戦の爪痕(七)
「若様も……わかっていらっしゃるのでしょう? 大殿のご性質を思えば、術符をどうなさったか」
「…………」
「大殿は、我らが誇る一の武士でいらっしゃいます。最期まで、誇り高き源氏の長でいらっしゃいました。『いざ尋常に!』と堂々と宣言なさった時など、後白河方の方々も『さすがは為義殿』『敵ながら天晴』と称賛なさっていましたよ」
「……お祖父様……」
「大殿は……若様のお心を胸に戦っていらしたのでしょう。圧倒的な人数の差に懸命に挑まれる中、若様とともに刀を振るっているという思いが、大殿を支えていらしたのだと拝察いたします」
「……私が……ともに……」
「若様が術符を渡された時、お心も渡されたのでしょう? そのお心を、大殿は戦場へお持ちになったのです。どれほど心強かったことでしょう」
「……心、を……」
震える声が、堪えていた涙をこぼした。
「……では、術符は……」
「今も、崇徳上皇陛下がお持ちでいらっしゃいます」
「……何と……」
そう呟きながら、やはり、とどこかで思っていた。崇徳上皇陛下の御身を、あれほどご憂慮なさっていたお祖父様のこと。ひとつでも多く手を打つために、ご尽力なさったはずだ。
「大殿は近侍の方にお渡しになりました。『我が一族が誇る術師の符』と言い添えられて。近侍の方はすぐに、ひそかに陰陽寮の方に調べていただいたそうです。中立の陰陽寮ならば、どなたへの影響もありませんから」
「して……」
「陰陽寮の方は、いたく感心なさっていたとのことです。『簡潔な術式と高雅な文字。術符としても効果は高いでしょうが、何と申しましても美しい』と」
「……左様か……」
そのような場合ではないのだが、何とも面映ゆい。
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