学校散策
雪の日にあったあのこと僕には意外な接点があり再び学校で再開した
そうしてまた二人でぶらぶらするのであった
目覚ましが鳴る少し前に私は目が覚めた。
アラームをオフにしてから体を起こすと伸びをする。
ゆっくりと伸びていくにつれて体からダルさが消えていったく。
今日は十二月の二十二日。
学生の皆さんの中には明日から冬休みと言う方も多いだろうが、私は年中休みと同じなのであまり変わらない。
しかし、私も今日は学校へ行かなくてはならないのだ。
年に一回あるか無いかそう言う日だった。
僕は朝食を食べた後、家族に「行ってきます。」と言って家を出た。
外は昨日と打って変って晴天。
けれど地面には昨日のような綺麗な雪はなく踏み固められできた氷がこぶを作っているだけた。
今日は冬休み前日。
昨日、徹夜して冬休みの課題をフライングゲットで終わらせたため頭が少し痛むが、半日、学校に来れば楽しい冬休みが待っているのでまだ頑張れる。
十字路に差し掛かり僕は足を止めた。
ふと、足元にタイヤの跡が無いかを見てしまう。
しかし、他の人や車が通った事によりその後は綺麗に消えていた。
昨日話をしたあの子の名前をそう言えば聞いていなかったな。
私は着替えを手伝ってもらい、作って貰った朝食を食べ、車いすのバッテリーを取り変えてもらった。
「これで大丈夫よ。」
お母さんにそう言われ、私は「ありがとう」と返した。
昨日は熱を出していたお母さんだが今日はすっかり元気になり仕事も行くと言っていた。
けれど私はまだお母さんが心配だった。
手伝ってもらわなくては何もできない私だが熱が出た次の日くらい休めばいい物をと思ってしまう。
だからと言って口に出しても何か出来るわけではないのでその言葉は言わない。
代わりに私は笑顔で「行ってきます」と返した。
11時45分
担任によるいつもより長いロングホームルームを終え僕は目を開けた。
全校集会、学年集会、ホームルームと続いていた今日の行事をほぼ寝たまま半眼で聞けたため、ある程度ダルさが飛んで元気にはなったが後二時間は寝たい。
クラスメイトは冬休みに入り、忘年会やクリスマスなどの話をして盛り上がっていて返る気配が無いので後一時間や二時間、寝ていても大丈夫だろう。
そう思って再び寝るべく顔を伏せようとしたその寸前、僕の机の上にドンと音を立てダンボール箱が置かれた。
「おーい、副委員長。」
僕はその呼び掛けに伏せようとした頭を上げた。
そこには眠そうな目をした短い髪の前髪パッツン系女子がいた。
僕の役職の相方、このクラスの委員長、清水幸和子である。
委員長は僕を見降ろすようにして、箱を叩きながら言う。
「仕事ね。
これ、ミッちゃんかオームに渡しといて。」
「分かった…。
けど後で良い?」
僕がそう聞くと委員長は「やめといた方が良いんじゃない」と、
「オームは部活があるから残るけどミッちゃんは帰るって言ってたから。」
僕はそれを聞いて目を反らし考えた。
彼女の言うオーム。副担任の大村先生とは今は顔を合わせたくない。
大村先生はあだ名のオームの元、物理学者でオームの法則を作った人「GeorgSimonOhm」の様な仏頂面の先生で少し(いや、かなり)怖い。
そして、どうしてか大村先生は僕をマークしていて割と細かいことも指摘してくる。
たぶん今日、半眼で話を聞いていた事をぐちぐち言ってくるだろう。
もちろんあまり良い思いはしない。
対して担任のミッちゃんこと金子美智子先生は優しく、怒っても全然怖くない。
