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第2の街へ

「サンドラぁ・・・会いたかったよ・・・」


翌日の朝、ログインすると既に宿の食堂にはサンドラが居て朝ご飯を食べてた。


「何?その過剰な反応は?」


若干、サンドラが引いてる。


「大変だったのよ昨日。壁の大切さを実感したわ。これからも私を魔物から守ってね?」


「なにそれ?」


私は昨日、狩りで苦労した事をサンドラに語った。

もちろん棍の事は隠して隠して。

装備もスキルも棍を外して元に戻してある。

棍を使う私は世を忍ぶ仮の姿。人に姿を見せられぬソロ狩り限定なのだ。たぶん。


「もう本当に大変だったんだから。大根にボコボコにされてHPポーションまで飲んじゃったよ」


「完全後衛型の魔法使いがソロ狩りしたらそうなるの当たり前じゃない。素直に野良パーティーで狩りをすれば良かったのに」


ログインしてきたヒルデが姿を現した。


「ヒルデは野良パーティーどうだったの?」


「私は野良パーティーで北の門から出て原っぱを抜けた先の湿地帯で狩りをしたよ。パーティーの都合で遠距離アタッカーやってたから光と闇の魔法のレベルが上がった」


朝ご飯を食べながらヒルデが胸を張る。


「北は湿地帯なんだ?」


「北ってより、北門から出て西に行くと湿地帯。西門から出て北に向かっても湿地帯には行けるみたいだけど」


「どんな魔物が出たの?」


「毛を飛ばしてくる毛虫とか、空を泳ぐ(ふな)みたいな魚、あと魔法を使う蛍とか・・・」


私が大根を相手に悪戦苦闘してる時にそんな経験をしてたのか。

ちょっと先を行かれた気分。


「でも、移動で時間が掛かったからそこまでジックリ狩りが出来た訳じゃないけどね」


「野良パーティーの弊害かな?」


「いや普通は狩り場のログアウトポイントで野良パーティーを募集するのが定番みたいよ?私とパーティーを組んだ人達とも湿地帯のログアウトポイントで別れたから」


「ヒルデ、1人で王都まで帰ってきたの?大丈夫だった?」


「私は前衛職だし回復魔法も持ってるもの。エリザとは違うわよ?」


ぬぅ、言い返せない。


「わ、私だって見せたかったわ。華麗な引き狩りを」


「引き狩り?」


「そう。魔法を撃っては逃げ、撃って逃げ、トレインやなすり付けギリギリのラインでの立ち回りを」


「それ華麗なの?」


「傍迷惑な・・・」


サンドラとヒルデが白い目で私をみる。

形勢が悪い時は話を変えよう。


「それよりも、そろそろ行かないと遅くなるよ」


そう。

私たちはこれから南の街まで遠征する計画なのだ。

今いる王都の西にある宿から南門まで行くのにもかなりの時間がかかる。

そこから南の原っぱのログアウトポイントか、その先のログアウトポイントまで行くのがこの2Qのとりあえずの目標。


今回は大通りを通らず宿屋を出て細い路地を歩き西から南に直線的に最短距離で向かう。


「ここら辺も何かありそうだよねぇ」


サンドラが辺りを見回し呟く。


「ここまで無駄に広いんだから何かあるよね?」


ヒルデも何か疑ってるようだ。


「掲示板には何か書き込みはないの?」


「うーん、街の人から直接お使いを頼まれるぐらいしか書き込みないよ?しかもみんなユニーククエストみたいで同じクエストはほぼ受けられないのよね」


「ほぼユニーククエストだし、何か特別なクエストは秘匿するよね。普通」


「そうだよね。掲示板に書き込んでも他の人はクエスト受けれないし、自慢するみたいになって反感買う可能性があるものね」


「粘着されたり、悪い噂を立てられたら嫌だものね」


「そうしたら、運営に通報したりブラックリストに入れれば良いんじゃないの?」


私がそう言うとサンドラに呆れた顔をされる。


「エリザ、そんな直線的な行動をする奴は居ないよ・・・。非公式の匿名掲示板で悪い噂を流すに決まってるじゃない?私だってそうするよ?」


「ま、今の私たちには縁のない話だけどね」


ヒルデが自嘲気味に呟く。


「分からないよ?こうしている間にも何かユニーククエストを拾うかも知れないんだから?」


「そこから始まるトッププレーヤー生活♪」


「エリザもヒルデも現実を見ようよ?」


