お茶会?
「長杖は両手杖だから他の武器を持てないんだよな・・・いっそソロの時は盾と片手武器で魔法戦士みたいな感じにしようかな・・・」
私の使ってる両手持ちの長杖の他に、片手で使える短杖ってスキルもある。
短杖は30センチぐらいのオーケストラの指揮棒みたいな杖。
個人的には好みでは無いんだけど魔法の威力が上がる長杖に対して、短杖は魔法の待機時間が短縮される効果があるみたい。
他にも魔物身体の一部を消費して魔法を使う【触媒】スキル、【水晶玉】や【魔術書】なんて魔法スキルがあるけどこれもソロには向かないと思う。
「足を止めて戦うなら、やっぱり盾かな・・・」
スキル習得画面の盾の欄を見ると【小盾】【大盾】【方盾】と3種ある。
【小盾】はヒルデが持ってる様な攻撃を受け止めるより逸らす事が目的の小さな丸い盾。
【大盾】はサンドラが持ってる縦長の五角形の盾みたいに受け止める事も逸らす事も出来る盾。
この2つは手で持っても、ヒルデやサンドラがしてるように腕に括り付けて使う事も出来る。
【方盾】は全身が隠れるほど大きな長方形の盾で、手に持って使い攻撃を受け止める事を主にする盾。数人で盾を並べて壁の様にして使う事も出来る。
「【方盾】は強力そうだけどソロには向かないだろうな・・・かといってヒルデやサンドラと盾が被るのも何か負けた気がするな・・・」
1人呟きながら路地を歩いていく。
盾と短杖をそれぞれの手に持って戦うのがベストなんだろうけど、その姿を想像して格好悪いなと思う。
それに杖を使わなくても、ちょっとした補正が利かなくなるだけで魔法は使う事が出来る。
剣スキルの欄を見ると【片手剣】【両手剣】【刺突剣】【短剣】と4種類のスキルがある。
槍は片手でも扱える【短槍】、両手で扱う【長槍】の他に【騎乗槍】【投げ槍】なんてスキルもある。
色物だと日本でも良く見る草刈り鎌を使う【片手鎌】、死神が持ってるような西洋の鎌を使う【両手鎌】、鎌を投げ付ける【投げ鎌】なんてのもある。
どこの農民だよ?とツッコミを入れたい。
そんな事を考えてると考えがまとまらない内に目的地に付いてしまった。
「こんにちわ。やってますか?」
[日陰屋]の戸を開けて入る。
いつ来てもここは客が居ない。
「はい。いらっしゃい。あぁ、お嬢ちゃんか。今日は1人?」
やる気があるのか無いのか分からない店主が迎えてくれる。
と言うか顔を覚えられてた。さすが商売人。
他に来店した客が居ないだけかも知れないけど。
「実は数日の間1人で狩りをする事になりまして。でも長杖のままソロ狩りは実力的に厳しいので、何か武器を持ち替えれたらと思って」
「ほう。それで何に持ち替えるんだい?」
「それが・・・考えながらここに来たんだけど、考えがまとまる前にここに着いちゃって。何かお勧めの武器はありますか?」
思い切って店主さんに聞いてみる。
「何かお勧めって言われてもなぁ・・・自分の好きなの選べって話だしな・・・」
そう言いながら飲み物を用意してくれ、机と椅子がある店の隅に案内される。
促されるまま椅子に座ると机を挟んで向かいに店主が座る。
あれ?これは長くなるやつ?
「今使ってるのは長杖だろ?なら俺のお勧めは短杖と棍棒のセットかな。短杖と小盾のセットでも良いが・・・うーん、俺ならやっぱり棍棒を勧めるかな」
店主が顎に手を当て考えながら話す。
「こ、棍棒ですか?魔法使いなのに?」
私が聞き返す。
さすがに棍棒って発想は無かった。
ならまだ片手で扱える短槍とかの方が良い気がする。
「んっ?あぁ、棍棒と言うとあれだがメイスの事だぞ?」
そう言って立ち上がり店の棚からメイスを見せてくれる。
金属製の棒の先が少し太く大きくなってる打撃武器。
RPGゲームでは僧侶とかが持ってるイメージのあるあれ。
「片手杖で魔法を使って遠距離から攻撃しながら、魔物が近付いてきたらメイスでぶん殴る。ベストな組み合わせだと思うぞ?盾で受け流すよりダメージを与えた方が効率的だろ?倒される前に倒せだ」
言いたい事は分かる。
分かるけど・・・。
「攻撃するなら片手剣や短槍でも良いんじゃないんですか?」
私が更に質問する。
「まぁ、個人の好みだからそれでも良いんだがな、杖と併用するなら同系統の棍棒の方が相性が良いんだ」
ん?どう言う事?
