幕間 ハルメティシア=アーカルディア
「あー疲れた。全く、誰だよ! 核兵器の知識を持った罪人を転生させたのは! 世界が崩壊するところだったじゃん」
ハルメティシア=アーカルディア。通称ハル。
ミヤちゃんがいる世界も含めて、多くの世界を管理している私だけど、実はその管理は思った以上に大変だ。目を離した隙に、どこかの世界が滅びそうになっているのだ。
ひとつ解決すれば、また次が。本当に一難去って、また一難。ありえなくなーい?
「ほーんと困っちゃうよねぇ……私に押し付けすぎ〜。やっと休憩できる……」
ブツクサ言いながら、私は目の前に人をダメにするクッションを出した。そしてテーブルを出して、緑茶と和菓子を載せておく。本当に日本食は最高なんだよねぇ。何回食べても飽きないわ。
人をダメにするクッションに身体を預け、私は横になる。あー、眠くなってくる……いや、神は寝ないけどさ。
しばらくゆっくりしていた私だったけれど、ふとミヤちゃんとユウくんのことを思い出した。最近忙しくて顔を出せていなかったんだよねぇ。最後に顔を出したのは……ミヤちゃんが魔法の杖を手に入れて、変身していたところ……だったっけ? それもうろ覚えである。
「久しぶりに鏡を覗いてみるかぁ」
私は鏡を顔の前に浮かべ、ミヤちゃんたちのいる世界の名前を唱えた。すると、少しずつ景色が映り始めていく。
「おや、魔境の森……だっけ。ああ、ここまで来たんだぁ……」
ミヤちゃんの近くから、以前私が作った本の気配を感じられる。
「うーん、良かった。使いこなしてくれているみたいだねぇ……IPは役に立ってれば良いけど」
まあ、ここまで言えばわかると思うが、先代賢者は私の分身だ。先代は賢者に該当する人物がいなかったんだよねぇ……だから苦肉の策で私の分身を送ったんだよ。ついでに魔法の研究と魔道具の研究をして、役立ちそうなものは全部作っておいたんだけど……あ、どうやら使ってくれているみたい。良かった。
ユウくんへと視線を向けると、どうやら魔法カバンを使ってくれているようだ。作っておいて良かったな、と思ったところでふと気がつく。
「あれ? なんか増えてる?」
いつの間にか白い蜘蛛と、男の子がユウくんの近くにいる。マチルダというミヤちゃんの侍女が二人を気遣っているから、どうやら味方なのだろう。いや、そもそもこの蜘蛛って魔物だよね? 魔物も仲間にしちゃったの? すごいな。
「あれ、ミヤちゃんは……ってあれ?」
私は目を擦ってもう一度鏡を見た。そこには何故か小さな炎竜と遊んでいるミヤちゃんの姿が。それを見ているユウくんは……呆れていた。
「ああ、またミヤちゃんやらかし……いや、面白いことになってるねぇ?」
どうやら炎竜も仲間にしたらしいミヤちゃん。着実に面白パーティになっている。
「適性があるとは思っていたけれど……まさかこんなに楽しんでくれるなんて……助かるなぁ。それに——」
私はユウくんを見る。彼がミヤちゃんを見る瞳は、昔から変わっていない。
「ユウくんもこの世界で日本の記憶を取り戻すなんて……これは運命だね? ふふふ、ミヤちゃんを選んで良かったよ。きっと二人なら大丈夫だね」
私は鏡の縁を撫でる。そこは少し冷んやりとしていた。
「期待しているよ……藤原 雅。そして写田悠」
——鏡を見つめるハルメティシア=アーカルディアの瞳には、先ほどまであった感情が失われていた。
ここで第五章終了です!
のんびりペースではありますが、お付き合いいただきありがとうございます。
第六章も書き溜まりましたら、一日一話ずつ載せようと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします!




