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ありあけの月 ──暁──  作者: 香居
一章 久寿三年(一一五五)四月~十二月

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のどかなる牛車(三)




 沓を履くため前板に足を伸ばそうとした時。すぐ傍で異母兄上の薫衣香の香りがした。それから、あっと思う間もなく、


「猫の子のようだね」


 異母兄上に抱きかかえられていた。


「……かように小さくありませぬ」


 これでも、ようやく三.九尺(約一二〇センチメートル)まで伸びたのだ。……若干小さめなことは、私とてわかっている。


「そういう意味で言ったのではないのだよ。ふふ、拗ねる顔もまた愛らしいね。……おや。膨らんだ頬が、つきたての餅のようだ」


 からかわれ、ますますむくれる私。

 異母兄上は、やさしく目尻を下げられた。従者たちのほうへ顔を向けられた時には、次期長の子の顔になっていらしたが。


「鬼武者は、このまま私が連れて参る。(くつ)(もち)は、後ほど鬼武者の沓を持って参れ。その他の者は、東の(くるま)宿(やどり)にて各自の報告が済み次第、昼にして良し」

「「「はっ」」」

「では解散」


 そのまま東中門へ向かって歩き出される異母兄上。

 我に返った私は、慌てて彼らにねぎらいの言葉をかけた。異母兄上の腕の中からというのが、格好がつかなかったが。



 私たちが立ち去った後。彼らは、


「朝長様、出仕よりお帰りになって間もなく、こちらへいらしたのじゃな」

「急いで着替えられたとは思えぬ身だしなみよの」

「『何はさておき若様』ゆえなぁ」

「あの涼しげな目元が、若様に向けられる時はゆるゆるじゃな」

「ああ、ゆるゆるじゃ」

「若様も、朝長様のお相手をなさる時は年相応に見えるのぅ」

「良いことじゃ。若様にも息抜きが必要じゃて」

「それにしても、眼福じゃな」

「おふた方とも、美しゅうあられるよって」

「絵巻が動いとるようじゃ」

「おぬし、うまいこと言いよるの」


 などと、ほのぼのと会話をしつつ、車宿(牛を外した牛車を入れる建物)へと向かったらしい。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、5月19日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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