討伐戦
「こちらこそよろしくお願いします」
私は大師坊さんに挨拶をすると私のパーティーメンバーですとヒルデとサンドラを紹介する。
あれ?そう言えば大師坊さんはソロって言ってた気がする。
「そう言えば大師坊さんはパーティー組んだんですか?確か前はソロだと言ってませんでしたか?」
「はい今でもソロですよ。今日の討伐に参加したいって人達で野良パーティー組んで参加してるんです」
野良パーティーで参加か・・・もしかして今回の討伐って人気低いの?3人パーティーの私たちや野良パーティーが参加認められるって・・・。
そんな事を考えてると待ち合わせ時間になったようでパーティー『回転木馬』のリーダーみたいな人が話し始めた。
「はい!!すみません!!こちら注目お願いします!!今日の討伐戦の募集に参加ありがとうございます。まず今日の討伐戦の基本的な決まりの確認をさせて貰います!!」
おぉ、凄い。
30人近くいる参加者の前に立ってキョドらずちゃんと話す事が出来るなんて。
パーティー『回転木馬』のリーダー(?)の時雨さんの話した内容を箇条書きするとこんな感じ。
・6パーティーでエリアを割り当て、そこのエリアに留まって戦う
・戦い方は自由。他のパーティーの迷惑には成らないようにする。
・アイテムドロップは得た人のもの、後でドロップアイテムの分配はしない
・死亡して神殿に飛ばされたら、そこでその人は終了で即解散、後でアイテム分配はしない
・不測の事態には臨機応変に。その場合は他のパーティーに何をするか連絡する。
ん・・・雑だ。
死んだらクリアアイテムがあったとしても貰えないとか無茶出来ないな・・・。
寧ろクリア寸前で味方を殺してアイテム総取りなんて考えるパーティーが出ないか心配。
まぁ、やったとしてもどんなアイテムが出るか分からない訳だし、掲示板で名前を晒されPKとか地雷とか呼ばれるリスクを考えるとやる人は少ないだろうな。
ゼロとは断定できないのがネットゲームの怖さだけど。
そして『回転木馬』のパーティーを先頭に魔物が出る場所へ北門から西に徒歩移動。
30人近いプレーヤーがゾロゾロと歩くのはちょっと間抜けに感じる。
幼稚園の頃の徒歩での遠足を思い出す。
日が傾きかけ薄暗くなり始めた頃に目的地に到着した。
だが目的地はちょっとしたトラブルが起きていた。
魔物の出る場所を封鎖するNPCは王都の衛兵だろうか?
その衛兵と魔物を討伐するから中に入れろと詰め寄るプレーヤーたち。
たぶんフラグ立ててないから入れて貰えないんだろう。
その押し問答を横目に『回転木馬』の時雨さんが衛兵に声をかけると私たちレイドパーティーだけすんなりと中に入れて貰えた。
「ねぇ、老人会の時のサンドラ・ラブのお爺ちゃんの話だとお城の兵士ってスキル的にプレーヤーより強そうだけど何で兵士が魔物を討伐せずに私達が討伐しなければ成らないんだろ?」
ふと疑問に思った事をヒルデとサンドラに聞いてみる。
「兵士が倒しちゃったら私たちのイベントに成らないからじゃない?」
サンドラが元も子もない発言をする。
「いや、そう言う話じゃなくて・・・」
「『回転木馬』のパーティーと王国で何か密約がされてるって事ね・・・もしかしたら『回転木馬』が進めてるユニークイベントは魔物の討伐だけじゃなく、その前後もある継続クエストなのかも」
ヒルデが陰謀論的な事を妄想し始める。
「つまり魔物を倒す為に私たちみたいなのを集める事もクエストの一部って事?」
サンドラがヒルデの陰謀論に乗っかる。
仮定に仮定を重ねる陰謀論に興味はない。
「そんなの知ったって私達に恩恵は無いでしょ?ほら行くよ」
「エリザ、あんたが話を振った癖に・・・」
敷地の中に入ると既に魔物が彷徨いてるのが見える。
「ねぇ、ここ墓地だよね?」
「そうだね」
「あれ、ゴースト系の魔物だよね?」
「ここ墓地だからね」
「私達はあれと戦うの?」
「そりゃ、魔物を倒しに来たんだからね」
マジか・・・墓地とかそんな話してたっけ?
ゴースト系は良いけどゾンビとか腐りかけの死体とか屍鬼とか出ないよね?
