表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
二章 保元元年(一一五六)六〜七月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/159

術符に込めた祈り(一)




 小助の気配が遠のいたことを確認すると、まずは室内に結界を張った。……これで誰も気づかぬ。ここ連日、皆の〝気〟が張り詰めている。余計な心労をかけることもなかろう。

 文箱の隠し細工を開き、中から術符を取り出した。そこで、はたと気づく。墨と筆がないことに。

 有能な近江のおかげで、私の身の回りはいつも整えられている。墨は私好みの濃さに磨られ、硯も筆も、私が使用した後は丁寧に拭われ片づけられる。

 筆は熱田のお祖父様がくださったものゆえ、霊力を組み込むのに最適だ。できれば使いたかったのだが……さて困った。

 しばし思案の末、霊力を術式へ変換させることにした。指先へ霊力を集中させ、術符から少し離して穂先を扱うようにすべらせる。……なかなかうまくいかぬな。

 均一な線は難なく書けるのだが、筆のような強弱が難しい。術符を一枚犠牲にして、しばし強弱の練習をした。

 そうこうしているうちに空が白み始めた。時刻は、まもなく寅三刻(午前四時)。あと二刻(一時間)もすれば近江が起こしに来る。その前に終わらせねば。

 焦りを抑え、新たな術符へ術式を書いていく。敵の攻撃を弾くよう祈りながら。


「……ふぅ……」


 慣れぬことをしているせいか、体力気力ともに消耗が激しい。指先、線の強弱、術符へ記す術式。これらへ同時に、均等に霊力を配るのは思ったより難儀だった。

 熱田のお祖父様の筆があれば、穂先への集中ひとつで事足りるのだが……無いものは致し方ない。

 万が一のために、お祖父様の身代わりになる術符も書かねば。私は、わずかに霞んできた視界を振り払うように、深く息を吐いた。


 空が次第に明るくなっていく。

 ……今からでも近江に墨と筆を頼むか? いや、墨磨りは少なくとも一刻かかる。このような時刻に頼めば、何事かと案ずるやもしれぬ。

 ならば、なおのこと急がねばと逸る鼓動を呼吸で押さえつけ、震えそうになる指先を凝視で無言叱咤した。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、7月5日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