どうするの?
「ねぇ、他のプレーヤーと合流って何?」
私が質問すると、サンドラは質問の意味が分からないと言った感じでこちらを見る。
「前回討伐失敗したパーティーに私が手助けするんじゃないの?他のプレーヤーって何?」
「あぁ、今回は6パーティー合同だよ?」
サラッと重大な情報を言うサンドラ。
「えっ?6パーティーって30人レイドを組んで戦うの?」
「あぁ、そこまでちゃんとしたものじゃないよ?6パーティーで各エリアを受け持って対応しようって話で私たちは3人パーティーのままだよ?このイベントを発生させたパーティーも4人パーティーだし」
「出発しますよ!!馬車に乗り込んで下さい!!」
御者のロールプレイをしてるのだろうか?
馬車を持つプレーヤーに促され、サンドラとの話を中断して馬車に乗り込む。
他にも御者にお金を払ってプレーヤーが5人ほど乗り込む。パーティーだろうか?
「ここから北門の冒険者ギルドまでだと1時間ちょっとで辿り着きます。道路事情によって到着時間は前後するので御了承下さい。それでは出発します」
御者はそう言うと王都の大通りを軽快に走って行く。
このゲーム、リアルなのは良いんだけど移動が面倒臭いのが難点だと思う。
普通のゲームならポータルとかで街から街へは瞬間移動できるのに。
流れる街中の景色を見ながらサンドラにまた質問する。
「ねぇ、複数パーティーで討伐戦ってどんな感じで戦うの?」
私の質問に少し考える様子を見せた後にサンドラが答える。
「今回の戦いがある場所は墓地なんだけどね結構広いらしいのよ。魔物は墓地の色んな場所で出現するから囲まれて負けたみたい」
「だから墓地を6つのエリアに区切って、そこでそれぞれのパーティーが個別に戦えば囲まれる確率は下がると?その作戦はちょっと杜撰じゃない?」
「それは私も思ったんだけど・・・自分たちだけで戦えた方が気が楽だと思って・・・」
サンドラも杜撰だと感じてたんだろう。
語尾が弱くなる。
「確かに杜撰よね。でもパーティー合同の狩りはどのパーティーも始めてだから高度に柔軟かつ臨機応変な指揮と連携とか無理だと思うよ?何回か死に戻りして連携を深めるんなら兎も角」
私たちの会話を黙って聞いていたヒルデが私たちに自分の見解を話す。
「確かに指揮だ連携だって言うのは厳しいよね。囲まれて全滅するぐらい状況判断の怪しいパーティーに指揮を任せるの嫌だし」
「このパーティーも猪が2匹も居るから、他パーティーの足を引っ張る可能性があるけどね」
ヒルデがサラッと毒を吐く。
何度、私とサンドラの突撃で状況を打破してきたと思ってるんだヒルデは。
・・・まぁ後で回復などでフォローしてくれてるヒルデのお陰もあるんだから言われるのは仕方が無いか。
「じゃあ、やる事は普段と変わらないんだね?それなら良いよ」
「エリザの普段がどの事のを言ってるのか分からないけど、連戦になるからMP管理はちゃんとやってよね。酔っ払いの相手は大変だったんだよ?」
確かにポーションは飲み過ぎるとポーション酔いがあるから、MPポーションをガブ飲みして魔法を連打するのは難しい。
特に今は【棍】と【魔力操作】を装備する為に【MPアップ】【MP回復up】を外してるから更に継続戦闘は厳しくなってる。
「この間のエリザは酷かったよね。変にテンション高いし、巨大ミミズと戦うのに牧場を転げ回ったから牛の落とし物で汚れてたりして」
サンドラが語る。
えっ?私、牛の落とし物塗れだったの?
