義母上を見舞う(二)
「義母上。突然の訪問をお受けくださり、ありがとうございます」
「……こちらこそ……お心遣いいただき、かたじけなく存じます……かような姿にてお目にかかりますこと、どうぞ、お許しくださいませ……」
「押しかけましたのはこちらゆえ、お気になさいませんよう」
挨拶の合間を見て、周防から義母上に温石が手渡された。
「……とても、温かいこと……若様のお心に、感謝申し上げます……」
儚げな義母上が、ふわりと微笑まれた。それだけで、さし上げて良かったと思う。
今、義母上は血の道を患っていらっしゃる。血の道とは、血のめぐりに関する自律神経に支障をきたし、めまい、耳鳴り、動悸、冷えなどの症状がみられる女性特有の病のことだ。
朝餉の時の話にもあったとおり、初産の時は発症しなかった。此度は六ヶ月を過ぎたあたりから症状が出始めたとのことで、薬師殿も注視している。
私の扱う霊力──言霊に病を治すほどの力があれば……と思ってしまう。それは〝神の領域〟であり、禁忌の術であることもわかっている。
以前、熱田のお祖父様は、
『人の生死に関わることに、手を出してはならぬ』
と仰っていた。だが義母上の、かような姿を拝見すると──
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次回更新は、5月25日23:00頃を予定しております。
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