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ミミズ、ミミズ、パニック

「なにこれ!!何匹いるの!?」


私が叫ぶ。


「分かる訳ないでしょ!!とりあえず倒しまくるよ!!」


「2人とも!!ここだけじゃないよ!!あっちにも」


サンドラの声を聞き、言われた方向を見ると少し離れた場所にも羽ミミズの群れが見える。


「どうする?各個撃破?それとも戦力を分ける?」


2人に作戦を相談する。


「各個撃破でしょ?3人で群れを1つ1つ倒して行こう!!」


ヒルデが提案する。


「ちょっとまって。羽ミミズを倒すより牛の救出と避難を優先した方が良いかも!!3人バラバラに動いて牛を逃がそう!!」


サンドラがヒルデの案を却下する。

確かに牧場の人は「牛を逃がせ!!」と叫んでた。あれがヒントか?


「サンドラはバラバラで大丈夫!?」


ヒルデが馬に跨がっり走ったまま長弓から矢を放ち羽ミミズを撃ち落としたヒルデがサンドラに声を掛ける。

ヒルデの癖にちょっと格好良い。流鏑馬(やぶさめ)をする武士みたい。


馬に乗り移動しながらの攻撃だと遠距離攻撃が連射の効かない投げ斧しか無いサンドラは不利だろう。


「大丈夫!!投げ斧は2個あるから前よりは連射効くし、それに・・・シエロ!!」


サンドラが胸のネックレスから従魔の雀のシエロを呼び出す。

呼び出されたシエロは直ぐさま風魔法のウインドサークルを放ち羽ミミズを1度に数匹まとめて葬る。


「こんな事もあろうかとシエロを育ててきたからね」


サンドラがドヤ顔をする。

って、何処の科学者さ。


しかし今のシエロのおかげでサークル系の魔法1発で羽ミミズを倒せると分かったのは大きい。

私もMP節約しないと厳しいから1匹1匹倒すよりは範囲魔法で倒してしまった方が効率がいい。


「それじゃサンドラはこのまま真っ直ぐ進んで!!エリザは右手側、私は左手側からグルッと!!牛を助けるのが最優先ね!!」


私は足を締めて馬に指示を出して牧場の右側へと向かう。

道中に湧いてる羽ミミズを見付けてはサークル系の魔法を放ち数を間引く。

【魔力操作】のおかげでサークルの範囲を任意である程度は変えられるのが楽だ。その分、MPは消費するけど。


「いた。羽ミミズが群がってる」


牛数頭を見付け助けようと魔法を放とうとするが射線に牛が入ってて誤射してしまいそう。

サークル系の魔法では確実に牛を巻き込むし・・・。


「もう!!」


馬から降りて長杖を【収納】に入れ、棍を取り出す。


「そのまま牛たちを助ける為に走り近付き、群がる羽ミミズを棍で殴り倒す」


一撃で羽ミミズは倒せるので、気分的には無双してるようで気持ちがいい。

羽ミミズ達は私を敵と認識すると私に向かって体当たり攻撃や空からソイルボールを放ってくる。

1発1発のダメージは少ないが数が数だけに地味にHPを削られる。


「ウインドサークル!!」


私が引き付け牛たちが厩舎の方に逃げたのを確認し、サークル系の魔法で一気に葬る。


「MPポーションも飲む必要が出そうなのに」


そう1人文句を言いつつHPポーションを飲み回復する。

装甲が紙の私はHPを満タンに保っておかないと強い敵の一撃で死ぬ可能性もあるので気を付けないと。


再び馬に跨がり高低差のある牧場の放牧地を走り、牛たち見付けては牛を襲う羽ミミズを棍で殴り倒し、牛たちを逃がしたら範囲魔法で羽ミミズを殲滅するのを繰り返す。


そして牧場の最奥地まで辿り着くと、向こうからヒルデも無事に馬に跨がりやってくる。


「あ、ヒルデお疲れ。何も問題なかった?」


「物量で圧されるのはキツいわ・・・範囲攻撃魔法のあるエリザが羨ましい。ってあれ?サンドラは?」


「えっ最短距離で直線的に奥に行ったサンドラが1番遅いっておかしいわよ?」


そんな話をしてるとサンドラがやってくるのが見える。


「あ、来たよ。噂をすれば・・・って、追われてる?」


こちらに向かって走ってくるサンドラが引き連れてる無数の羽ミミズ。


「いた!!エリザ!!魔法連射お願い!!」


「ちょ!?トレインじゃん!!」


「ファイアサークル!!」

「ウォーターサークル!!」

「ウインドサークル!!」

「ソイルサークル!!」