ならば少し時間を割いてでもミッちゃんの方に行って嫌な思いをせずに帰ってくるのが良いだろう。
そう結論を出し、委員長が立ち去った後、僕は思い体をゆっくりと持ち上げるのであった。
教室のある四階から三階、二階と階段を降り、別当にある職員室の前に来た。
三度ノックをして職員室に入る。
目当てのミッちゃんは彼女のデスクに座り話をしていた。
先生の前にいるのは長い黒髪で、車いすに座った見たことのある女の子。
「…先生。」
「ああ、来たのね。」
俺が後ろから来たのを察したのか先生と話していた女の子は振り返ってこっちを向いた。
そして彼女と目があった瞬間、さっきの見たことがあるは確信に変わった。
「「あ…。」」
二人でハモった。
思わぬ再開にあっけにとられ。
「えっと、私は道司小鳥です。」
「押田行秀です。」
互いに名前を知らなかった僕たちは同じ学校だったこともあり、自己紹介した。
職員室で互いに用件を済ませた後、自動販売機の前に来て話していた。
私は午後ティー、彼。押田さんはボスの無糖缶コーヒーを片手に。
「まさか同じ学校だったんですね。」
「僕もそれは驚いたよ。
ところでさ、いつもは学校にいないよね。」
「うん。
わたし、通信制でここを受けているから学校に来るのは月一回もないの。」
私は声を弾ませながら言う。
「それにしても嬉しいな。
同じ学校の友達が出来るなんて。」
私はその時、そのことで頭がいっぱいだった。
中学卒業後、母の心配をして通信制のここに来たのを境に友達が少なくなった。
学校に来ないから友達が出来ないのはもちろんのこと、中学校の友達も新しい学校に疎遠になったり県外に行ってしまったりでどんどん少なくなってしまった。
しかし今日この時、久々の接点を持った人物が出来たことがとても嬉しかった。
彼がどう思っているかもわからないが、私は嬉しさでいっぱいで友達の前提で話をしていた。
そして、ほぼほぼ初対面の彼に気づいたらたくさんの事を一人で話していた。
北海道へ行ってしまった親友の事、卒業式の時に感じたこと、初めてこの学校に来た時の事、金子先生の事。
彼はそれらを嫌な顔せずに時々相槌を打ちながら聞いてくれた。
ふと、校舎の中から楽器の音が聞こえ、私は口を閉じた。
この曲は聞きおぼえがある。
「あー、『あの花』のオープニングだ。」
「あのアニメ。
最終回泣いちゃって…。」
「うん。
良いアニメだったからね。」
私は歌を口ずさんでみると彼が口を開いた。
「ちょっと音楽部の所に行ってみる?」
「え?いいの。」
「大丈夫だと思うよ。
ついて来て。」
押田さんがそう言ってくれたので私は「うん。」と答え、切っていた電動車いすの電源を入れた。
渡り廊下から校舎に戻り、二階にある音楽教室へ。
家の学校の音楽部は部員が少なく、趣味として音楽をしている人達が集まっている。
なので、音楽部はコンクール等には出場せず、自由気ままに活動している。
音楽室の防音扉を半分ほど開け、中を見ると音楽部の部員が五人。円になって練習していた。
「よお、どうした?」
そのうちの一人、部長の島田奏斗が僕に気づき、手に持っていたトランペットを下ろして聞いてきた。
「ああ、遊びにきたんだけど、いい?」
それを聞いて彼は「オウ、良いぜ。」と言って手招きしてくる。
そう聞いて俺は扉を全開にして道司さんを音楽室内に通した。
室内に道司さんが入ると島田は眉にしわを寄せた。
「モヤシ。そいつは?
