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湖畔の住人


フォレストキーパーの4人を先頭に湖の畔を散策しながら歩く。

私たちは探し物が何なのか知らないからその後を付いていく。


「あ、あの・・・私たちの仕事は護衛だったのでユニーククエストの事は詳しく聞いてなかったんですけど、目的の物ってどんな物なんですか?」


「どんな物なのか分かれば探すの手伝えると思うんですが・・・」


私がノッチさんに尋ね、ヒルデが補足してくれる。


「えっ!?あれ?言ってませんでしたっけ?水の力を秘めた鉱石なんですけど、湖にあるとしか情報を得てなかったので水中にあるのか、湖畔にあるのか検討が付かないんですよ」


えっ、そこ大事なとこじゃない?

もしかしたら湖に潜って湖の底から拾ってこなければならないんじゃ?

誰か【水泳】とか【潜水】とかそんな水中行動のスキルを持ってる人が居るんだろうか?


「湖の底にある・・・なんて事は無いですよね?」


私が言うか迷ってた事をサンドラが聞いてくれた。


「あ・・・それは無いはず。最終手段としては私たちでジャンケンして負けた人が泳ぎ系のスキルを取って潜りますよ」


レイレイさんがあっけらかんと話す。


・・・道中から薄々は感じてたけどフォレストキーパーの4人って割りと行き当たりばったりで行動してるな。

街中で護衛をキャッチセールスの様に探してたり、道中に時間を気にせずに採取してたり、目的の物の場所があやふやだったり。


そもそも水中だったら私たち護衛出来ないんですけど?

金属鎧を着てるサンドラは間違いなく沈むし、シエロに空中から魔法で攻撃させるか、アインとラメドの犬かきに頼るぐらいしか出来ない。

・・・さすがにその為だけにスキルポイントを消費して水泳系のスキルは取らないよ?


