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ゴーレム狩り

街道から離れ荒野の中へと入って行く。

荒野は森と違って視界を遮る物がないかと思うとそうでもない。

起伏があり丘を登り見下ろすと丘の日陰を利用して他のパーティが休憩してたりする。


「ねぇ、プレーヤー多くない?」


「そりゃ人気の狩場だもの混むのは当たり前でしょ?」


ヒルデがサラッと答える。


「えっ?ヒルデは混んでるの知ってたの?」


「そりゃ掲示板で儲かると話題の狩場だよ?なぜエリザが独占出来ると考えてたのかその方が不思議だわ」


むぅ・・・ヒルデの発言が正論過ぎて何も反論出来ない。


「とりあえずは徘徊してゴーレム探すしかないんじゃない?も少し村の方に近付けば弱いプレーヤーは居なくなるでしょう?」


「ねぇ、サンドラ。何気に傲慢な発言をしてるけど私たちも強くないからね?南の村寄りのフィールドで全滅してるんだからね?」


一応、サンドラに釘を刺す。


「あれは事故みたいなものでしょう?村まではちゃんと到着出来たんだからね?」


「もう、ここでだって事故が起こるかも知れないでしょ?注意1秒、即、死に戻りよ?」


「ちょっとそこのお馬鹿2人、村の方まで行ったら出現する魔物が変わるんだからアイアンゴーレム狩り出来ないでしょ?何トンチンカンな言い争いしてるのよ?」


あれ?今日のヒルデは随分とまともだ。

中の人が別人なのかしら?

そんな事を考えながらフィールドを徘徊してると少し離れた場所に大きなアイアンゴーレムを発見した。


「いたよ!!」


私がメイスを構えて向かおうとするとゴーレムに弓矢が当たるのが見えた。


「あっ、先に取られた!!」


魔物はファーストヒットを当てたプレーヤーとそのパーティの物と言う暗黙のマナーがあり、それを無視して攻撃すると『横殴り』と呼ばれるマナー違反を指摘される。

あくまでもゲーム的なルールではなく、プレーヤー間のマナーなので無視して攻撃する事は出来るが、それをやると掲示板とかで名前やスクリーンショットを晒され叩かれる可能性がある。


「もうヒルデ、先に長弓で一当てしてよ・・・私まだ精霊魔法のレベルが低くて長距離攻撃のショットの魔法使えないんだから」


ショットは火、水、風、土魔法のレベル15で覚える魔法。

その4つを統合した精霊魔法でもレベル15で覚えられるはず。

ただ精霊魔法は他の魔法スキルよりレベルが上がりにくい気がする。

統合したスキルは元スキルよりレベルが上がりにくい仕様なのかな?