転校生か何か?」
ちなみにモヤシと言うのは彼が僕につけたあだ名。
彼曰く、僕が細くて背が高いからだそうだ。
ちなみに彼は僕からみて頭二つ分低い。
「いや、在校生だよ。
通信制の方の。」
紹介された道司さんは車いすに座ったままちょっと深めにお辞儀をして、ニコリと笑う。
「道司小鳥です。
よろしく。」
自己紹介を受けた島田はにやにやと笑いながら「よろしく」と返す。
「道司さんはどうしてここに来たの?」
「さっき、外で曲が聞こえた時に押田君が誘ってくれて。」
その後、島田は「音楽の経験は?」とか、「好きなアーティストは」などと質問をしていく。
そんな中、「アニソンが好きで」と道司さんが言った所に興味深そうに彼らの会話を聞いていたショートの女の子が「なら一曲弾きましょ。」と言ってきた。
「何か好きなアニメある?」
「うーん。」
「アニソンなら藤島経由で一通り出来るから。」
「それじゃー、エバとか?」
「有名どころですね。」とショートの女の子も言う。
それを聞いた他の音楽部員もクラリネット、フルート、トロンボーン、ギター。そしてトランペットを構える。
唯一口元が開いているショートの女の子が「123ハイ」と声をかけると四人の楽器から一斉に音を鳴らした。
四人がゆっくりと演奏する中、まだ出番が無いからかショートの女の子が「残酷な―――」と歌い始める。
さっき聞いた地声よりも低く重みのある声と共に曲が始まった。
ゆっくりとした前奏が終わると五人が速いテンポのリズムを刻みはじめる。
五人のメロディーは互いに結び付く様にして一つの曲を奏でて行った。
演奏は最後のパートに入り、曲が加速して行く。
五人の演奏はどんどん苛烈に、激しくなっていく。
そうして最後のワンフレーズをショートの女の子が歌い終え、ピタリと音がやんだ。
演奏が終わり、彼らが口を放すと僕は拍手した。
俺の拍手に島田はニヤリと笑って見せた。
「どうよ。」
「さすがだね、息ぴったりだし。」
「うん。みんな音が綺麗だし、歌も綺麗だし。
路上でやったらお金になるね。」
道司さんの言葉に、唄っていたショートカットの女の子は「それほどでも~」と言って照れた。
と、演奏が終わったのを見計らったように音楽室の防音扉が開き、外から背の低い先生が入ってきた。
あまりかかわることの無い先生だが名前は小野塚だったか、小野寺だったと思う。
僕たちはその先生に「こんにちは」と挨拶をすると彼も手を上げて返してくれた。
先生がここに来たので、そろそろ引き時かなと思い島田に「僕たちはここで」と言って道司さんと音楽室を後にした。
音楽室から出て二階のエレベーターホールへ、来た道とは違う道を使い向かっていた。
電動車いすの音をバックに二人で廊下を歩いていた。
「どうだった、家の音楽部は。」
「なんていえばいいかな、
あの五人は一つにまとまっていていいよね。
一致団結みたいな。」
「ああ、なるほど。」
「それと、歌っている時に皆が楽しそうだったよね。」
「わかるわかる。」
毎度のことなのだが、演奏中、島田は口元がにやける。
まるでおしゃべりをしている時みたいに。
と、僕が回想している時、隣にいた道司さんが足(車輪?)を止め、通り過ぎようとしていた教室を見ていた。
彼女が覗いているのは美術室。そして、中には漫画兼美術部と思われる女子たちがおしゃべりをしながら絵を描いていた。
同じクラスのであり、委員長の清水幸和子の姿もある。
「ここは?」
「漫画兼美術部だけど。」
「漫画兼美術部?」
「うん。
人が少なくて去年美術部と漫画部が合併したんだよ。」
それと同時に向こうにいた清水が僕達に気づき、「おーい、副委員長~」と手招きしてきた。
「オームに箱渡してくれた?」
「うん。ミッちゃんにだけど。」
僕は美術室に入りながらそう言う。
「そうかい。
ところでそこのは?」
