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初ナンパ体験

沈黙が流れる。

お互いが目と目で合図を送る。

うん。ヒルデとサンドラが何言わんとしてるか分からない。


状況を整理しよう。

冒険者ギルドの休憩室みたいなところで今後の話をしてたらいきなり声を掛けられた。・・・以上。


「あ、あの・・・私はトウユウと言います。こっちはリア友のゼンゾウとヌー。ちょっとお話いいですか?」


トウユウって人は黒髪刈り上げで、背中に大きな剣を背負ってる。

ゼンゾウって人は背が高く頭にバンダナを巻いてる。スキンヘッドかな。もしかしたらモヒカンかも。腰に短剣を差してる。

ヌーって人は青みがかった黒髪。男の人としては低めの身長で、身の丈より長い槍を持ってる。

リアルで声を掛けられたら通報案件だろう見た目の3人。


ヒルデは軽く状況が飲み込めず混乱してるみたい。

どうする?こう言う場合は反応したら負け?

それともちゃんと挨拶を返すのがマナーなの?


「はい。こんにちは。私はサンドラです。こっちの白いのがエリザ。こっちの黄色いのがヒルデです。どうかしましたか?」


サンドラが挨拶を返した!?

頼りになるな・・・。何も考えてないだけかも知れないけど。

とりあえず私は会釈をしとく。


「そちらは3人パーティーですか?こっちは3人なので良かったらこれから合同で狩りに行きたいなと思いまして」


ナンパか?ナンパなのか?出会い厨か?

そんな事を考えてるとまたもやサンドラが答える。


「ごめんなさい。私達は今狩りから帰ってきてこれからログアウトするところなんです」


何気に社交的なんだよなサンドラ。リアルでも愛想が良く敵を作らないタイプだし。

何も考えてないだけかも知れないけど。


「あ、そうなんですか。俺たちさっき初ログインしたばかりでこれから徹夜でFEOをやろうと思ってたんです」


トウユウって人が話してるとヌーと紹介された人も話に混ざってきた。


「3人で武器を好きに選んだら俺が長槍、トウユウが両手剣、ゼンゾウが短剣で3人で戦うのにバランス悪いかなってさ」


「それで、たまたまサンドラさん達を見かけてタンクと魔法使いっぽかったからどうかなと思って声を掛けたんだ」


なるほど。

しかし女性を壁にしようと考えてるのか。

男らしくない。いや男女平等だから良いのか?

