表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第1話 寝間着姿のエイリアン

エイリアンに出会いました。

それは人間の形をして人間の言葉を話していたけど、まるで会話ができず、表情も人間のものとは思えないくらい歪んでいました。

人間の言葉を話しているのに会話ができないとはおかしな話ですが、エイリアンは自分の発言こそが世界の常識だと思っているらしく、人間がエイリアンの意見に否定をすると途端に機嫌が悪くなり、その場の空気も流れも滅茶苦茶にしてしまいます。それは決して難しい話し合いではなく、ただこの後お昼に何を食べようかなんて些細なことや、世間話の延長のちょっとした意見交換の場でもエイリアンの提案が通らないと、些事なことが大事になります。

賢い人間はその場面を目の当たりにしたとき、一度目はたまたま虫の居所が悪かったのかと推測しますが、二度目に同じ経験をするとどのように対処するべきなのかを学び、次回からはエイリアンの意見に対して肯定も否定もせずうまく受け流します。受け流されたことに気が付かないエイリアンは、周りが自分の言うことを受け入れたと勘違いし、ますますつけあがって今度は偉そうに上から目線で説教までしてきます。エイリアンには苦笑いや愛想笑いという概念がないようです。

どのような場面でも大事にしてしまうエイリアンとの会話はいつも続かないし、すぐに誰もが避けるようになります。そういうことを繰り返していくうちに、見限った人間は一人また一人と離れていきます。自分の発言で誰かが嫌な気持ちになるという状況も理解できないエイリアンは、なにも学習せずに自分こそが常識だと信じて疑いません。

エイリアンの行動もまた、支離滅裂です。自分が言ったことやしたことなどなかったかのように、その場その場で意見や行動を変えるのです。

人間が平和な話し合いの結果、外出先を決定したあとで、エイリアンは自分が行きたいところを提案してきます。人間はまずその発言に驚き、「もう決定してるから」とやんわり断ろうとしてもエイリアンにとっては問題ではありません。自分の意見が通るまで頑として譲らないので、人間は渋々決定事項を変更するしかありません。そこでも人間はなんとか楽しみを見つけ、その日を楽しく過ごそうと努力しますが、ふとエイリアンを見ると眉間に皺を寄せてわざとらしいため息を繰り返しています。それだけでも人間の楽しい一日をぶち壊すのに十分ですが、挙げ句の果てに「どうしてこんな所を選んだのか」とぐちぐち文句を言い始めます。こうなると、人間は開いた口がもう塞がりません。人間の決定事項を覆してまでエイリアンの提案に寄り添ったのに、なぜその張本人に不満があるのでしょうか。

そこで正面切ってエイリアンとやりあおうなんて聡い人間なら決してしません。ただ、エイリアンの存在をその視線から消し、発言を風の流れに同化させて自分の気持ちが荒ぶらないように努めます。

気の毒なことに、不満をたらたら並べるエイリアンの横で、エイリアンの配偶者が申し訳なさそうにぺこぺこと頭を下げる仕草をしています。

以前からこの配偶者の話を聞く限りでは、家でもエイリアンの言動は凄まじいようです。

まず、一日中寝間着姿でいることは珍しくなく、外に働きに出ることを極端に嫌い、かといって家事もせず料理もしないというのです。最初はその話を俄には信じられず、配偶者が話を盛っているのかと思いましたが、エイリアンの態度を見ているとあり得る話だと納得できるようになりました。

そしてエイリアンの身なりは、誰もが知っているような洋服や鞄に身を包み、最新のスマホを持ち、それと連動する最新の時計を身に付けています。

家庭にはそれぞれの事情があり、さらに家庭の財布に他人が首を突っ込むなんて無礼千万以外の何者でもありませんが、配偶者のほうから話を持ちかけてくるのに耳を塞ぐわけにもいきません。曰く、使いこなせない最新のスマホと時計は限定品だそうで、私たちが知ってる数倍の値段でした。さらに、彼らの家には手に入りにくい最新のゲーム機が揃っているそうですが、ゲームをするのは年に数回だそうです。もちろん、そのゲーム機を手に入れるのに苦労したのは配偶者だそうです。エイリアンの欲望は見栄とも繋がっているようです。

エイリアンは自分のことを良い性格の持ち主だと壮大な勘違いをもって自負しているようで、事実、自分の長所をわざわざ声を大にして吹聴しますが、聡明な人間は見せかけの姿に気付かないほど間抜けではありません。

人間は触らぬエイリアンに祟りなしという言葉を知っているので、エイリアンとの共存を諦めざるをえませんでした。安全な距離をとったあとは、その距離を決して縮めぬようにします。さらに、エイリアンのことで頭を悩ませるなんて大変に時間の無駄なので、人間は人間らしく自分たちの人生に目を向け前進します。

配偶者がただただ不憫で気の毒ですが、それも配偶者が選んだ道ならば人間にはどうにもできないことです。配偶者がエイリアンから逃げ出したいと助けを求めてきたときには、手を貸したいと思います。

あなたたちの周りにもエイリアンはいますか?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