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私達の目の前には森が広がってた。


私達はあの後、数軒のお弁当屋さんを巡り数日分の食料品を買い込んだ。

残金の問題からポーション類は買わなかった。前に買ったHPポーションとMPポーションが丸々残ってるし。

回復は休憩とヒルデの回復魔法が頼り。

原っぱでは、ダイコンやクラゲや人形なんかを順調に狩りながら森の入口まで順調に進む事が出来た。


「さぁ、入るよ!!気合い入れてね!!」


森の入口で昼食をとった私たちは、ノリノリのヒルデを先頭に森に足を踏み入れる。

森の中は日の光が入りにくく少し暗いが下草は少な目で、膝下や腰までの草が茂っていた原っぱより歩きやすい感じがする。


「ねぇ、私たち何処に向かってるの?」


「・・・」


「ねぇ?ちょっと、ヒルデ?」


あ、コイツ何も考えてなかったな・・・。


「それはあれでしょ?ヒルデの事だから『知らない場所を探索するのが冒険だ』とか考えてたんしょ?」


「ねぇ、森は闇雲に歩くと遭難すると思うの」


「でもそれが冒険ってものでしょう?未知の土地を一歩一歩と調べ歩くのが」


ヒルデがここだとばかりに反論してくる。


「街で方位磁石か何か探して買って来れば良かったね」


「あれ?ヒルデもエリザも知らないの?森では切株の年輪の間隔を見れば方角がだいたい分かるんだよ?」


サンドラが自信満々にウンチクを語る。


「ねぇ、それって現実での話だよね?このゲームの中でも通用するの?」


「それ以前に切株が無いし」


「あ、ヒルデ。そこに斧を持った人がいるよ?切株が無いなら作って貰えば良いじゃない」


私はサンドラを見る。


「えっ、私が木を切り倒すの?片手斧では無理があるでしょ?」


「諦めちゃダメ。やる前から諦めてたら何も出来ないよ(笑)」


「あのね?大人に成るって事は出来る事と出来ない事をやる前に判断出来るようになるって事だからね?」


「はいはい。と言う訳で適当に散策して魔物を狩るよ」


「どう言う訳よ?一応目的はログアウトポイント探しね。そうしないと寝ずに魔物狩りだからね?」


森を更に歩くと魔物を発見した。


「あれは歩く切株ね。2匹いるわ。原っぱと森と魔物は共通なの?」


「切株あったよ!!これで方角が」


「分からないよ!!」


「いいから先制攻撃。エリザ、魔法撃っちゃって!!」


「了解」


いつも通り各属性魔法を乱射する。

隣でサンドラが手斧を投げ付ける。

魔法と投げ斧の先制攻撃で1匹が光となって消える。


「気付かれたよ!!ヒルデ、魔法で迎撃して!!」


「ライトスピア!!」

「ダークスピア!!」


ヒルデの魔法が命中するがまだ倒すまでには至らない。


「任せて!!」


サンドラが片手斧を構え歩く切株に突撃する。


「『振り下ろし!!』」


片手斧スキルが見事に決まり切株が光となって消える。


「戦闘もだいたい成れてきたね」


「ちゃんと声掛けすれば連携もそれなりに出来るしねぇ」


「このまま狩り続けるよ!!一気にスキルのレベル上げしよう」


「ログアウトポイントもちゃんと探さないと」


森の中を適当に、いやヒルデの勘に従って進んで行くと他のプレーヤー達が戦っている場面に出くわした。

土で出来た上半身だけのゴーレムのような魔物が地面から生えてる。大きさは家庭用の扇風機ぐらい?それが4匹。

魔物への横殴りはマナー違反らしいので私たちは別方向に歩く。


「初めて見る魔物だったね」


「動きもあんまり速くなかったし、私たちでも何とか出来そう」


「攻撃の1発1発が強いタイプかな?それとも硬くて耐久力があるタイプかな?」


「しかし・・・森は結構、混んでるね」


森を歩いてると他のプレーヤー集団を結構見かける。

そうすると当然魔物の取り合いが起こる訳で・・・。


「もう少し奥に進むか空いてる場所を探さないと狩りの効率が落ちるかも」


私たちは森に入って30分ぐらい経つけどまだ1度しか魔物と戦闘が出来てない。


