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最終日

「はぁ?」


ヒルデの突然のボヤきに驚き聞き返す。


「いや、だからね?なんで私たちはゲームの中でまでアルバイトして働いているんだろ?」


ヒルデがボヤく。


「ねぇ知ってる?イベントポイントを稼ごうって言い出したのヒルデだよ?」


サンドラがヒルデにツッコミを入れる。


「いや、イベントポイントを稼ごうって言ったのは私だよ?でも3人バラバラで何の遊びの要素もなくここまでガチで働く必要はあったのかな?」


「どう言う事?」


「だからさ、何か他に3人で一緒にイベントポイント稼ぐやり方があるんじゃないなかな?と思ってさ」


ヒルデは飽きっぽいな・・・。


「じゃ、今回で商業ギルドの配達は終わりにする?せっかく慣れてきて1日4回の配達も出来そうになってきたのに・・・」


うん。サンドラも何か目的を見失ってる気がする。


「だって個別配達にはドキドキが無いじゃん?イベントに対するトキメキがさ?まだあの討伐戦の方が冒険してたと言うかさ」


あ・・・確かに今やってるのは作業ゲーみたいになってるなあ。

黙々と同じ作業をしてレベル上げしてる感じに似てる。

それはそれで嫌いじゃないんだけども。


「それじゃ、掲示板でも覗いて何か面白そうな募集を探してきて明日はそれやる?」


サンドラは討伐戦みたいなのが好みなのかな?


「ねぇ今11750ポイントも集めたんだから、もう目標の10000ポイントはクリアしてるんだよ?無理にイベントポイントを稼がなくても良いんじゃない?」


私が提案してみる。

今から第2の街に乗合馬車で移動してレベル上げやっても良い訳だし。


「エリザ、ここまで来たら最後までイベントポイントを溜めた方が良いわよ?15000ポイントにも手が届くかも知れないし」


「私も一度決めたらブレちゃ駄目だと思うの」


即座に私の提案は2人に却下される。むぅ。


「それじゃ明日までに掲示板で面白そうなの見付けてくる。無かったらまた[日陰屋]のおっちゃんにでも聞くか、最悪商業ギルドで仕事を貰うって事で良い?」


「うん。それで良いんじゃない?調べないと何があるか分からないし」


「あ、サンドラ。勝手に決めて約束してくるのは無しね?3人が3人それをやったら、他2つはドタキャンする事になるから」


「分かった。調べるだけにしとく」


あ、こいつ話決めてる気だったな?

前もって釘を刺しといて良かった。


「ヒルデもね?」


「私はやらないわよ。サンドラじゃないんだから」


「えっ、その発言は酷い~」


翌日、イベント最終日の第2Qに私はログインする。


「おはよう。何か面白そうな情報あった?」


既にログインしていたサンドラとヒルデに挨拶する。


「エリザ、遅い!!最終日なんだよ!?気合い入れないと!!」


ヒルデのテンションがやけに高い。


「はいはい。それで今日はどうする?」


「王都の南西部でネズミ大発生を狩る話があるよ?初期の討伐に失敗してそれこそネズミ算的に増えて広範囲で増えてるみたい。掲示板ではイベント最終日の最終イベントだって言う噂もあるみたい」


