スキル選び
「エリザ、どうしたの?なんかやらかした顔してるけど?」
ヒルデが私の顔を見て聞いてくる。
「あ、本当。エリザなんか残念な顔してるよ?」
サンドラが茶化してくる。
「誰が残念な顔よ?アバターなんだから残念なんて事はないから。ってそうじゃなくて王都でやろうとしてた事を今、思い出したの」
「えっ、王都に何か用事あったっけ?」
「あぁ2人には無いよ?私だけ。魔法のスキル統合して【精霊魔法】にして魔法を連射出来なくなったでしょ?それを魔法ギルドのチーノ婆ちゃんに相談してみようと話してたじゃない?」
「あぁ!!・・・そうだっけ?」
ヒルデが思い出せない顔をしてる。
「そうなの。南の街の訓練場でナバロさんと話してたのよ。2人は訓練場で疲れてて覚えて無いかも知れないけど」
あれ?あの時は2人居なかったかも。
「それじゃ乗合馬車で戻る?」
「んっ?いいよまた今度で。それよりも今は【魔力up】【詠唱短縮】がレベル30に成ったからそれに代わるスキルをセットしたいんだけど私、控えのスキルが【騎乗】しか無いんだよね」
「それ、普通にスキルを進化させたら良いんじゃないの?」
サンドラが指摘してくる。
「もうこれだから魔法初心者は。【魔力up】は【MPup】と【MP回復up】があると【魔法才能】ってスキルに統合できるって掲示板に書いてあったの」
「お、エリザにしては珍しく掲示板を覗いてるんだ?偉いよエリザ。うん偉い」
・・・なんでヒルデは上から目線で私を褒めてくるんだろう?
「それで私は既に【MPup】と【MP回復up】を取ってるのよ?つまりこれは統合しろって事でしょ?」
「それで代わりになるスキル、何を取るって話なのね?」
「そう。【魔力操作】も何か他のスキルと統合出来る可能性もあるからチーノ婆ちゃんに相談してから進化させるか決めたいし、別の魔法系のスキルを取るか、メイスや棍で戦うのに有利になる補助スキルを取るか迷って」
「・・・それ、チーノお婆ちゃんに会わずにここに来たの致命的な失敗の気がするんだけどやっぱり戻る?急がば回れって言葉もあるよ?」
サンドラがちょっと本気目で心配してくる。
「ここまで来て流石にそれも面倒くさい気がするんだよ」
「それなら魔法系と補助系の間のスキルを取るって事でどう?」
ヒルデが自信満々に提案してくる。
「なにそれ?魔法系と補助系の間のスキルって?」
「私が取るかどうか悩んだのよ?それにゲームによって強力だったり気休め程度だったり効果の差が激しいから色々と悩んでねぇ・・・それに英雄っぽく無いから泣く泣く取らなかったけど」
「いいから、それはなんなのよ?前置きが長いから」
「エリザ、ヒルデはわざと引っ張ってニヤニヤしてるのよ?」
呆れた感じでサンドラがヒルデを見る。
ヒルデは私とサンドラのやりとりを見てニヤニヤしてる。
むぅ、ちょっと悔しい。
「エリザ、それはバフ、デバフよ?強化と弱体化の補助魔法」
「あ・・・確かにゲームによって有効かどうか代わるねデフ、デバフは」
「それに英雄が使いそうにないでしょ?英雄はどちらかと言うと『お前達の力を俺に貸してくれ!!』ってみんなからパワーを貰う側じゃん?『俺の力を皆にやるから、お前ら魔王を倒してこい!!』って英雄らしくないでしょ?」
ヒルデが真面目な顔で語る。
「ねぇヒルデ、それ言い方の差じゃないの?自己強化も出来るんだから」
それを冷静に突っ込むサンドラ。
でも確かに英雄とか勇者って先頭をきって突撃するイメージある。
後方で全軍突撃と号令を出すイメージは無い。
「だからね、私より魔法使いのエリザに合うと思うのよね。アインとラメドを強化して戦わせるのにも使えるし」
「・・・それで、本心は?」
「・・・従者の魔法使いが英雄に強化魔法を使って、英雄がボスにトドメを指すシチュエーションっていいよね?」
