表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/9

第9話 自立させないエイリアン 2人目の子供

エイリアンに出会いました。

それは人間の形をして人間の言葉を話していたけれど、子供を世界の中心にいるエイリアンに育て上げ、この世に解き放ちました。

実は、この親エイリアンにはもう一人子供がいました。二人目の子供もそれはそれは大事に育て、必要とされる相手が二人に増えたことで負担も増えたものの、自分が犠牲になることに喜びを感じるエイリアンは多忙であればあるほど幸福感で満たされていました。

しかし、一人目の子供が何の疑問も持たずエイリアンの言うことに従い常にべったりとくっついていたので自然と一人目の子供に集中する時間が増え、着々と世界の中心にいるエイリアンへと成長を遂げている側で、二人目の子供はそれを客観的に見る余裕がありました。

二人目の子供が外の世界に出る頃にはエイリアンの目が届かず、子供は比較的自由に外の世界と交流を持つことができるようになると、他人の家と自分の家の違和感に気付くようになりました。

なによりも驚いたのが、友人が悪いことをしたとき親に怒られていてさぞかしショックを受けているだろうと思ったのに、友人は叱ってくれることに感謝をしてるというのです。友人曰く、なぜ親が怒るかを説明してくれて、親としての愛情があるからこそ将来自分が困らないように教育されてるのだと言うのです。それを聞いたとき、二人目の子供は雷に打たれたような衝撃を受けました。

確かに家族で出かけたとき、一人目の子供の行動に周りが顔をしかめる場面に数多く遭遇してきて、それまではそういうものかと思っていたが、他の家の子供に対する周囲の人たちの態度とまるで違っていたのです。さらに、友達は「はい」「ごめんなさい」を使うべき場面で言葉に出して言うことができたので、例え間違ったことをしても大問題になることが稀でした。

違いはまだまだありました。友人の家の夕食に招かれた際、魚料理が提供されました。二人目の子供は魚は好きだったものの、骨を取る作業がめんどくさくて魚料理は嫌いでした。なので、家で魚料理が出たときはエイリアンがきれいに骨をとって魚の身だけを二人目の子供の皿に取り分けてくれていたのです。それが当然だと思っていた二人目の子供は、魚の半身が丸々自分の前に置かれたことに戸惑いどうしようか迷っていると、友人は器用な箸捌きで魚の身と骨をきれいに分けて食べ始めました。その箸の作法は見事で、思わず見惚れてしまうほどでした。なかなか料理に手をつけないことを不思議に思った友人の母親が「魚は嫌いですか」と尋ねてきたので「好きだけど食べ方がわからない」と素直に言うことができました。友人も母親も父親もその言葉をバカにすることなく「それならば」と二人目の子供の横に座って、骨を取り除く手順を丁寧に教えてくれました。あくまで二人目の子供が箸を持ち自ら実践できるように、母親は横で詳しく説明を口頭で伝えるだけでしたが、数分の格闘の末、二人目の子供の魚も見事に友人と同じように分けることができました。そのときの達成感と言ったら他の何物にも例えようがありませんでした。

エイリアンは子供が困っていたら、時には困る前にエイリアンの手で作業を完結させ、完成品だけを子供の前に差し出していたのです。それは便利で楽だったけれど、二人目の子供はその行程を学ぶ機会を奪われていたことに気付きました。

思い返してみると、立派に世界の中心にいるエイリアンへと成長を遂げた一人目の子供は、ソファに座ったままエイリアンを呼びつけ「あれが欲しい」「これがしたい」と要求するだけで、エイリアンが忙しそうに動きその要求に応えます。それに比べて友人は食後の食器を自らシンクまで運び、母親が片付ける作業も手伝っていました。それは常日頃から繰り返されている日常のようで、家族が楽しそうにお互いを助け合っている様はとても眩しく感じました。

一人目の子供がどっぷりとエイリアンの作った沼にはまっている一方で、二人目の子供はこのままではいけないと自立できるように家を出る決心をしました。そして、生涯の配偶者と出会い結婚をしましたが、そこでも自分が置かれていた境遇とのズレを感じる場面が多々ありました。

働き始めてから給料明細を見たことがなく社会の仕組みもよくわからなかったので、配偶者から教わりながら少しずつ学びました。それでも配偶者から「あなたはなにも知らない」と呆れられる場面がある度に肩身が狭い思いをしました。それでも二人目の子供は配偶者と共に添い遂げられるように努力を続けました。配偶者の前に付き合った恋人は、家庭環境に理解ができなかったり、一人目の子供に妨害を受けて悔しい終わりを迎えていたので、なんとしてでも配偶者を守る覚悟をしていました。

しかし、親エイリアンも世界の中心にいるエイリアンも事をそう簡単に進ませてはくれません。新婚夫婦で頑張っていこうとしているところに、親エイリアンはしょっちゅう電話をかけてきて「いつ一緒に住めるのか」と催促してくるのです。冗談とも思えない雰囲気に、最初は笑っていた配偶者もだんだんとその笑顔が曇るようになってきました。根が優しい二人目の子供は家族を無下にすることもできず、かといって配偶者が離れていくことにも耐えられません。一人目の子供のように何の疑問も持たなければあるいは幸せな人生を歩めたかもしれませんが、外の世界を知ってしまったことで奇しくも苦しむことになってしまいました。

あなたの周りにもエイリアンはいますか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