第01話 誕生日の朝(ほぼいつもと同じ)
朝だ!
たぶん朝だ! なぜなら目が覚めたからだ。
跳ね起きて、カーテンを少し開いてみる。
まだ暗いけど、ちょっとだけ空が明るくなってきている。
天気は良さそうだ。
すごくワクワクして落ち着かない。
まだ早いけど我慢できずに、ベッドから抜け出す。
そして、素早く着替えて、部屋を静かに出た。
よし、今日は良い日になるに違いない。
なんたって今日は僕の十二歳の誕生日だからだ。
* * *
二階から静かに一階に降りる。
やっぱりいつもより早いから、お母さんはまだ起きてないみたいだ。
暗いな。ランタンの中のロウソクに魔法で火を付ける。
火が付いて、部屋が明るくなった。
僕には毎日の仕事がある。
まずは冷蔵庫の氷を取り替えることから始める。
冷蔵庫を開けて、一番上の段にある幅広の大きな金属の入れ物を取り出して振ってみる。
まだ冷たくコンコンと音がする。
昨日の夜の氷がまだだいぶ残っている感じだ。
その入れ物を台に置き、栓を外して魔法を使って氷を解かす。
いつもなら、いかに早く沸騰させるかに挑戦しているけれど、今はしない。
熱くするとパコン!と凄い音がするからだ。
あれはビックリする。だけど面白い。
なぜしないかというと、まだ、お母さんが寝ているかもしれないからだ。
解けた水を魔法で操って捨て、また魔法で入れ物の中に水を作り、思い切り凍らせて冷蔵庫に戻した。
思い切り凍らせるのは、その方が、氷が長持ちするからだ。
それから、お母さんが作った氷の方が長持ちする。
なんとかして、追い付きたいと思っている。
そして、なぜ入れ物の中を空にしてから氷を作るといった、こんな面倒なことをしているかというと、これも魔法の練習だからだ。
冷蔵庫が二つあるので二つとも取り替えた。
冷蔵庫の大きい方は食べ物用で、小さい方は薬用だ。
薬があるのは、お母さんが医者をしているからだ。
診療所と家は一緒になっている。
診療所といっても、診察室が一つあるだけの小さな診療所だ。
去年、大きな病院の、ものすごい医者だったパダさんが百二十歳でポックリいってから、お母さんは忙しくなったような感じがする。
だから、最近はお手伝いも魔法の練習も勉強も頑張っている…… つもりでいる……
お父さんはいない。別に欲しいとも思わない。
お母さんとお父さんはこの村の生まれじゃなくて冒険者だったらしい。
二人でこの村に来て、お母さんはここで僕を生んで、ここに住むことにした。
でも、お父さんは僕が生まれる前に旅に出てしまったらしい。
それに、お母さんはお父さんのことを何も言わない。
今はお母さんと二人で暮らしているけど、何の問題もないからそれでいいのだ。
次は診療所で使う消毒用のアルコールを魔法で作る。
ビンの中に入っている昨日作ったアルコールを捨てて水で流した。
それからビンの中に新しいアルコールを作る。
水より作るのに時間が掛かってしまう。
意識して早く作ってはいるけどまだまだだ。
アルコールのパーセントも重要だ。
七十パーセントから八十パーセントの間にしないといけない。
アルコール以外の残りは水だ。
消毒用はそれくらいがよく効くらしい。
作ったアルコールを手の甲に少し付けてみる。スーッとしてヒンヤリする。
パーセントは良い感じだ。
毎日作っているから分かるのだ。お母さんもチェックするから大丈夫だ。
昨日作ったアルコールでも全然使えるけど、新しく作るのはこれも僕の魔法の練習の一つだ。
さてと、次の仕事の前に大きい方をしておこう。
ランタンの火を吹き消して、トイレに行く。
トイレは座ってするやつだ。
そして、すっきりしてから、左手をお尻の近くに持って行って、魔法で水を作りながらビューっとお尻の穴にぶつけて洗うのだ。
このときの角度と強さが重要だ。
ぶつけ方が悪いとキレイに洗えなかったり、水滴が飛び散ったりしてしまうのだ。
本当はこの後、魔法で暖かい空気を作って、お尻に風のように当てて完全に乾かすのだけど、暖かい空気がなかなか思うように作れない。
空気魔法は苦手だ。空気は目に見えないので、イメージしにくいからだと思う。
とりあえず、頑張って暖かいつもりの風を当てる。
微妙だ。時間が掛かる。
ベタベタのままはイヤだしね。
小さい頃はお母さんがしてくれていたけど、今思えばかなり恥ずかしい。
ちょっと前まではお尻拭き用のタオルが置いてあった。
でも、使うと負けたような気がするから置くのをやめたのだ。