「ヒルデってそう言うところがあるよねぇ・・・」
「ちょっ!!今のはサンドラが振ったんでしょ?私はフリに応えただけなのに!!真面目に提案しただけなのに!!」
ヒルデとサンドラがじゃれ合ってる脇で私はメニュー画面を開き、獲得できるスキル一覧を見る。
「それでヒルデ、デフとデバフのスキルってどれ?」
「あぁ、【授与魔法】と【強奪魔法】だよ?バフが【授与魔法】でデバフが【強奪魔法】ね。それぞれ微妙に違う同じような魔法」
「・・・ん?どう言う事?」
ヒルデの言ってる事がイマイチ理解できない。
「えっと、【授与魔法】は敵でも味方でも与える魔法なの。例えば味方に耐久力や速さを与えたり、逆に敵に重さとか行動阻害を与えたり、【強奪魔法】はそのまま奪うのよ?敵から耐久力や速さを奪ったり、味方の装備の重さを奪って速く動けるようにしたり」
ん・・・なんとなく分かるような分からないような。
「それならどっちか1つ取るだけで良いの?」
「えっ?エリザ。今の話だと二重に効果を掛けられるって事じゃないの?【強奪魔法】で素早さを奪って、【授与魔法】で重さを与えれば更に動きは遅くみたいに」
「それに掲示板情報だと【授与魔法】と【強奪魔法】は統一できて【与奪魔法】に出来るんだって。それなら2つ覚えた方がお得感あるんじゃない?」
なるほど・・・スキル統合出来るなら両方取った方がお得かな?
・・・ん?あれ?
「ねぇ、ヒルデ。統合したら連射が出来なくなるんだからお得感が下がるんじゃないの?」
そもそもそれで私は魔法を連射出来なくなって困ってるのに。
「・・・あっ。い、いやそうじゃないって・・・デフとデバフは効果時間があるから、連射しなくても時差で重ねがけすれば良いんだから」
こら、ヒルデ。
今、『あっ』って言ったの聞こえたぞ?今適当に言い訳を考えながら話してるでしょ?
でも、まあ言ってる事は正しいか。デフデバフは別に連射する必要は無いんだから。
「ん・・・じゃせっかくだから取ってみようか。FEOでもデフデバフは効果あるんだよね?気休め程度の効果しか無かったら怒るよ?」
「うん。それは大丈夫。デフデバフ無双って訳じゃないけどそれなりには効果はあるって話だから。ただ・・・」
「ただ?」
「6人フルパーティじゃなく、3人パーティの私たちだと効果は減少するのかなって思うけど」
あぁ、なるほど。
6人の力をアップさせるのと、3人の力をアップさせるのでは恩恵の大きさが変わるか。
「まぁ、そこは許容出来る範囲だよ。アインとラメドとシエロを入れれば6人フルパーティーになるんだし」
メニュー画面を操作して【授与魔法】と【強奪魔法】を獲得する。
「えっ、エリザもう取ったの?もう少しゴネるかと思ったのに」
サンドラが私の行動に驚く。
「ん・・・一応魔法だから抵抗は少なかったからね。それに他に取りたいスキルも思い浮かばなかったし、アインとラメドを強化出来るから私に合ってるのかなと。それに今は魔法アタッカーじゃなくジャマーみたいな立ち回りしてるし」
「エリザが一番スキル編成で迷走してるよねぇ・・・」
サンドラがしみじみと呟く。
「そんな事は無いよ?ヒルデなんか最初から迷走してるだけだし、サンドラだって重戦士って言ってたのに魔法4つも取ってるじゃない?」
「ちょっと、私は英雄ムーブで全くブレてないからね?」
「私は魔力防御を上げるのに必要だったからだよ?それに誰かさんに付き合って意図せず【魔力操作】のスキルも手に入れちゃったし」
「はいはい。そう言う事にしとくから」
それから明日の予定の街の奥、第3の村側のフィールドで狩りをする事を確認し、長い雑談を終え宿屋の食堂から部屋に入りログアウトした。
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