同系統?相性?
「えっと・・・」
「あぁ、同系統ってのは分かるか?剣で言えば【片手剣】【両手剣】【刺突剣】【短剣】が同系統武器って事になる」
「あ・・・何となくそれは分かります」
「で、杖系統だと【長杖】【短杖】【棍棒】【棍】が同系統武器って事になってる」
「棍棒と棍ですか?それは何が違うんですか?両方とも棒ですよね?」
「あぁ、そこは簡単だ。棍棒は片手武器で棍は両手武器だ」
そう言って今度は棍を店の棚から取り出し見せてくれる。
中国の拳法映画でたまに見る細く長い棒。
棍棒より攻撃力は無さそう。
刃の付いてない槍だよねこれ。
「短杖と棍棒のセットが嫌なら、棍を使うのも良いんじゃないか?魔法に補正はかからなくなるが棍は突く、叩く、払う、受けると何でも出来る万能武器だ。ま、剣や槍と比べたら攻撃力は低いが汎用性に秀でてる」
「汎用性ですか・・・。それでそれはお幾らですか?」
「んっ?初心者用なら短杖も棍棒も棍もどれも1つ10000マニだぞ?」
「ですよね・・・」
うーん?どうしよう?店主が出してくれた飲み物を飲みながら考える。渋いお茶だな・・・。
短杖と棍棒か小盾なら20000マニかかって、スキルも2つ取る必要がある。
20000マニも使ったら今夜の宿に泊まったらほぼ一文無しになる。
棍なら10000マニでスキルも1つで済む。
となると答えは決まってる。
「じゃ、棍の方を買います」
「棍にするのかい?物好きだな・・・」
店主は呆れたように呟く。
「いや、金銭的な問題で2つ買うのは厳しいかなと思いまして」
「そうかい?短杖、棍棒、棍の3つを1度に買うなら今日だけのセット販売割引で25000マニでいいぞ?」
「破産しますって。ツケで良いなら買いますよ?」
「来店数回の客にツケで売るわけないだろ?ニコニコ現金払いだ」
「ん・・・それじゃ更に割引して20000マニなら何とか買いますよ?」
「1個無料にしろって?それじゃ赤字になっちまう。こっちが破産だ」
まぁノリで値引き交渉したけど、それで良いって言われても金銭的に困るから買えないんだけどね。
「じゃあ、棍だけでお願いします。これで何とかソロ狩り出来るようになれば良いんですが」
「まぁ、棍なら魔物の攻撃を受け止める、逸らす、こちらから攻撃すると何でも出来るから嬢ちゃんの腕次第だな」
お金を渡して初心者用の棍を受け取る。
木なのか金属なのか材質が分からないけど細長い八角形の棒だ。長さは私の身長より少し長いぐらいだから170cmぐらいかな?
「あれ?これって身長に対して棍の長さって合ってます?」
少し長い気がしたので疑問に思った事は聞いてみる。
「おう。そこは心配するな。これでも武器屋の端くれだ。嬢ちゃんに合うサイズの棍だよそれは」
御礼を言って店をでる。
その足で宿に戻り早めの夕食を食べ、部屋に入りスキルリストから【棍】スキルを取る。
う~ん。
勢いで棍を買い、棍スキルを取ってしまった。
何やってるんだろ?私。
【棍】スキルのLv.1で使える技は『受け流し』だった。
うーん、防御スキルかな?
問題はどのスキルを外して棍スキルを装備するか。
ログアウトして、昼ご飯を食べながら考えるか。




