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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
【改稿中】三章 保元元年(一一五六)八月~九月

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寝る童は育つ(一)




 八月中旬。

 北対にて、乙若丸が昼寝をしていた。

 少しでも暑さが和らげばと、世話係が団扇でゆるやかに風を送っている。


 ここに流れる空気は、いつもと変わらぬ。

 戦後のざわめく情勢が届かぬようにしていることも、要因のひとつだろう。常盤の義母上を動揺させてはならぬという、皆の総意だ。

 私もこうして守られてきたのだと、改めて実感する。


 ……ここだけの話だが。乙若丸を見ていると『乙女』の『乙』ではないかと思ってしまう。乙若とは〝二番目の男児、という意味だが。

 大きな目を縁どる睫毛は長く。色白の肌に映える小さな唇は、血色よく艶もある。骨格も、今若丸が二歳だった頃より華奢な印象を受ける。このまま成長する訳ではなかろうが、つい考えをめぐらせてしまう。……成人の儀では、烏帽子を冠するより裳着のほうが似合うのではないか、と。

 決して乙若丸の愛らしい姿を見たいからではない。あくまでも、客観的視点からの意見だ。

 私の隣に座った四歳の今若丸が、乙若丸をのぞきこんだ。


「おとわか、ねてる」

「うむ。今若丸も昼寝を致すか?」

「ねむくない」


 動作が緩慢になってきたが、目をこすりつつ起きているのだと主張する今若丸。


「乙若丸を見守っているのか」

「まもる」


 己よりも幼い子を見て、本能で『これは守るもの』と理解しているようだ。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、8月19日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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