とりあえず私もこのまま黙ってるのも感じ悪いだろうから話に混ざってみる。


「私達、夜に狩りをする道具を持ってないんですよ。なので一旦ログアウトしてまた明日やろうかなと」


とりあえず、東の門から出て原っぱで狩りをしてきた事。

歩く大根の中に走るニンジンが混ざってて苦戦したなんて事を教えた。


「それじゃ私たちはそろそろ宿屋に行ってログアウトしますか」


そう言って席を立ち去ろうとすると、トウユウに呼び止められる。


「あっ、フレンドコード交換しませんか?時間が合った時にパーティー組んで狩りでもしましょう」


「はい。良いですよ」


サンドラが即答してる。

ん・・・まぁいっか。

半分まだフリーズしてるヒルデも道連れにして3人ともフレンドコードを交換する。

これで私のフレンドコードに登録されたのはヒルデやサンドラを含めて5人。

この調子なら友達100人出来るかな?もちろん冗談だけど。


3人と別れ、宿に向かう・・・。

そう宿に泊まって、ログアウト・・・。


「あれ!?宿屋、今日の分は予約してなくない!?」


「あ!!部屋空いてるかな?」


「ヒルデ、ちょっと復活して。宿どうしよう?」


「えっ、あ・・・とりあえずここで悩んでも仕方が無いから宿に行ってみようよ?」


ヒルデの意見に従って昨日泊まった[馬耳亭]に行ってみる。


「女将さ~ん。部屋はまだ空いてますか?」


宿に入るなり聞いてみる。


「良かったね。3人部屋ならまだ空いてるよ」


良かった・・・宿難民回避。


「今から夕飯は食べられますか?あと明日の朝食もお願いしたいんですが」


「はいよ。1人5000マニね。アルコールは別料金だよ。食事は前の廊下を真っ直ぐ行った所に食堂があるからこの券を見せてね。こっちは明日の朝の分の券」


券を受け取り食堂のドアを開けると良い匂いがする。これは期待できるかも。

食堂のカウンターで券を渡し夕飯を受け取って空いてる席に座る。

夕飯は丸いパン、肉野菜炒め、ポタージュみたいなスープ。あとカップに入ったお茶みたいなの。

これで500マニなら、朝にお店で買ったコッペパンサンドと果実ジュースで600マニよりはお得かも。


夕飯を食べながら明日のログイン時間や明日の稼ぎ方を3人で話し合う。


「やっぱり森に入るしかないんじゃない?東の森で良いから入ってみようよ?」


「そうだね。デスペナでお金を失う事が無いんだから攻めて良いと思うよ」


「そうだね。とりあえず今日は赤字だったし、明日1日で1人最低6000マニは稼がないと」


「あと明日はログインする前に2人も掲示板を覗いて情報を調べて来てね。もしかしたら効率の良い狩りの仕方とか書き込まれてるかも知れないから」


「それはヒルデに任せてるから・・・」


「私もヒルデを信頼してるから」


「ダメ。面倒臭がらない。結構面白いわよ?掲示板。書いてあるのは嘘か本当か分からないけど(笑)」


ヒルデを情報収集係にするのは失敗したらしい。


「お3人さん、効率の良い狩りの仕方を探してるのかい?」


・・・また知らない人に話し掛けられた。


「えっと・・・誰?」


「おう。悪いな。俺はこの宿の料理担当のホセだ。よろしくな」


「は、はい。よろしくお願いします」


えっ?プレーヤーじゃない?

いわゆるNPC、ノンプレイヤーキャラクターと言うやつだ。

まさかそっちから話し掛けられるなんて。


「料理、とても美味しかったですよ」


サンドラが物怖じせずに会話をしてる。


「えっと効率の良い狩りの仕方を知ってるんですか?」


「直接狩りの効率がって訳じゃないが、金を儲けたいなら森で食材や薬草を採取したり木材や鉱石を集めたりすると、ただ森を歩いて魔物を探して狩るより儲けは出るぞ?ま、観察、採取、伐採、採掘なんかの才能が無いと大変だけどな」


そう言ってホセは笑う。

あぁ・・・そっち系のスキルが必要なのか。

このゲームはスキルの変更は基本的に宿屋じゃないと出来ない。

つまりそれ系のスキルをセットすると戦闘系のスキルが幾つかセットから外す事になる。

そして多分戦闘系のスキルより採取系のスキルはステータス補正が低いかもしれない。

そうなると戦闘で苦戦するようになるかもしれない。

ん・・・悩みどころだなぁ・・・。


「悩んでるみたいだな。それなら解体って才能は知ってるかい?それを持ってると魔物から多く素材を得られるようになるぜ?」


「そうなんですか?」


ヒルデが聞き返す。


「だが解体の才能を持ってる奴が留めをさす必要があるけどな」


なるほど。

それを持ってれば今日の稼ぎももしかしたら黒字になってたかも知れない。うーん。


「ま、色々と試してみな」


そう言うとホセは調理場に帰っていった。


「言うだけ行って帰っちゃったねぇ」


「NPCから情報収集するのはロープレの基本ね」


「で、どうしよう?誰か採取系のスキルを取る?」


「「・・・」」


「ねぇ・・・ちょっと」


「いゃ・・・スキルポイントも有限じゃん?初期ポイントが5ポイント残ってるけどいつポイントを獲得出来るのか判明してない今ポイントを無駄遣いするのはどうかなと」


確かにヒルデの言う事は正しいと思う。

でも、このまま赤字を重ねると数日で破産するからなぁ・・・。

自分はスキルを取らずに2人にスキルを取らせる方向に持って行きたいのは分かる。

私もそう思うしそうしたいから。


「じゃ、とりあえず保留で明日の朝に掲示板を眺めてから決めようか?」


私たちは問題を先送りし、部屋に戻ってログアウトした。



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