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検査室と司令官室

 司令部内には検査室があり、部内に持ち込まれる物品にトラップが仕掛けられていないかといったことを検査している。


「こちらをお使いください」


「いや、使えって言われても……」


 ソムナリアは躊躇していた。ベルンハルトもゲオルクも、なぜ自分たちが司令部業務を代わりにするのかが理解できず、戸惑いを隠しきれていなかった。


 ジュリアンは周囲を気にしながら、ソムナリアに近づいた。


「司令官からのご指示です。信用できる人に限定したいとのこと」


「ふう……ん」


 ソムナリアは周囲を見ながら口を開かずに言った。


 そして腕まくりをして、椅子に座った。


「さて……お道具箱はここにあるけど……」


 ソムナリアはゲオルクに向いた。


「ゲオルク、マナ感知器と念のためウェラ感知器の方も持ってきて」


「はい!」


 ソムナリアは続いてベルンハルトに顔を向けた。


「ベルンハルトは純銀皿を持ってきて」


「うん」


――パン。


 ソムナリアは自らの頬を一度軽く叩いた。


「じゃあ始めよう」


――しばらく後、運搬物の手紙にトラップが仕掛けられていないことが確認された。


「トラップはありませんでした。はいどうぞ」


 ソムナリアはジュリアンに運搬物の手紙を渡した。


「ありがとうございました」


「これで終わり?」


 ソムナリアがジュリアンに尋ねると、ジュリアンは首を横に振った。


「いえ、レルム司令官が面会をご希望です」


 ソムナリアは目を閉じて、ジュリアンの言葉を時間をかけて飲み込んだ。


「うん、そんな気はしてた……」


 ソムナリアは作り笑いを見せた。


「では参りましょう」


 元気よくジュリアンが歩く。その後ろを元気のないベルンハルトと、眠そうなゲオルクが続き、二人の後ろに眼の焦点が定まっていないソムナリアがついて歩いた。


 しばらく歩いて、三人は待合室に通された。


「こういうところ、本当になれてなくて……」


 ゲオルクがソムナリアに聞こえるようにつぶやいた。ソムナリアは微笑みながらゲオルクを向く。


「レルム司令官はちゃんとしてる人だよ」


「いえ、そういう問題でなくて……高級将校の方とはほぼお会いしないので……」


 そこにベルンハルトが割って入った。


「レルム司令官は細かいところまでは気にしないから。大丈夫だよ」


「はい……頑張ります」


「何かあったら俺たちも口添えするから」


 ベルンハルトが言うと、ソムナリアもうなずいた。


「私も助け船は出すから」


「よろしくお願いします……」


――ガチャ。


 ドアが開いて、ジュリアンが入ってきた。


「ベルンハルト分隊長、同行の……ゲオルク一級魔術士、ソムナリア三級魔術士、どうぞこちらへ」


 ジュリアンの案内の下、四人は司令官室に向かった。


「ソムナリアさんの方が、呼ばれる順が後なんですね……」


 ジュリアンが顔を後ろのソムナリアに向けて言った。


「いいじゃん。級が下なんだから」


「でも実力は一級ですよ」


 ゲオルクが皆に向かって言った。


「下なのは下。それより、私、民間魔術士じゃない?」


「……え?」


 ジュリアンは手元の紙を見直した。


「いえ、三級になってます。魔術士名簿で確認してますから間違いないです」


「そうは言っても名簿自体に間違いもあるかも知れないし」


 ソムナリアが言うが、ベルンハルトが止めた。


「やめよう。それ言い出したらキリがないよ」


「そうだね。規制事項は同じだからね」


「そうそう。気にしない」


 ベルンハルトが言い終わったところで、三人は司令官室の前に到着した。


「レルム司令官、ベルンハルト分隊長、ゲオルク一級魔術士、ソムナリア三級魔術士がいらっしゃいました」


「通せ」


 ジュリアンがドアを開いた。部屋の奥に大きなデスクがあり、さらに奥に座っていたレルム司令官が立ち上がった。


「ソムナリア、ベルンハルト、久しぶりだな」


「お久しぶりです。それからこの者が……」


 ベルンハルトがゲオルクを手で示した。


「ゲオルク一級魔術士だね。初めまして」


「このたびは拝謁にあずかり恐悦至極に存じ上げます」


 ゲオルクの口上に、みなくすりと笑った。


「そこまで固くなる必要はないぞ」


 レルム司令官がゲオルクの左の二の腕を軽く叩いた。


「それはともかく、みな座ってくれ」


 レルム司令官にうながされて、三人は席に着いた。

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