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街でボッチ

「救援ありがとうございました」


短弓を持ったプレーヤーに御礼を言われる。

助けて下さいと救援を求めてきたプレーヤーだ。


「いや・・・助かりました。まさか連続攻撃で盾を弾く魔物がいるとは」


方盾にメイスと言ういかにもな見た目の男にも御礼を言われる。


「いえ、たまたま通り掛かっただけですから」


「あ、私はヴィル。こっちの小さいのはニコです」


方盾にメイスの男から自己紹介される。

この流れはなんか苦手。


「私はエリザと言います」


「凄い魔法ですね。助かりました。ドイルです」


槍を持った男が握手を求めてくる。

何だこれ?

とりあえず握手する。早くこの場を去りたい。


「エリザさんはソロなんですか?」


「いえ、普段は固定パーティーを組んでるんですが、パーティーの方針で数日間ソロでの戦闘技能を磨こうってなってソロで狩りをしてます」


「ソロ技能ですか?」


「パーティーの1人が【調教】スキルを取ってテイマーになりまして、そのレベル上げの為に。それに私もある程度は回避と近接戦の練習をしておいた方がって話になりまして」


「テイマーですか。私も出来心で【召喚】スキルを取ってるのですがやっぱりレベル上げ大変ですよ」


トーマスと名乗ったその人は両手に包帯のようなものを巻いている。

ボクサー?格闘家なんだろうか?

あれ?この人さっきの戦闘で何してたろう?


「私たち西の街の近くの湿原で狩りをしてたんですが飽きてこっちに来てさっきのが初戦闘だったので焦って焦って」


戦闘が終わってから一人一人回復魔法を掛けてたアントンさんが話し掛けてくる。

この人、腰に鞭を括り付けてるんですけど、鞭ってネタ武器じゃないの?


「ここらだとさっきのウサギの他に奇襲してくる多足のカエルが厄介ですね」


「そうなんですか。情報ありがとうございます」


このゲームがMMOのせいか話好きのプレーヤーが多い気がする。

私はMMOの部分よりVRの方に魅力を感じてこのゲームやってるのにな・・・。

他のプレーヤーとの会話が億劫だ。


「いえ、では私はこれで」


挨拶をしてその場を離れる。

とりあえずこれで印象が悪いなんて事は無いだろ。


予定と違って多足カエル、羽ウサギと戦ってしまったけど私の本命は豚ネズミを相手に棍と魔法での立ち回りの練習をしながら安全にスキルレベル上げないと。

ソロで羽ウサギ6匹とかと戦うのは狂気の沙汰だもの。


その後、無事に何度も豚ネズミを相手に棍のスキルレベル上げをしてドロップアイテムで【収納】とリュックサックがいっぱいになり、南の街へと戻った。


冒険者ギルドでドロップアイテムを売りホクホク顔で夕飯に食べるものを屋台街で探す。

南の街の周辺はドロップアイテムで肉が豊富に取れるせいで屋台も肉料理が多い。


「すいません、これ何の肉ですか?」


「いらっしゃい。これはビッグコッコの肉ですよ」


「ビッグコッコ?」


「南の門から出た先の森に住んでる大きな鶏ですよ」


「あぁ、あれですか。それじゃ一皿下さい」


「はいよ毎度あり。タレはどれにする?」


見ると何種類がタレがある。

赤いタレや緑のタレとか何味なんだろ?


「じゃ、お勧めのタレを掛けてください」


自分で選ぶのを放棄してみる。


「じゃ、マッカラタレをかけとくよ」


「マッカラ?」


「この街の隠れた特産品でね。独特の風味とピリッとした辛さのある木の実だよ」


「へぇ、そんな木の実があるんですか?」


「あぁ。この街から南に行くと南東の原生林と南西の砂漠への二股の分かれ道があるだろ?そこを道を外れそのまま南に行くとマッカラって木の群生地があるんだ。もし行ったら取ってきてくれ。良い値段で買い取るよ」


「街の南の更に奥ですか・・・私の実力では狼の餌食になってしまいますよ」


そんなとこで取れる木の実なら本当に良い値段がするんだろうな。

ちょっと興味があるけど私は【採取】スキル持ってないから採れるか分からない。

何より魔物に食い殺される未来が見える。


「そっか。そりゃ残念だ。神殿に水汲みにでも行くついでにでも採ってきて貰えればと思ったんだけどね」


「えっ?神殿?なんですかそれは?」


「んっ?神殿も知らないのかい?」


えっ?知ってて当たり前の事なの?

