戦の爪痕(六)
小助を見つめたまま、言葉を発することができぬ私。抱えていた恐れが心の臓を叩く。
口を開きかけては押し黙る私を、小助は辛抱強く待ってくれた。
「……そなたが、そのように問うということは……」
意図せず、小助から視線をそらしていた。
「……皆様……術符のことをご存じなのだな……」
「はい」
小助は頷いた。
これで合点がいった。今宵の訪問は、報告を兼ねた父上や異母兄上方のお心遣いだと。私が内に秘めるよう努めていた憂いを慮ってくださったのだろう。さらには熱田のお祖父様と同様のことをお考えなのだろう。藍色の夢にて伝えられた憂慮──私が家族に甘えぬこと──ゆえに小助を遣わした。
『いついかなる時も〝次期長の嫡男〟であろうとしなくていい』
『ひとりで、すべてを背負うな』
という先ほどの言も、私が思いを吐露しやすくするための……
「ですが、どなたも若様を責めてはいらっしゃいません。むしろ『よくぞそこまで』と、お心遣いを褒め称えていらっしゃいました」
重々しい空気にならぬよう、やわらかな声で語りかけてくれる。
「……『勝手なことを』とお怒りの方はいらっしゃらなかったのか」
「おひとりも」
小助がまっすぐ見つめてくる。その力強い眼差しは、皆の心を代弁しているかのようだった。
「若様が〝童〟として動かれたのを、皆様はご理解なさっています。『立場により動けぬ大人の代わりに、手を尽くしてくださった』と」
「だが……お祖父様は落命してしまわれた。私の術が未熟なせいで──」
「若様」
そして静かだが強い口調で、私の言を止めた。
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次回更新は、8月7日23:00頃を予定しております。
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