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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
二章 保元元年(一一五六)六〜七月

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術符に込めた祈り(八)




「滅相もないことでございます。お祖父様は、我らが誇る一の武士。幾人が束になろうとも、刀傷の一筋すらつけられぬと思うております」

「ならば何故、身代わり札などと申すのか」

「此度の相手は信西殿でございます。人となりは父上からお伺いした限りでございますが、武士の本分である〝尋常に勝負〟とは、ほど遠い御仁かと」

「……たしかに」

「信西殿は、戦場においても卑怯な手を使うやもしれませぬ。なればこそ、お祖父様が些事に煩わされず、正々堂々と存分に腕を振るえるよう考えた次第でございます。……どうぞ私の心とお思いになって、お持ちくださいませぬか」

「そなたは……いつから、そのように口達者となったのか」

「思うだけでは伝わらぬ、と夢にて御神託をいただいたのでございます」

「御告げとな」


 お祖父様は私の目をご覧になり、


「……ふむ……」


 と呟かれ瞑目なさった。しばしの後、目を開けられ、


「では、念のため持っておこうか」


 と、お受け取りくださった。私はひとまず安堵する。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、7月14日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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