「あっ!!あそこじゃね?」


先頭を歩いてたキョウさんの指差す方を見ると湖に突き出した岩場があった。


「あ・・・確かに岩場の先に採掘ポイントがあるね!!」


レイレイさんが採掘ポイントを発見し、みんなでそこに近付いて行く。


「チチッ!!チチッ!!チチッ!!」


「ストップ!!みんな止まって!!何か居るよ!!」


シエロの鳴き声に反応してサンドラが声をかけた。


「やっぱり定番のボスいるの!?宝の守護者!?」


ヒルデが御約束を期待して声を上げる。

私も短杖とメイスを構えて先頭へと移動する。


「なに居るの?」


「エリザ、そこの泡の出てるあたりに魔法を撃ち込んで」


「了解。ソイルボール!!」


魔法を撃ち込むと、水飛沫が上がり水の中から大きな魔物が岩場の上に姿を現した。


「えっ!?ザリガニ?」


湖にザリガニって住んでるんだ。

池とか用水路でしか見た事なかったけど。


「赤いからアメリカザリガニね。ニホンザリガニならもっと茶色いもの」


「もしかしたらロブスターの可能性も?」


「えっ?ザリガニの事を英語でロブスターって言うんだよね?」


ヒルデとサンドラにアーヤさんまで混ざって軽口を言い合ってる。

余裕だな・・・コイツら。

ザリガニの大きさは軽トラックぐらいあるのに。


「えっ?じゃあ、ザリガニって英語じゃなく日本語なの?カタカナなのに?」


「えっ?ヒルデはザリガニって漢字で書けないの?」


巨大ザリガニが両手のハサミを持ち上げてこちらを威嚇したまま襲ってこないのを良い事に、ヒルデとサンドラ達の軽口は続いてる。


「えっと、ノッチさんどうします?」


とりあえず放置して、この後の方針をノッチさんと相談する。


「はい?どうしますとは?」


「あのザリガニと戦って倒しますか?それとも引き釣り出してその隙に採掘ポイントで採掘して逃げるとか、ザリガニをスルーして別の採掘ポイントを探すとか・・・」


私は思い付く選択肢を幾つか挙げてみる。

普段の私たちなら即戦闘なんだけど、今回の私たちは護衛なので勝手に戦闘を始められない。

それが分かってるからサンドラやヒルデも攻撃を仕掛けず軽口を言い合ってるんだろうし。多分。


「え・・・あ・・・どうしよう?」


「エリザさん達はあのザリガニに勝てますか?」


判断に迷ってるノッチさんの代わりにレイレイさんに質問される。


「さぁ、私たちはあの魔物を初めて見るので強さが分からないです。やってみないと勝てるかどうかは・・・」


「それじゃ、戦って貰っていいですか?」


レイレイさんから戦闘許可がでた。


「ヒルデ!!サンドラ!!戦うよ!!」


私はサンドラとアイン、ラメドに耐久アップ、シエロとヒルデに魔力アップなどバフをかけるとMPポーションを取り出し飲む。


「エリザ、なんで戦い始める前から1杯引っ掛けてるのよ?」


「これだけ続けて魔法を使えばMPだって半分以下に減るでしょ」


「ヒルデ、エリザ、バフが切れる前に始めるよ!!」


私、ヒルデ、シエロがザリガニに向けて一斉に魔法を放つ。

その隙にサンドラとアインとラメドが一気にザリガニに近付く。


「『振り下ろし』」


サンドラが斧鎚の鎚の部分でザリガニの頭の部分を殴り付ける。

アインとラメドが左右のハサミに嚙み付く。


「耐久ダウン!!」


私が強奪魔法でザリガニの耐久値を下げる。

魔物1匹に対して囲んでボコる構図。

順調。と言うか余裕?

と思った矢先にハサミが振り下ろされハサミに嚙み付いていたアインが岩に叩き付けられる。


「アイン!!ラメドも無理しないで牽制するだけで良いから離れて!!」


私の指示に2匹がザリガニから離れて距離を取る。

ザリガニは自由になったハサミを振り回し、さらに突き出しサンドラを攻撃する。

サンドラは大盾を前に出しハサミを受け止めるが、ハサミで大盾を挟まれ動きを止められた隙にもう一方のハサミがサンドラを襲う。


「チチッ!!」


そのハサミ目掛けてシエロが雷魔法を撃ち込み、その反動でサンドラが自由になる。


「ねぇ、このザリガニ、近付いたり正面から戦っちゃ駄目な魔物かも!!ハサミで突いたり殴ったり挟んできたり受けきれないよ!!」


今のやり取りで珍しくサンドラから泣き言が入る。


「じゃ、遠距離から魔法で削る?」


「あんた等それでも田舎の住人なの?ザリガニの弱点なんて小学生だって知ってるよ?アイン!!ラメド!!」


アインとラメドがザリガニのハサミに嚙み付いた隙に私はハサミを潜り抜けザリガニの背後に回る。

ザリガニの背に飛び乗り跨がるとザリガニの背の甲羅と尻尾の甲羅の繋ぎ目に短杖を押し当てて魔法を唱える。


「ファイアボール!!」


甲羅と甲羅の繋ぎ目の薄い所に魔法を受けたザリガニはハサミで私を攻撃しようとするが背にハサミは回らない。


「ザリガニはね、背中側にはハサミが届かないのよ!!・・・えっ!?」


私がドヤ顔で叫んだ時にザリガニは尻尾を勢い良く曲げてバックステップし、背に跨がった私ごと湖の中に飛び込んだ。

一瞬何が起こったから分からず水の中で天地が分からなくなる。

水を飲み、溺れかけ、手足をバタバタさせ藻掻いてるとお腹を押されて湖面に押し出される。


「ふぁー!!ゴフォ!!ゴフォ!!ハァハァ・・・アァ~」


服を噛まれ足の付く場所まで運ばれると、やっと息がまともに出来る様になった。


「エリザ!!大丈夫?死ぬ気!?」


「大丈夫、ありがとヒルデ。本気で溺れるとこだった。ラメドもありがとね」


私を浜まで運んでくれたラメドに御礼を言うと、アインが私が落としたメイスを咥えて湖面に顔を出した。


「アインもありがと」


アインとラメドはやれやれと言った感じで水から上がり、私に水滴が掛かる距離で身体を振るって水を飛ばす。

むぅ・・・ツンデレか?ふてぶてしいだけかな?

とりあえず私も湖面に浮いていた短杖を拾い水から出る。


「それでザリガニはどうなったの?」


「う~ん、完全に逃げられちゃったよ?エリザを紐で縛って餌にしてザリガニ釣りする?」


ザリガニを倒さなくてサンドラは少々不満そうだ。


「まさかボスが逃げるとは思わなかったよ」


「う~ん、ボスじゃなかったんじゃない?たまたまここに居ただけとか?」


「あ・・・そのパターンか・・・」


「えっと・・・お馬鹿な田舎者がザリガニを追い払ったので、フォレストキーパーの皆さん採掘どうぞ」


どう反応していいか困ってるフォレストキーパーの4人に対して、この場を取り繕う為にヒルデが4人に採掘を促した。


微妙な雰囲気。えぇ・・・私が悪いの?

ちょっと恥ずかしくなった。






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