掲示板情報に出てたかな?


「この街に来たばっかりなので。神殿があるんですか?」


「マッカラの木の群生地の更に奥に今は使われてない昔の神殿があるんだよ。そこに湧いてる水は薬を作ったりするのに向いてるらしくて調薬ギルドや錬金ギルドで定期的に採取しに行ってるよ」


「そんなものが。知りませんでした」


「マッカラの実もその水汲み依頼を受けた冒険者がついでに採ってくるのが街で売られるんだけど流通量が少ないから高いんだよ。採ってきてくれる人が増えれば安くなると思うんだけどね・・・」


その後、この屋台のオジサンの愚痴を聞かされた。

何かスイッチが入ったように店を、別の店員(奥さん?)に任せて話し続けるオジサンに少し恐怖を感じたのは内緒だ。


すっかり暗くなっていたので宿を取りログアウトする。

自分の部屋で目を覚ました私は携帯電話を手にとる。


『FEOでさ、南の街の更に南に謎の神殿があるって話知ってる?』


凜と祐奈にワザと意味ありげにメッセージを送る。


「しかしなんでそんな情報が簡単に手に入ったんだろ?」


独り呟き部屋の中で考える。

特定のNPCに話を聞けば情報が手に入る?

確かにロールプレイングゲームの基本だよね。

昔ながらのテレビゲームのRPGなら話し掛けるだけで情報を教えてくれる。

でもこのゲームではNPCも色んな事を話すから声を掛けるだけでは情報は手に入らない訳で。

どんな質問をするか?質問するキーワードを見付けないと駄目なのかな・・・。


そんな事を考えてると凜からメッセージが返ってきた。


『なにそれ!!掲示板でも南の街に神殿があるって情報は公開されてないはず。詳しく』


あら?何気にレアな情報を仕入れちゃった?

そんな馬鹿な。

屋台のおっちゃんとの世間話で聞ける情報なのに?


『私たちのレベルじゃまだ行けないエリアだろうから会った時に話すよ。掲示板には秘匿しといてね』


何となく勿体付けてみる。

たぶんこのまま考えても答は出ないだろうから、諦めて茶の間にご飯を食べに行く。


「あ、良いところに来た。午後から買い物に行くから付き合って。特売の砂糖がお一人様2個までなんだよ」


お婆ちゃんの鶴の一声で午後の予定が数時間決まった。

部屋でゲームしてるだけとバレてる私に拒否権なんか無い訳で。


その後、お婆ちゃんの運転する車で片道数十分のスーパーに買い物に行き、帰ってきた私は茶の間で牛乳片手にお婆ちゃんに買って貰った蒸しパンを食べてる。

今からFEOにログインして狩りに行くのは半端な時間なんだよね。

直ぐに夜になってしまうだろうし、南の街でソロで夜狩りは軽く死ねる気がする。

諦めてテレビを見てると祐奈からメッセージが届いた。


『神殿の話は聞いた事ないよ。葵は南の街にいるの?それなら街の西側が面白いよ。雑貨屋さんとか見て回るのお勧め。あとペット屋さんもあるよ』


祐奈、なんでこの時間にログアウトしたんだろ?

どこかで夜狩りでもしてたのかな?


とりあえずやる事も無いので、祐奈のお勧めに従って南の街の西側をブラブラするかな。

少しはお金に余裕があるから街ブラする余裕はあるわけだし。たまにはそう言うのも良いだろう。

NPCから得れる情報にも興味が湧いてるし。


私は茶の間から自分の部屋に戻るとFEOにログインした。

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