そう言って清水は道司さんを指差した。
「ああ、通信制でここに在籍してる道司さん。
丁度今、学校をふらふらしていて。」
彼女はそれを聞いた後道司さんにも手招きして美術室に招き入れた。
「そーだ、副委員長。
丁度いいからモデルになってくれる?」
突拍子もないお願いに僕は首をかしげつつ理由を聞いた。
「暇だからレッサーやろうって話になったから。」
「ん~…、良いけど。」
微妙なそのお願いを一様僕は受けた。
「あなたもモデルやってくれる?」と道司さんに清水が提案したが道司さんは遠慮したので僕一人でモデルをやることになった。
「それじゃあ、その椅子に座って。」
「うん。」
「右肘を肘かけに頬杖ついて。
後足組んで。
うん。そう。」
僕は言われた通りのポーズを取った。
部員たちが僕を書き始め静寂が訪れて暇になる。
すると、道司さんとあってから忘れていた睡魔が押し寄せてきて、瞼が重くなっていった。
そしてそのまま僕は寝てしまっていた。
※※※
押田君が目を閉じてからすぐ後、私は車いすの後ろについているポケットをあさって、スケッチブックと鉛筆を出し、漫画兼美術部の部員達に混ざってレッサーを始めた。
男の人をこうマジマジと観察する機会はなかなかないので描いておかなくてはと本能的に思い、私は鉛筆を動かしていく。
※※※
気づくと僕は寝ていた。
十分と寝て頭がすっきりとしたため起きた。
起きた反動で、頬杖がずれ頭がガクンと落ちかけた。
慌てて頭を戻し、瞬きをして焦点をつける。
すると道司さんの周りに清水と漫画兼美術部の部員たちが集まっていた。
彼女達は眼を見開いて道司さんの持っているスケッチブックを除きこんでいる。
道司さんがペンを仕舞った後、彼女達は「おおー」と歓声をした。
「これが、あの籠野小鳥先生ですか。
恐れ入ります。」
そう言って本当に恐縮している清水に違和感が絶えない。
いつもは人を顎で使い倒すような人なのに…。
「あの、サインいただけますか?」
「ああ、私にも。」
「良いですよー。
でもオフレコでお願いしますね。」
「あ、はいっ!」
他の部員もそんな感じで恐縮しきっている。
さて、一体僕が寝ている合間に何が起こったのだろう。
そう思って僕は椅子から立ち上がり道司さんのスケッチブックを除きこんだ。
そこには豪華なイスに座る男性の絵。
正確には王座の様な椅子に座る僕の絵が描かれていた。
それもとても上手な絵で。
清水とかの絵もたまに見たりするがそれとは比較にならない。
清水の絵は石を掘り出して作ったように上手くても表情が死んでいるのだが道司さんの絵はまるで今にも肘から顔が落ちそうで生き生きとしていた。
「う、上手い…。」と気づかないうちに僕の口から称賛の声が出る。
「そりゃそのはずよ、副委員長。
彼女、プロの漫画家よ。」
なるほど。
さっき道司さんの事を清水が先生と呼んでいた意味が分かった。
さらなる感嘆の声が口から洩れ、道司さんは少しわざとらしく胸を張る。
「漫画家ってどんな?」
「私は講談社のARIAって言うコミック誌に連載を持っているの。
「タベアルキ」って漫画だから今度調べてみて。」
「ああ、うん。」
「所で、そればらして良かったんですか?」
ふと、清水さんの後輩がポツリとつぶやくと道司さんは「あ―…」と…
「…どうだろう…。」
つまりもしかしたらでダメなのかもしれない。
「えっと!こんな感じで悪いんだけどオフレコでお願い!
担当さんに何言われるから分かった物じゃないから!」
そうやって必死に彼女は自分の失敗をカバーするのであった。
後に聞いた話だが、この時彼女は久々のこういう空気に浮かれてしまい思わず口を滑らせてしまったのだとか。
読んでいただけたでしょうか
面白かったら幸いですが、そうでなかったらすみません。
しかし、読んでいただけるととてもうれしいのでまた見てもらえると良いなと思います