「ミミズにオバケにネズミが・・・。イベントで狩れなかったらどうなるんだろ?王都崩壊?」


素朴な疑問を口に出してみる。


「そこはそれ王都の騎士団が退治した事になるんじゃない?9月に第3陣が参戦するのに始めの街が崩壊してたら地獄絵図よ?」


「それもそうだよねぇ」


流石にここまで作り込んだ王都をゲームサービス開始1ヶ月ちょっとで崩壊させる暴挙はやらないだろう。


「南東だけ魔物が大発生してないけどなんで?」


「どっかのプレーヤーが初期に退治したんじゃない?掲示板では私たちが討伐したミミズの情報も出てないからね?なんで王都の西側だけ?って考察もされてたし」


「あぁ・・・討伐したけど秘匿したパーティかクランがあるって事か・・・」


まぁ私たちも秘匿してるし、秘匿するプレーヤーは一定数は居るだろうな。

下手に目立つと嫉妬から粘着されて叩かれるのがネットゲーだし。


「それじゃネズミ退治に参加する?」


「それで良いと思うよ。ただ掲示板とかでかなり大々的に参加を呼びかけられてたから、取り合いになるかも知れないけど」


「ん・・・それはそれで面白いかも宝探し競争みたいで」


「それじゃさっさと朝ご飯食べて移動しないと。早い者勝ちなんだろうから、先に勝手に討伐始めるプレーヤー居るだろうし」


ネズミの大発生エリアは南の冒険者ギルドから西に行った所らしいので、乗合馬車で移動しようと東の冒険者ギルドの前まで移動する。


「あ、エリザ!!ちょうどイイや。今暇!?」


突然、横から子供に声を掛けられる。


「あ、マーク、おはよう。どうしたの?今日は配達は残念だけどやらないよ?」


「違うよ馬鹿!!ネネとカルロを知らないか?昨日から家に帰ってないんだよ!!」


「えっ?どう言う事?ちょっと詳しく話してよ?」


「知らねぇよ!!昨日3人で遊んで夕方に分かれたんだよ。俺んちよりネネとカルロの家は遠くにあるから俺は先に分かれたんだよ。でも夜にネネんちの親が家に来てネネとカルロが帰ってきてないって」


悪ガキ風のマークがちょっと半泣き気味に心配してる。


「えっと、誘拐かなぁ?」


サンドラが思い付いた可能性を口にする。


「この年で駆け落ちとか考えられないものね」


ヒルデはヒルデで寝惚けた事を言っている。


「それで今はどう言う状態?3人の親は2人を探してるんだよね?何か手掛かりは?」


「うん。近所の人たちも協力して探してくれてるけど何も見付からなくて・・・」


「えっと・・・マークが分かれた場所からネネとカルロの家までの距離はどれくらいあるの?」


「ん・・・どっちも歩いて10分ぐらい。走ればもっと早く着くよ」


「エリザこれは誘拐かな?身代金狙いか、そのまま奴隷として売られるか、イタズラされるか・・・」


ヒルデが誰でも思い付きそうな推理を展開する。


「いや、この世界に奴隷ってないでしょ?ないよね?」


「マーク君、帰り道に池とか川とか水路はある?」


質問からサンドラが不吉な事を想像してるのが分かる。


「一応、川があって橋が架かってる場所はある・・・でも何も見付かってないから!!」


マークも不吉な事が頭に浮かんだんだろう。

自分に言い聞かせるようにその可能性を否定する。


「とりあえず現場を見てみないと分からないよね?マークが2人と分かれた場所から2人の家までを歩いてみる?」


ヒルデが提案してくる。


「ヒルデ、ネズミ退治は良いの?」


一応聞いてみる。


「何言ってるの!?いいに決まってるでしょ!!」


「ん・・・マーク君はこのまま冒険者ギルドまで言って玄関で『友達が行方不明だから探して。お金は払えないけどお願い!!』って大声で叫んで来て。多分、それなりの人が手伝ってくれると思うから。」


サンドラがマークに指示を出す。

人海戦術か。確かにそれが一番だろう。

イベント最終日の最終イベントだと勘違いしたプレーヤーは参加する可能性が高い。

いや、本当に最終イベントなのかも?

うーん・・・最終イベントなのだとしたらまだ2人は無事な可能性が高い。

となると生還から逆算して考えれば・・・やっぱり人攫いに捕まってるのが可能性が一番高いのかな?

他の可能性としては・・・。


「ねぇ、エリザ聞いてる?エリザ!!」


ヒルデに呼びかけられて考えが中断される。


「えっ、あ、考え事してた。で何?」


「もう。とりあえずマーク君は冒険者ギルドに走らせて、私たちは先にマーク君が2人と分かれた場所から2人の家まで歩いてみるから。今サンドラが場所を聞いてるから」


と言う訳で、私たちはネズミ退治の予定を中止して行方不明者捜索をする事になった。



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