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【4月7日より】ありあけの月 暁編【改稿中】  作者: 香居
一章 久寿三年(一一五五)四月~十二月

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義母上を見舞う(二)




「義母上。突然の訪問をお受けくださり、ありがとうございます」

「……こちらこそ……お心遣いいただき、かたじけなく存じます……かような姿にてお目にかかりますこと、どうぞ、お許しくださいませ……」

「押しかけましたのはこちらゆえ、お気になさいませんよう」


 挨拶の合間を見て、周防から義母上に温石が手渡された。


「……とても、温かいこと……若様のお心に、感謝申し上げます……」


 儚げな義母上が、ふわりと微笑まれた。それだけで、さし上げて良かったと思う。

 今、義母上は血の道を患っていらっしゃる。血の道とは、血のめぐりに関する自律神経に支障をきたし、めまい、耳鳴り、動悸(どうき)、冷えなどの症状がみられる女性特有の病のことだ。

 朝餉の時の話にもあったとおり、初産の時は発症しなかった。此度は六ヶ月を過ぎたあたりから症状が出始めたとのことで、薬師殿も注視している。

 私の扱う霊力──言霊に病を治すほどの力があれば……と思ってしまう。それは〝神の領域〟であり、禁忌の術であることもわかっている。

 以前、熱田のお祖父様は、


『人の生死に関わることに、手を出してはならぬ』


 と仰っていた。だが義母上の、かような姿を拝見すると──


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、5月25日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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