「ねぇ、とりあえず近くにプレーヤーがいるなら、ログアウトポイントが何処にあるか聞いてみる?」


「そうね。それが良いかも。エリザ任せた」


「えっ?私なの?」


「言いだしっぺがやるのは当然でしょ?」


ていよく仕事を押し付けられた。

軽く人見知り気味なんだけどなぁ・・・私。

と言う訳で魔物と話し掛けられそうなプレーヤーを探しながら森を更に奥へと歩く。


「きゃ!?」


突然、ヒルデに上空から何かが襲い掛かった。

ヒルデはそれを何とか身体から剥がし地面に叩き付ける。

他にも空から降って来てる。


「なにこれ?キノコ?」


それからキノコが傘を落下傘代わりに降ってきてる。数は5、いや6匹。


「はい!!戦闘準備!!私が何匹が引き付けるからサンドラとエリザで1匹づつ狩っていって!!」


即座にヒルデが指示を出す。

ここで作戦会議をしてる暇はない。

先に言った者の作戦に従う。


「「了解」」


サンドラが盾を構えてキノコに突っ込むのを見ながら私は横に回り込むように走る。

魔法の射線を確保するといつも通りサンドラから少し離れたキノコに魔法を連射する。


「ファイアボール!!」

「ウォーターボール!!」

「ソイルボール!!」

「ウインドボール!!」


最初の3発が命中するとそのキノコは光となって消え、4発目は別のキノコに命中する。


ボフッ。

そんな音を立てて4発目の魔法、ウインドボールが当たったキノコが何か煙のようなモノを撒き散らす。


「ちょっと!!エリザ!!何をやったの!!」


「何って、魔法を当てただけだよ!!」


「あの煙は何!?エリザ、ちょっとで良いから当たってきて!!」


「無理!!サンドラ少し下がって!!」


サンドラが下がるとサンドラが対応してたキノコに私が魔法を撃ち込む。サンドラがだいぶ削ってたようでキノコは光となって消える。


「ナイス!!エリザ!!」


その隙にサンドラが手斧を煙を出してるキノコに投げ付ける。

手斧を受けたキノコは光となって消える。


「サンドラ。後1匹は任せた!!私はヒルデのフォローに行くから」


「分かった」


私はヒルデの方に向かいヒルデに声をかける。


「ヒルデ!!」


「エリザ!!後のやつをお願い!!」


「了解!!」


私が後方のキノコに魔法を連射しする。


「ファイアボール!!」

「ウインドボール!!」

「ソイルボール!!」


3発が綺麗に命中してキノコは光になって消える。


「強撃!!」


ヒルデが対峙してたキノコを倒すと、サンドラもキノコにトドメを刺した所だった。


「ふぅ、何とかなるもんだね」


「攻撃が体当たりと抱き付きみたいなのしか無かったからねぇ。あまりダメージを受けなかった」


「それよりエリザ。あんた何したの?あの煙は」


「分からないって。魔法を撃ち込んで倒せなかったらボフッって煙が」


「これじゃない?アイテムドロップ見てみて。胞子ってのが手に入ったよ?」


「胞子?」


「つまりあの煙を浴びると毒とか麻痺とか幻覚とか常態異常になるパターン?」


「あぁ。空から降ってきて、胞子を撒かれて大混乱になるパターンね?」


「空じゃなくて木の上からだと思うよ?」


「何で私が攻撃した時だけ煙じゃなくて胞子を出したの?2人も攻撃してたよね?」


「確率で撒くのか、魔法を受けたら撒くのか?」


「えぇ・・・対魔法使い用キノコって事?止めてよそう言うの・・・」


「スキルを魔法に極振りするから、こう言う時に困るのよ?」


「えぇ、でも魔法にスキルを極振りしてるからステータス補正で魔法が強化されてるんだよ?魔法連射で魔物を手早く狩れるんだから」


「その分、相性の悪い敵が出た時に困るんじゃない」


「そんな時は物理攻撃系のスキルに極振りしてるサンドラの出番じゃないの」


「えぇ、私なの?ヒルデでも良いじゃない?」


私たちは和気あいあいと森の奥へと足を進めた。

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