VRで腐りかけの死体を殴って、変な汁がプシャーとかトラウマものだと思うんだけど・・・。
サンドラが盾で殴って、砕け散った残骸が私にかかるとかありそう・・・よし、気を付けよう。
「エリザ、何考えてるの?」
ヒルデが聞いてくる。
「いや、VRでゾンビとか嫌だなと思って。スケルトンなら問題ないんだけど」
「あ・・・」
その可能性を認識したのかヒルデの顔が曇った。
「もしそうなったら後でサンドラを説教だね」
「うん。私も説教に付き合うわ」
そんな話をしているとパーティー代表者として打ち合わせに行ってたサンドラが帰ってきた。
「私達の受け持ちエリアは右奥にして貰ったよ。合図で全員が一斉に持ち場まで駆け込むから準備してね。角だから二方向からの敵襲に警戒するだけで済むから楽だよ。褒めて」
いや、私達は褒めるんじゃなく君を説教する話をしてんだよサンドラ。
「5・4・3・2・1・突撃!!」
新年のカウントダウンの合図のような号令で私達は自分たちの持ち場の墓地の右奥まで道中の魔物をスルーして駆け出す。
空飛ぶ白い手の生えたスライムの様な魔物、ゴースト?が襲って来るが、各自で武器や盾で攻撃を躱し現場にやっと辿り着いた。
牧場での戦闘は馬に乗っての移動だったから楽だったな・・・。
「さぁ、かかってこい!!」
ヒルデが叫ぶ。
なぜかヒルデのテンションが高い。
ヒルデの声に反応したのかゴーストが数匹襲いかかってくる。
ここまでくればやる事は変わらない。
「ファイアサークル!!」
「ウォーターサークル!!」
魔法で先制攻撃し、走って近付き棍で殴り掛かる。
隣ではサンドラが別のゴーストに片手斧を振り下ろし襲いかかってる。
ゴーストは空中を不規則に飛び回り、体当たりを仕掛けて来るがさほど脅威ではない。
「ライトソード!!」
ヒルデが唱えた光魔法の剣がゴーストの上空に発生してゴーストに向かって落ち、突き刺さる。
「光属性だからってゴーストに特攻って訳じゃないかも」
ヒルデの呟きが聞こえる。
ヒルデは地味に検証をしてるみたいだ。
ちゃんと考えて戦ってるんだな。
30匹近くゴーストを倒したあたりでゴーストがやって来なくなった。
「あれ?これで終わり?」
暴れ足りないのかサンドラが物足りなそうに呟く。
私は今回は魔法じゃなく棍をメインに戦ってたせいかMPポーションは一度も飲まずに済んだ。
「サンドラ、前回の話を回転木馬から聞いてないの?普通に考えたらこれで終わりじゃないでしょ?『回転木馬』の人達この数の魔物に全滅したの?って話になるもの」
「エリザ、今回は6パーティーで分けてるから1パーティーで今の6倍の魔物はキツいと思うよ?」
戦闘中サンドラと私を回復魔法で回復し続けMPを消費したヒルデがMPポーションを飲みながら答える。
「そう言うヒルデも次があると思ってるからポーション飲んでるんでしょ?」
「まぁミミズの時はお代わりあったからねぇ」
「とりあえず、受け持ちの魔物は湧かなくなったと連絡してみる」
サンドラがメニュー画面を操作してメッセージ機能を使い他のパーティーと連絡を取る。
「ん・・・戦闘が終わったのは私達も含めて3パーティーだけみたい。他の所は続いてるからとりあえず待機だって」
サンドラが私達に報告する。
「まだ戦ってるパーティーの所に助けに行かなくて良いの?」
ヒルデが問いかける。
「救援要請も無いし獲物の横取りはダメでしょ?普通」
「あ・・・それもそうか。アイテムドロップは倒した人のものだものね」
「それより回転木馬はもう戦闘は終わってたの?」
私は気になってた事をサンドラに聞く。
「うん。終わって今は持ち場で待機してるって」
「あ・・・じゃ、お代わりは確定かな」
「そうだね。既にゴーストを全滅させてるぐらい回転木馬は強いんだから、前回ゴースト相手に全滅なんておかしいものね」
「今回、たまたま回転木馬の受け持ち場所に湧いたゴーストの数が少なかっただけかもよ?」
「それなら持ち場で待機とか指示を出さないでしょ?」
「あ、それもそうか」
そんな話をしてると、墓地に変化が起こった。