なぜ一撃で倒せる羽ミミズに魔法を乱射させる必要があるのか分からなかったが、それを知ってるサンドラが連射を頼んできたので言われたまま実行する。


「2人とも構えて!!戦闘準備!!」


言われた通り魔法を連射したのに、こちらにやってきたサンドラは更に戦闘が続くと言う。

何が起こってるんだろう?意味が分からない。


サンドラの見てる方向を見ると魔法で撃ち落とされた羽ミミズの羽がもげて完全なミミズの姿になった羽ミミズがこちらに向かってやって来る。


「何あれ?何やったのサンドラ!!」


「多分、巨大ミミズに成る一歩手前のミミズなんだと思う。羽が取れてから一気に強くなるの」


どうやらサンドラはアタリのルートに当たったみたいだ。貧乏くじだね。


私は再び長杖を構えて範囲攻撃魔法を乱射する。


「ファイアサークル!!」

「ウォーターサークル!!」

「ウインドサークル!!」

「ソイルサークル!!」


ミミズ達はダメージを受けて一瞬怯むが、倒れる様子もなくこちらに向かってくる。


「エリザ、行くよ!!」


馬から降りてヒルデに回復されてたサンドラが盾を構えて自らの足で走って行きミミズに片手斧で斬りかかる。

サンドラの声を受けた私も馬から降りて長杖から棍に持ち直し、少し遅れてミミズに殴り掛かる。


「なんで後衛のエリザが突撃するのよ!!」

「ライトスピア!!」

「ダークスピア!!」


後方から放たれたヒルデの魔法が私の脇をすり抜けミミズに突き刺さる。


「危なっ!!MPが残り少ないんだからしょうがないでしょ!!ファイアーボール!!」


【魔力操作】で棍の先にファイアーボールを纏わせてミミズを殴り飛ばす。


「2人とも喧嘩しないで集中して!!」

「シールドストライク!!」

「兜割り!!」


サンドラが大盾でミミズを殴り倒し、ミミズの頭に片手斧を振り下ろしトドメを刺す。


一撃で倒せる羽ミミズよりは強くなってても、そこは巨大ミミズまで成長しきってない中途半端な状態のミミズ。

数は多くとも3人で対応すれば対応できた。


「シエロ!!」


「チチッ!!」


シエロがウインドボールでミミズの動きを止める。


「貰った!!ラスト!!」

「連続斬り」


ヒルデが片手剣の技でミミズにトドメさして戦闘は終了する。


「ミミズはもう終わり?」


「それよりも牛は全部逃がした?目的はそれだからね?」


私たちは馬に乗り、辺りを警戒しながら牧場の厩舎に戻る。


「お、嬢ちゃんたち無事かい!!怪我は無いかい!!」


私たちを見付けたおじさんが声をかけてくる。


「はい何とか無事です。それより牛は全部帰って来ましたか?」


「ああ、全部帰ってきてるよ。多少怪我をしてる牛はいるが命に関わる怪我をしてる牛は居ない。助かったよ」


「しかしなんでこんなにミミズが・・・」


「ん・・・もしかしたら城壁の下を掘ってこっち側まで来たのかも知れないな。そしてここで繁殖したんだろう」


「ねぇヒルデ、ミミズってどうやって繁殖するの?」


サンドラがヒルデに質問する。


「・・・半分に千切れて分裂するんじゃないの?雌雄同体って言うんじゃなかった?」


「お馬鹿。普通に卵でしょ?虫なんだから」


「えっ、ミミズって虫なの?」


「ムカデとかの仲間じゃないの?」


「ちょっとヒルデもエリザも何言ってるの。そんな話じゃなくて、繁殖したなら大人の雄と雌が居るんじゃないか?って事だよ?」


サンドラが重大な事に気付いてた。


もう一匹巨大ミミズが居るって事?

つまりもう一回巨大ミミズ戦があると?

もうミミズとの戦いはお腹いっぱいなんだけど・・・。


「ま、まぁ、それは様子見だな。城壁の下に穴が空いてるのなら行政に報告しないといけないからな。そうしたら国が穴埋めと残りのミミズ退治も対応してくれるだろう」


私たちのうんざりした顔を見たせいかおじさんがフォローしてくれる。

確かにそうだよね。私たちが全て対処しなければ成らない訳じゃないし、羽ミミズが単為生殖かも知れないし。

なんせミミズじゃなく、羽ミミズだし、そもそもゲームだから。

うん、ミミズとはもう戦いたく無いんだな私は。



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