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【4月7日より】ありあけの月 暁編【改稿中】  作者: 香居
【改稿中】三章 保元元年(一一五六)八月~九月
118/122

初昇殿(四)




 それからやや下座寄り。

 黒の袍をお召しの、ふくよかで意志の強そうな方は、おそらく清盛公だろう。武士の身でありながら、正四位下に昇られるという大躍進を遂げられた方だ。

 五位の任官ですら武士にとってはまたとない出世であり、それ以上は不可能に近いとされている。異例とも言える昇進に、世間で囁かれているご落胤説が信憑性を帯びてきた。

 さらに下座寄り。

 深緋の袍の父上がいらした。

 正装姿も端整な父上は自慢だが……今度はため息を堪えるような表情をなさっている。やはり、お疲れか?


 私は反対側に意識を移した。 

 御簾近くではあるが、実能卿、忠通卿よりわずかに下座寄り。

 黒の袍をお召しになっている爽やかな方は、従四位下・藤原信頼様だろう。御上の次位近侍として、二十四歳とお若いながらも重用されている。さらに()兵衛佐(ひょうえのすけ)として合戦においても活躍なさった。武の才能は父君ゆずりとか。

 そして──御簾に添うように控える深緋の袍が目に入った。

 ……あれが、信西殿か。

 官位こそ正五位下だが、御上の筆頭近侍として辣腕を振るうことには関心する。強引な手が多く顔をしかめる方も多いようだが。人相は、父上が仰ったとおりだった。五十一歳という年齢よりは若く見えるが、お世辞にも好感を抱けるものではない。

 ……あれが、諸悪の根源…… 

 わずかでも気を抜けば眉を寄せそうになるゆえ、心の内で般若心経を繰り返し唱えた。


 十一回目を唱えようとした時、名簿の読み上げ終了を宣言する声が耳に入ってきた。私は心を無にするための努力に、かなりの時間を費やしていたらしい。

 その後承認の儀へと進み、この場を持って正式に童殿上が認められた。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、10月15日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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