いや、そりゃ戦うのに必至で気にしてられなかったけどさ。
いや、地面を転がってたのは私だけじゃないよね?サンドラだって巨大ミミズに吹き飛ばされで地面を転がってたし。
・・・いや、確認するは止めてスルーしとこう。世の中にはハッキリさせない方が良い事もある。
「そうだね。MP管理する為にも今回は始めから棍メインで戦って見ようかな・・・。棍のスキル上げもしたいし」
私がそう言うとヒルデが渋い顔をする。
「あんた魔法使いじゃないの?HP管理をサンドラ1人分やるのとサンドラとエリザ2人分をやるのでは難易度が変わるんだからね?私のMP管理もあるんだから」
「あ・・・ヒルデ、ありがとう」
笑って誤魔化しとく。
「あ、そもそもはサンドラが宿を出る前に今日やる事を言っとけば、宿屋でスキル変更できたのに。【MPアップ】【MP回復up】を装備してるのとして無いのとではかなり違うんだよ?」
「えぇ、エリザはMPが残っても棍が無くても、長杖を構えて殴り掛かるじゃん・・・」
「そうよね。魔法使いが横っ跳びしたり、地面を転げ回ったたりとかそんな行動を取ろうとするのが変なのよね」
あれ?なんで2人の矛先が私に向いてるんだろ?
「違うんだって、ちょっと聞いてよ?【服】スキルって防御力や耐久力とかそっち系のステータスはアップしないみたいなんだけど、回避力とか敏捷性みたいな感じのステータスがアップするみたいなのよ?受けるよりは避けろみたいな?」
とりあえずそれっぽい事を言って自己弁護しとく。
「ほら、中国拳法とかでも装備は棍と服でしょ?斧を持って金属鎧を着た中国拳法使いとか居ないじゃ無い?」
話を逸らす為に一見、関係がありそうで関係のない話を始める。
「あぁ、確かに鎧を着た中国拳法使いっていないかも。重い武器や鎧を身に付けないのは敏捷性を損なわない為かもね」
よしヒルデが釣れた。ここから上手く話を逸らそう。
「えっ、あれは単に拳法やってるお寺がお金が無くて金属製の武具類を買えなかったからでしょ?だから山から取ってきて削った棒を武器にしてるだけで」
突然、サンドラが何処で仕入れたのか分からない知識を披露する。
「えっ、そうなの?」
ヒルデがサンドラの発言に食い付く。
「さぁ?なんとなくそう思っただけ」
そこで見事に梯子を外すサンドラ。
こんな馬鹿なやり取りをして時間を潰してる間に馬車は北門に辿り着いた。
「やっぱり馬車は早いね。歩いてたら半日かかる距離を1時間とちょっとだものね」
私たちは御者のプレーヤーに挨拶して、北の冒険者ギルドの前に立つ。
北の冒険者ギルドも東など他の冒険者ギルドと同じ作りになっていて変わり映えは無い。
まわりにある商店や食堂が違うのでここは北の冒険者ギルドだと判断がつくレベル。
「ちょっと早く着き過ぎたかも」
サンドラが呟く。
「待ち合わせ時間までまだまだ時間あるの?それならポーション類を買ってこようよ?ミミズのドロップアイテムも売って換金しないと【収納】がいっぱいだし」
私たちは冒険者ギルドで売り買いをし、近くの喫茶店で時間を潰して待ち合わせ時間の15分前に待ち合わせ場所の冒険者ギルド前に行く。
すると既に10人ぐらい人が集まってるのが見える。たぶんあれが今回のメンバーなんだろう。
「こんにちわ。パーティー『回転木馬』の方ですか?」
サンドラが話し掛け確認を取ると挨拶をして私たちを紹介する。
私たち3人の中で1番社交的なのはサンドラと改めて実感する。
人見知りのヒルデには無理だろうし、私も知らない人と関わるよりは1人の方が気が楽だし。
挨拶と自己紹介が終わるとまだ来てない人たちが居るので待ち合わせ時間まで待機となった。
特にやる事もなくボーッと待ってると不意に声を掛けられる。
「えっと、確かエリザさんでしたよね?私の事を覚えてますか?」
新手のナンパか?そう思いながら振り返ると、大きな熊のような体格に神官服のようなものを着たスキンヘッドの男の人が立ってた。
「あっ、あ・・・えっと確か大師坊さんですよね?」
「はい。お久しぶりです。私も今回の討伐戦に参加するのでよろしくお願いします」