お役所仕事
ヒルデが掲示板から調べてきた情報を聞きつつ昼食を済ませ、午後も原っぱで魔物狩りを続けた。
原っぱに現れる魔物は、壊れた操り人形、毛玉、歩く大根、走る人参、空飛ぶクラゲの他にも、動く切株や羽の生えた毛虫も現れたが苦戦しつつも倒せた。
動く切株はファイヤーボールの魔法が良く効き、更にサンドラの斧も効果的だった。
羽の生えた毛虫は離れた空中から毛針を撃ってくる初の遠距離攻撃タイプだったけど、なぜかムキになったヒルデが張り合って長弓で撃ち落としてた。
そして日が傾くぐらいまで充分に魔物を狩り街へと帰路に付いた。
街の門をくぐり今日の成果を換金しようと冒険者ギルドに行くと他のプレーヤーでごった返していた。
「あ・・・また冒険者ギルドは混んでるねぇ」
「あのさ、少し疑問に思ったんだけど冒険者ギルドって各プレーヤーで個別に処理してないの?」
「個別に処理?」
「んと・・・何て言うの?ゲーム的に並列処理と言うか、メニューボードが現れてシャキン♪って感じで並ぶ必要が無いみたいな?」
「もしかして、インスタンス化してないの?って事?」
ヒルデが何言ってるの?コイツ?みたいな顔で聞いてくる。
そんな横文字は知らないけど、なんか悔しいから知ってるフリをする。
「そうそう。それそれ。そうとも言うかも。多くのゲームは列ぶ必要が無いシステムになってるよね?」
「そうだね。このゲームだとちゃんと列んで順番待ちしないと駄目みたいね」
「あれじゃない?ゲームでは時間が4倍になるんだから、待つ時間も楽しめみたいな?」
サンドラの言葉に妙に納得がいってしまった。
なるほど手間を楽しめと言う事か。
冒険者ギルドに列ぶ事もファンタジー体験だと。
リアルでは魔物を狩って素材を持って冒険者ギルドに列ぶ事なんてないからね。
・・・なんか気分的には野菜を集荷場に持って行って列んでる感覚と変わらないけど。
そんなこんなでやっと私達の番が回ってきた。
「次の方どうぞ」
「素材の買い取りをお願いします」
「はい。代表者の冒険者カードの提示をお願いします」
「すいません。今日が初めてで冒険者カード持ってないんですけど・・・」
「冒険者カードの新規発行ですね?あちらの9番窓口で受け付けしてますのでそちらに列び下さい」
「えっ?」
「はい。次の方どうぞ」
「えっ?えっ?」
お役所仕事かよ!!たらい回しかよ!!
心の中でそんな事を思いながらも言われた通り買い取り窓口から、新規発行窓口と書かれた9番窓口に移動してまた列の1番後ろに列ぶ。
「まさかこんな罠が」
「会員からしか買い取らないんだね。利権かな?腐敗構造かな?」
ヒルデもサンドラも思うところがあったらしくそれぞれブツブツと何か言ってる。
それでも待てば列は進む訳で、私達の番になった。
「すいません。冒険者カードの新規発行お願いします」
「はい。ではこちらの紙にキャラネームと、得意分野をお書き下さい」
「得意分野って何ですか?」
「だいたいで構いません。魔物狩りが得意とか、採取や採掘が得意とか、生産職で専門は何々ですとか。何をメインでやってるか、またはこれからやろうとしてるか申告下さい」
私達の得意分野・・・魔物狩りしかしてないからな・・・。
「ねぇ、これなんて書く?」
「ゲームでの名前でしょ?リアルの名前を書く訳ないじゃん」
「うちのお兄ちゃんが個人情報を素直に書く奴は情弱って言ってたよ?」
「あのね、サンドラ。公文書に嘘を書いたら犯罪だからね?」
「2人で何の話をしてるの?得意分野の話だよ?」
「あ・・・魔物狩りって書いたよ?それしかしてないし」
「これからも魔物狩りしてスキルレベルを上げるんでしょ?」
確かに。
と言うか私が悩んでる間に2人は既に書き終えてる。急がないと。
急いで書いて、受け付けに出す。
「はい。では登録料として1人1000マニいただきます」
お金かかるのかい!!