「VRMMOの世界で現実を見ようよと言われても(笑)」


特に何かが起こる事も無く、昼少し前ぐらいに南門に辿り着いた。

南の冒険者ギルド近くの屋台でお弁当を数個買い、その中のサンドイッチを食べながら南門をくぐって王都の外に出る。


「歩きながら食べるのって行儀が悪いよねぇ」


意外とサンドラはこう言う事にうるさい。


「良いの。誰も見てないしゲームの中だから」


謎理論を振りかざすヒルデ。


「しかし街道を歩くのって魔物が出ないから暇だよね」


「何言ってるのエリザ?街道は魔物が出るよ?」


「えっ、遭遇した事が無いよ?出るの?」


当然のように話すヒルデ。


「王都から歩いて1日の距離ぐらいまでは出ないけど、2日3日と離れると平気で魔物が出るよ?しかもそれなりに強い魔物が」


それは初耳だ。

いつもは街道から外れて原っぱに入ってたからな・・・。


「えっ、2日3日も離れるって何日歩くの?」


今度はサンドラが驚く。


「第2の街から更に奥に行くとって話でしょ?」


「ちょっとあんたら何言ってるの?」


「えっ?第2の街には明日には着くんじゃないの?」


「嘘でしょ?1泊2日で着くのは馬車を使った場合。歩きなら4日か5日はかかるわよ?」


「待って。私たちこれから5日も歩くの?」


サンドラが驚く。


「私はその発言をするあなた達に驚きだわ。何で誰も予習して来ないの?出発してから知るって・・・」


ヒルデが呆れたように語る。


「そう言うのはヒルデに一任してるから・・・ねぇ?エリザ」


「そうだよね。ヒルデを信用してるものね。サンドラ」


よし2対1だ。

形勢は有利のはず。


「もしかして、街道にはログアウトポイントが無いのも知らない?」


「えっ、無いの?」


「無いの。だからログアウトする時は街道から逸れてログアウトポイントを探さないと駄目なの」


「それでログアウトポイントの情報は?」


「それまで調べちゃったら冒険じゃ無くなるじゃん」


自信満々に言うヒルデ。


「えっ、調べてないの?」


「そこはちゃんと調べておこうよ?」


「あんたら何一つ調べて無かった人達に言われたく無いんだけど?それに攻略情報を調べてそのまま試すのはツマラナイじゃん?」


「それはそうだけど・・・」


「じゃ、そう言う事で頼むわよ?マッパーさん」


「えっ?私?」


「だって地図を持ってるのエリザでしょ?しかも私物の(笑)」


「そうでした。はい私がマッパーです。地図を読める女です」


【収納】から買ってから1度も開いてない大きな1枚の白地図を取り出し、王都とその南側を表面にして小さく折り畳む。


「今、この辺でしょ?それでもうすぐ緩い右カーブがあるから・・・」


「エリザ、白地図にログアウトポイントは書いて無いと思うよ?」


サンドラのツッコミが入る。


「いや、それぐらい分かるから。ありそうな場所を予想してたの」


とりあえず口からデマカセを言い返しておく。

そんなやり取りをしながら歩いていると向こうから街道を歩いてくる6人パーティーの人達が居る事に気付く。


「すいませーん!!」


私が声をかける。


「はい?」


魔法使い風の女の人が立ち止まって答えてくれる。


「すいません突然。この先にログアウトポイントってどこら辺にあるか分かりますか?」


「あぁ、ログアウトポイントね。それならこの先の丘が一番高く成った所から左の草原に入って前に見える森の方に行けばありますよ」


「詳しくありがとうございます」


「じゃ、頑張ってね」


御礼を言って別れる。


「よしログアウトポイントの情報ゲット!!」


そのやり取りを黙って見ていたヒルデが声をかけてくる。


「エリザ、聞いちゃったら掲示板で調べなかった意味が無くなると思わない?」


「ヒルデ、エリザは思い付きで動くからねぇ。小さな事は気にしないから。私には真似できないわ」


サンドラ、それ悪口に聞こえるから。

道を聞いただけでそこまで言わなくても良いと思う。


言われた通りの道を進むと、魔物にも遭遇せず日が沈みかけた頃に無事にログアウトポイントに到着した。


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