「もうここからだと長弓でもあそこまでは長弓の技を使っても届かないわよ?あのパーティの方が近くに居たんだからしょうがないわよ」


「ん・・・あのパーティが全滅すれば私たちが狩っても問題ないよねぇ?」


「サンドラ!!そう言う事は思っても口にしない。他の誰かに聞かれたら感じ悪いでしょ!!」


僅かな期待をしながらアイアンゴーレムとそのパーティの戦闘を見てたが、時間は掛かったけど危なげ無く討伐成功してた。

・・・ちょっと時間を無駄にした。


更に荒野を徘徊するが他のプレーヤーの戦闘は見かけるが手付かずのゴーレムは見付からない。

たまにフリーの魔物が居てもゴーレムじゃなくガントレットの方だった。


「ねぇ、ここ明らかに出現するゴーレムの数よりプレーヤーの数の方が多くない?」


「まぁ、今が1番プレーヤーの多い4Qってのもあるんじゃない?夜は学生や社会人の人もログインするから自然とプレーヤーは多くなるもの」


「平日昼間にログイン出来るのは廃人ぐらいだものねぇ」


「そんな事はないよ?夜勤や平日休みの社会人の人も居るし、子供を学校に送り出した主婦のプレーヤーも居るだろうし」


まぁ、人それぞれだよね。

学校をサボった学生とか、暇な大学生とかも昼間からログインしてそうだし。


「それじゃ諦めて別の場所に行って他の魔物を狩る?アイアンゴーレム1匹探して狩る時間で3~4回ぐらい戦闘が出来そうだよ?」


「えぇ・・・でもここまで来て1回もアイアンゴーレムと戦わずに移動するのもなんか損した気分じゃない?」


サンドラの提案をヒルデが反対する。

確かにここまで来て1回も戦わないのはなんかモヤモヤする。

お腹を空かせて焼肉屋さんに行ったら混んでて店に入れず、待つのもあれだからとファミレスに行くみたいなモヤモヤ感がある。


「うん。私も1回ぐらいはアイアンゴーレム狩ってみたい」


私がヒルデに賛同して2対1になり、サンドラが折れる事になった。


「ねぇヒルデ。あなた弓を構えながら歩いてよ?見付けた瞬間に矢を放てるように」


「それよりサンドラがシエロを呼び出して、少し先を飛ばせば良いんだよ?そして見付けたらシエロが魔法でひと当てすれば良いんだから」


「えぇ、それじゃ私の獲得経験値がシエロと半分こに成るじゃない」


「サンドラは可愛い可愛いシエロに経験値をやりたくないんだね?サンドラってそう言うとこあるよね・・・」


「酷い!!その言い掛かり。エリザもアインとラメドを呼び出して索敵させたら良いじゃないの」


「いや、私はアインとラメドに経験値やりたくないから。従魔との上下関係をハッキリさせるのは躾だからね?主人と対等だと勘違いしてる犬とか飼い主失格だよ?」


「ほら、そこの畜生道に落ちた餓鬼2人。醜い争いしてないでちゃんとゴーレム探してよ?」


「ヒルデが最初に話題を振った癖にその言い草」


「そうだよ。ペットを狩ったら畜生道に落ちる訳じゃないからね?お坊さんに説教されるよ?」


「ほら居たよ!!」


そう言ってヒルデ長弓を放つ。

湧いたばっかりなのか地面からゆっくり身体を起こす途中のアイアンゴーレムに見事に命中した。

武器を持ってないタイプのアイアンゴーレムだ。


「よし!!あれは私たちのアイアンゴーレムだよ!!」


ヒルデの宣言と同時に私とサンドラはアイアンゴーレムの元へと走り出す。


「ファイアボール!!」


私が放った魔法が当たりアイアンゴーレムが怯んだ隙に両手斧をアイアンゴーレムの肩口に振り下ろす。

しかし両手斧がアイアンゴーレムにブツかると金属がブツかる音がして弾かれる。

そして体勢を崩したサンドラに向かってアイアンゴーレムの腕が振り回されサンドラが横に吹き飛ばされる。


「サンドラ!!」


私はアイアンゴーレムに【強奪魔法】の耐久力ダウンを唱える。

一応、魔法は成功しアイアンゴーレムの耐久力は下がった見たいだけどどれくらい下がったか分からない。


「もうサンドラは。相手は鉄なんだから刃物は効果薄いよ!!」


ヒルデからサンドラに向けて回復魔法が飛ぶ。

サンドラは起き上がり持ってる両手斧をクルリと裏返し斧ではなく鎚の方をアイアンゴーレムに向けて構える。


「もう。最初は色々と試したくなるのはしょうがないでしょう。『アイアンハンマー』」


サンドラは【魔力操作】で鉄魔法を武器に纏わせてアイアンゴーレムを殴り付ける。

今度は弾き返される事は無く、アイアンゴーレムの胸が鎚の形に少し陥没する。


「ホーリーショック!!」

「イービルショック!!」


続けてヒルデが知らない魔法を放ち、その白と黒の波動がゴーレムに命中し一瞬動きが止まる。

そこに私が風魔法を纏わせたメイスをゴーレムの足の膝の辺りに振り下ろす。

メイスは跳ね返らずしっかり打撃をゴーレムに伝える。

どうやら魔法を纏わせた打撃は弾かれないようだ。


「エリザ!!サンドラにバフ掛けて!!」


ヒルデの指示でバフを掛けてないのを思い出す。


「どっち!?力?魔力?」


「耐久力!!」


ヒルデの指示に従い【授与魔法】を唱えてサンドラの耐久力を上げる。

アイアンゴーレムの振り回した腕がサンドラの構えた大盾に当たるが何とかサンドラが受け止め、そこにヒルデの放った魔法が命中する。

それを見て私はヒルデに【授与魔法】の魔力アップをかける。

更にアイアンゴーレムに向かってウォーターボールを放つ。

よし、充分に戦える。


それから十数分後にアイアンゴーレムは光となって消えた。


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