銀行だって初回は通帳を無料でくれるのに。
ま、ここでゴネても仕方が無いので素直に1000マニを支払う。
「はい。こちらが冒険者カードになります。Fランクからのスタートとなりますが、依頼をこなせば冒険者ランクがあがり色々な特典があります」
色々な特典って何よ?
そこを端折られては分からないじゃん・・・。
「あの、色々な特典と言うのは?」
「はい。色々と多岐にわたってますので詳しくはギルド二階の資料室でお調べ下さい。あとはその都度、受け付けにお聞き下さい」
なんだ?意地でも教えないつもりか?
手抜きか?客商売舐めてるのか?
「なるほど・・・隠し要素なのね。調べた者だけが特典を享受できると。なるほど・・・」
隣ではヒルデがまた1人でブツブツと言ってる。
「それで、魔物の素材を買い取って欲しいんですが」
「買い取りですね。あちらの1番から4番窓口にお並び下さい。因みにクエスト受諾は5番6番窓口。クエスト報告は7番8番窓口になってます」
そこは詳しく説明するんだ・・・。
って、またたらい回しかい。
改めて買い取り窓口に列んで順番が来るまで待つ。
「次の方どうぞ」
「買い取りお願いします。これ代表者の冒険者カードです」
「は、はい。確認したした。買い取り素材の提示をお願いします」
受け付けのお姉さんがそう言うと目の前にウインドウが開く。
どうやらそれを操作して売る物を指定しろと言う事らしい。
ヒルデとサンドラから売る魔物素材を受け取り、操作ウインドウに品物と個数を入力する。
「はい。よろしいですか?それでは全て合わせて7750マニになります。御確認下さい」
そう言って明細書を見せてくる。
えっと木の枝が1つ100マニで、羽が1つ50マニ。大根が150。人参が100か。
お、動く切株のドロップした薪が400マニと比較的に高額だ。
「はい。分かりました。ありがとうございます」
私たちは受け付けにお礼を言って、その場を離れて併設されてるベンチに腰掛ける。
「じゃ、報酬を分配します。総額は7750マニ。1人頭は・・・じゃ2600マニね」
「おぉ、初収入!!」
「どうする?お祝いする?御馳走食べる?(笑)」
「いやいや、赤字だから!!宿屋で4000マニ。食事で2000マニ弱かかるから1日最低1人6000マニは稼がないと赤字だから。ポーション使ったら、それ以上だよ?」
「宿屋に泊まらず馬小屋なら4000マニ節約できるから600マニのプラスだよ?」
「馬小屋に泊まるとか王道じゃん。1度は泊まってまたいな」
何を言い出してるんだ君たちは。
ゲームは楽しむ為のものじゃん。
苦痛を味わう為のものじゃないんだよ。
変な性癖でも持ってるんじゃないのか?君たちは。
「絶対に嫌・・・最悪、私は装備費用が少なかった分、懐に余裕があるから1人でても宿屋に泊まるからね」
「あ、そう言えばコイツ、私たちよりお金持ってる!?」
「エリザぁ・・・私、喉渇いちゃったなぁ・・・」
「なんで私が奢る雰囲気になってるのよ(笑)」
「よっ、御大尽!!」
ヒルデ、お前何歳だよ?そのセリフは。
「意味分からないから。とりあえずどうする?このままだと破産するよ?」
「大丈夫じゃない?今日は原っぱだったけど、明日は森まで行けばもう少し高く売れる素材が手に入るでしょ?」
「そうだねぇ。どうせ死んでも都に戻されてスキルが外れるだけだけで、お金が半分に成る訳でもアイテムロストする訳でもないみたいだし」
この2人は本当に楽観的だな・・・。
もしかしたら本当に馬小屋に泊まるのもアリだと思ってるのかも知れない。
「こんにちは。初めまして。今大丈夫?」
そんな事を考えてるといきなり知らない人から声を掛けられた。




