清和の流れを汲む者(三)
「これよりは、この小助が〝繋ぎ〟を致しますれば。一度お目通りをと」
この世界の〝繋ぎ〟とは、主を定められた年若の影の者が上からの指示に従い、主へ世情などを伝えることをいう。玄斎師のような指南役とは、また別の教育係を担うのだ。
小助は私付きとなるのだな。
「小助、よろしく頼む」
「承知いたしました」
頭を下げる小助の礼法も整っていた。
影の者を従えるのは、成人に向けての一歩とされる。戦の話に同席を許されたことを踏まえると、まもなく嫡男教育が始まるというわけか。
……いずれ次期長となるための嫡男教育……父上が長の座に上られる時は──いや、考えすぎだ。源のお祖父様に不測の事態など起こるはずがない。だが……
事のあらましを話されていた父上の表情に、時折見え隠れしていた焦りのようなもの。それが頭から離れぬ。表情といえば、朝長異母兄上もそうだ。守仁親王殿下の御名が挙がった時、強張っていらしたのも気にかかる。とりあえず、これは置いておくとして。ともかく父上の表情だ。
胸の内で何かが警鐘を鳴らしている。だが策を練ろうにも情報が足りぬ。情報が……
私の目の前には、情報を扱う影の者たち。物見(偵察)も得(得意)とする──
「……ひとつ、頼みたいことがある」
私は無意識に〝気〟を張り詰めていた。
「何でございましょうか」
親衡殿は表情を引き締め、影の者として答えた。その目は、いつもの主厨長と同じ。私を案じ、包みこむような眼差しだった。
私はハッとした。焦燥感に支配された心のままでは、落ち着いた問答などできぬ。
「無理難題を押しつけようというのではないゆえ、案ずるな」
冗談めかしつつ〝気〟を緩め微笑んでみせると、親衡殿と小助も肩の力を抜いたようだった。
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