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【4月7日より】ありあけの月 暁編【改稿中】  作者: 香居
【改稿中】三章 保元元年(一一五六)八月~九月

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新たな糸を結ぶ(二)




「お褒めのお言葉、ありがとうございます。鶴千代殿は張りのあるお声で、所作が丁寧と存じます。さすが故実に造詣が深い方であると、感服しておりました」

「ありがとうございます!」


 喜びいっぱいの顔は、無邪気な子犬のようだ。


「鬼武者殿は、やはり『西宮記』にて学ばれましたか?」

「はい」

「私もです! 十八巻まで何度も読み返していますが、その度に新たな発見があるのです」


 一巻でも結構な量だと思うが……


「鶴千代殿は熱心ですね」

「学ぶためでもありますが、西宮記を読んでいるとおちつくのです」

「『北山抄(ほくざんしょう)』はいかがですか?」

「(藤原)公任(きんとう)卿の記された儀礼書ですね。ためになることも多くありましたが、私には『西宮記』のほうが合っているようです」

「左様でございますか」

「ゆえに……大きな声では言えませんが、此度は式部省(しきぶしょう)に属するところを望んでいたのです」


 声をひそめて、しょんぼりする子犬……ではなく、鶴千代殿。

 式部省は文官の人事や朝儀などを担っている部署である。

 大人の思惑がどうであれ、鶴千代殿自身は儀礼やしきたりに関わることのほうが重要らしい。


「……良いですね……鬼武者殿は主殿寮で……」


 指貫の上で小さな拳を握り、口を尖らせる鶴千代殿。

 主殿寮の主な仕事は、内裏の施設管理業務と消耗品の管理・供給である。

 文官職というくくりで、うらやましいと思ったのだろうか。いずれの部署に参ろうとも、童の仕事は書簡運びが主のはずだが。

 下がった眉とともに、垂れた犬耳の幻影……本人には申し訳ないが、とても愛らしい。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、10月22日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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