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反省会

ホットケーキが熱い内にフォークを使いバターを表面に満遍なく塗る。

そしてホットケーキの中央にメイプルシロップをかけ、ホットケーキの淵から流れ落ちるメイプルシロップを見つめる。


「良い景色だ・・・」


「ちょっと!!エリザ!!話聞いてる!?」


ヒルデの声で我に返る。


「えっ?あ、ゴメン。ちょっと自分の世界に入ってた」


素直に謝っとこう。


「もう。さっきの敗因の話をしてるの」


「あぁ、不意打ちされたからでしょ?」


「主にエリザがねぇ」


「ちょっと待ってサンドラ。そこは連帯責任でしょ?」


「まさか弱い者から狙って来るとは」


「ちょっと!!言い方!!後衛を狙って来るとは魔物の知能も上がってるって事だよね?」


「エリザ、ヒルデ、そして私って柔らかい順に襲って来るとは」


ちょっと私がプニプニ体型のように聞こえるのは被害妄想だろうか?


「盾役が魔物を引き付けられないと一気にやられるよね」


ちょっと言い返してみる。


「その前のデブ鶏、大蛇も魔物の数は少ないのにギリギリの戦いだったから、不意に集団で襲われると為す術が無かったわね」


「まさか連戦になるとは思わなかったよ。しかも大蛇を倒して気が抜けた処に奇襲とか」


「大蛇の毒霧も、デブ鶏の遠距離からの魔法も想定外だったよねぇ」


次々と上がる反省点と問題点で、攻略があのエリアで停滞してて最前線と言われる理由がちょっと分かった気がする。


「それでどうするの?」


「どうするって?」


「もう一回、あそこに挑戦するのか?もう少し強くなるまで近付かないか?」


「やられっぱなしも気に食わないけど、他のエリアも気になるわね」


「ん・・・今のままでもう一回挑んでも厳しくない?」


「でも、私たちは採取や発掘とかしてないから新素材を求めて別の街に行くメリット少ないよねぇ?」


「そこは気分転換になるでしょ?色々な景色も見れるし違うタイプの魔物と戦えるし」


「分かったわ。じゃ取りあえず散財しようか?」


ヒルデが突然訳の分からない事を言い出す。


「散財?」


「そう。装備更新。新装備を手に入れるのよ」


私たちは南の街周辺で延々と魔物を狩って素材を売ってを繰り返ししてきたのでそれぞれ数十万マニのお金を持ってる。

持ってるけど・・・。


「装備更新って幾らぐらい掛かるの?」


「さぁ?」


「全くの思い付きかい!!」


「そりゃそうでしょ?さっきまで普通に魔物狩りして戦えてたんだから」


「でも、あれだよねぇ。第2陣がもう直ぐ参戦してくるって言うのに初心者装備のままってのもちょっと恥ずかしいよね?」


「確かにそれは恥ずかしいかも。トッププレーヤーを目指してるのに、装備が第2陣と同じとか」


「耐久値が無いから便利なんだけどな・・・初心者装備」


「でも、実際に攻撃力や守備力が低いし、その影響もあって全滅してるしね?」


それを言われると弱い。

確かに私の守備力が高かったらヒルデの回復魔法が間に合ってたかも知れないし、みんなの攻撃力が高かったらデブ鶏や大蛇をもっと手早く倒してたかも知れない。

大蛇に苦戦してなければ、狼が近付いてくる前に戦闘終了してて、狼に奇襲されなかったかも知れない。

まぁ、かも知れないだけど。


「じゃ、どうする?この店を出て装備屋に行く?それとも生産職をやってるプレーヤー探す?」


私が聞くとヒルデもサンドラもどうする?と言う顔で何も応えない。

私たちは殆ど3人で行動してるから、他のプレーヤーとの交流が全くと言ってほど無い。


「じゃ、取りあえず青空市に行こうか。あそこならNPCも何か良いものを売ってるかも知れないし、生産職の人もいるでしょ?」


代案が無かったからか青空市に行く事がすんなり決定し、あとは無駄話をしながら甘い物を食べるのを楽しんだ。


喫茶店を出ると青空市へ向かう。

街の中をダラダラと歩いて移動する。

この無駄に広い王都で徒歩以外の移動方法が何か欲しい。

レンタル自転車とかあったら移動が楽になると思うんだけど、世界観が台無しになるから駄目なんだろうな。


「レンタルロバとか無いのかな?乗り捨てると勝手に厩舎に帰るロバとか」


「スケボーみたいなの作って馬に引かせるとかは?」


「馬だと後蹴りが飛んで来そうじゃない?異世界だと大きなトカゲとかダチョウとか?」


