、戦闘サポートの所謂ジャマーと呼ばれる撹乱役だ。
そして数分後、サンドラが最後の狼にトドメを刺して戦闘は終了した。
「ちょっとエリザ・・・いきなり立ち回りを変えないでよ!!」
「でも、エリザがいきなり奇行に走るのはいつもの事だから・・・」
直線的にクレームを言ってくるヒルデと、ヒルデを宥めるフリして回りくどく嫌味を言ってくるサンドラ。
「いや、本当にゴメン。魔法が連射出来なかったのよ。2発目が発動しないの。私も焦ったんだから」
ここは素直に謝っとく。
「何で魔法が連射出来なかったか分かったの?」
「ん・・・前は4つのスロットを使って各魔法スキルを装備してたでしょ?火魔法を使ったら火魔法スキルは再使用待機時間に入って使えなくなるけど、他の風魔法や土魔法は使えたのよ」
「うん。それで?」
「魔法スキルを統合して【精霊魔法】スキルになったでしょ?それで例えばファイアボールを使うと【精霊魔法】が再使用待機時間に入っちゃって、他の属性魔法が発動しないみたいなのよ」
「・・・エリザ、もしかして【精霊魔法】スキルってお得スキルに見えた地雷スキル?」
「エリザ、乙」
ヒルデとサンドラが可哀想な者を見る目で私をみる。
えっ!?えっ!!ちょっと待って。私やらかしたの?選択をミスったの?
ちょっとショックで言葉が出ない。
「ねぇ、エリザはスキルポイントとイベントポイントをあまり使わないで溜め込んでたじゃん?もう一回、4つの属性を獲得して1からレベル上げしたら?」
「そうだね。それが良いよ?もしくは2種類の属性だけ取れば精霊魔法も合わせて3連射出来るし」
ヒルデとサンドラのガチ慰めがちょっと心にくる。
「ま、待って。まだ慌てる時間じゃないと思うの。今の感じで私がジャマーやるからあと何回か戦わせて」
平静を装いちょっと現実逃避に走る。
4つの4属性魔法は1ヶ月掛けてレベル30まで上げた訳で、また1ヶ月以上掛けてレベルを1から上げるのは避けたい。
もうすぐ夏休みは終わるしイベント中みたいにスキル経験値倍増キャンペーンがまたあるとは限らないし。
それに何回か戦えば今のままでも良い立ち回りが思い浮かぶかも知れない。
それからその日は大森林で狩りを続けて、ログアウトポイントへ戻った。
「ん・・・やっぱりエリザの火力が無いと戦闘が長引くねぇ」
「アタッカーが盾役を兼ねるサンドラだけになっちゃうからねぇ」
「盾役兼アタッカー、回復役兼第2王子、ジャマーのパーティーはちょっとバランス悪いよね」
「ちょっとサンドラ、エリザだけじゃなく私まで貶すの止めてよ!!」
サンドラとヒルデが好き勝手に話してる・・・。
ん・・・ジャマーとしては悪く無いとは思う。
私が後方でジャマーとして動く事で3人の被弾率は下がったとは思う。
しかし戦闘が長引くようになった。
戦闘が長引けば被弾率が減ってはいてもある程度は被弾するし、時間に対しての経験値効率が悪くなる。
せめて魔法1発の威力がもう少し上がったり、【精霊魔法】のスキルレベルが上がって範囲攻撃魔法を覚える事が出来れば良いんだけど。
「ねぇ、ヒルデがあんまりエリザの事を攻めるからエリザが本気で凹んでるじゃない」
「ちょっ!?」
「ゴメンねエリザ。回復魔法の使えないヒルデって言った事は謝るわ」
「何で私まで貶すのサンドラ!!物理攻撃力はエリザより高いし、攻撃魔法だって撃てるし」
「うーん・・・今日はちょっと夜更かしして掲示板を漁って明日までに何か解決策を見付けてくるわ!!」
私は決意を込めて宣言する。
「いや、無いと思うよ・・・」
そんなヒルデの呟きが聞こえた。