「ローマ時代の戦車あるよね?分かる?馬に引いて貰うやつ。あんな感じでタクシー的なのあれば良いのにねぇ」


「もう素直に馬をテイムして従魔にすれば良いんじゃない?移動したらペンダントに戻せは良いんだし」


「あ、それだ。サンドラ3匹で良いから馬をテイムしてきて(笑)」


そんな馬鹿な話をしながら歩いていると青空市に到着した。


「さてどうする?」


ヒルデが意見を聞いてくる。


「とりあえず良さそうな人に声を掛けるしかないでしょ?」


「あぁ、やっぱりそうだよね。エリザ任せた」


「私かい!!そう言うのは鉄の女サンドラに任せた方が良いと思うよ?」


「誰が鉄の女よ?まぁ鉄っぽい全身鎧を着てるけどさぁ・・・駄目だよ?MMOで人見知りは損だから治さないと」


サンドラがお母さんみたいだ。


「そもそもヒルデは野良パーティーに参加してたりするんだから、人見知りって訳じゃないでしょ?」


「えっと・・・必要なら頑張るけど、できる限り頑張りたくないのよ?分かるこの気持ち?」


「あ・・・ちょっと分かるかも」


何説得されてるんだサンドラ。


「ねぇ、そろそろ真面目に探さない?」


辺りを見渡すと食事、アクセサリーなど小物、日用雑貨、薬類、武器、防具と様々な屋台が並んでる。

ただどれが良いのか悪いのか私では全然判断出来なかった。


「取りあえずインスピレーションを信じて適当に声掛けてみようか」


近くの良さそうな店を探してると声を掛けられた。


「お嬢さん達、何か捜し物かい?」


「はい?」


横を向くと少し離れた屋台に20代前半ぐらいに見える髭の男が居た。

隣には20代前半ぐらいの銀色の長い髪の女性・・・リア充かい。


「武器と防具が欲しいんですけどどこの店が良いか分からなくて」


「ならウチの店を見ててってよ?武器も防具もそれなりの物が揃ってるよ?」


特に当ても無いので言われるがままに屋台に並んでる品物を見てみる。

雰囲気的にはあれだ。田舎者の学生が都会で悪い人に騙されて食い物にされる図。

そんな事を頭に思い浮かべ一人苦笑する。


「すいません。装備一式を新しくしたいんですが幾らぐらいになりますか?」


サンドラが単刀直入に聞く。


「装備一式ってあなたの?」


銀髪の女性の人が聞いてくる。


「いえ3人ともです」


「3人とも・・・か。予算を言ってくれればリアル時間で3日ぐらいで作るよ?」


「えっと、ぶっちゃけると相場が分からないんですよね。今の最前線の装備一式だと幾らぐらいになりますか?」


ヒルデがサンドラと店員のやり取りにしびれを切らしたのか話に割って入る。

人見知り設定はどうした?ヒルデ。


「最前線装備と言われても・・・私達も最前線プレーヤーでもトッププレーヤーでも無いから分からないけど、私達が今作れる範囲で1番良い物だと・・・装備一式で30万から50万マニって辺りかな?」


「何をどれだけってのが分からないからな。武器に寄っても材料費や技術料が違うから」


銀髪女性店員の言葉を髭の店員が補足する。

良いコンビだ。やり手感がある。騙されないぞ?


「あ、私は片手斧、大盾、金属の全身鎧、中に着る服、投擲用の手斧が2つ、あと鎧を脱いだとき用の靴の7点です」


「ん・・・片手斧と大盾が1つ10万マニ。金属鎧が15万マニで手斧が1つ5万マニで2つ。服と靴で6万マニで合計51万マニってとこかな」


髭の店員がざっくりとした見積もりを出す。


「どれぐらいの品質になります?」


「第2の街周辺でそれなりに安全に戦えるぐらいの装備かな。初心者装備の2つから3つぐらい上ってぐらいだね。その初心者装備と比べたら段違いだと思うよ?」


「じゃ私はそれでお願いします。51万マニですね?」


「即決かい!!剛気だね。それじゃフレンドコードの交換いいかい?俺はヤット、こっちは相方の丹奈。2人合わせて武器防具取り扱いの金仁屋と名乗ってる」


「やっとさん、たんなさん、こんにや?はい。覚えました。これ私のフレンドコードです」


「はいよ。確かに。何か装備のデザインに要望はあるかい?」


「要望?鎧も盾も左右対称でお願いします。某ファンタジーゲームみたいなオサレな感じゃなくて無骨な感じで」


淡々と話を勧めるサンドラ。

あれ?私とヒルデ、忘れられてない?


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