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【4月7日より】ありあけの月 暁編【改稿中】  作者: 香居
【改稿中】三章 保元元年(一一五六)八月~九月

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初昇殿(三)




 顔には出さぬが困惑していると。


「──んんっ」


 父上が小さく咳ばらいをなさった。皆様は術が解けたようにハッとなさり、私から視線を外された。

 何だったのかよくわからぬが、父上に視線でお礼を申し上げ……何とも言えぬ表情をなさっているのは、お疲れか?


「つ、続いて──」


 名簿を読み上げるお役人の方は、慌てて次の童の名を呼ぼうとしていらした。


 名を呼ばれた後は、承認の儀まで姿勢を正していればよい。私は周囲を観察することにした。視界を広く持ったまま、目から入ってくる情報をまとめていく。

 最奥の御簾の中には、御上がいらっしゃる。ここから見えるのは人影くらいだが。

 御簾近くにて、黒の(ほう)をお召しの方々が実能卿と忠通卿だろう。やつれておいでの方が、忠通卿とみた。父上から伺ったことだが、荘園の件で朝廷と一悶着あったとのこと。

 本来、藤原氏の荘園に関して、他の権力は介入できないこととされている。天皇家と深い結びつきがある藤原氏に介入するのは、自らの首を絞めるようなもの。ただし朝廷だけは例外を認められている。此度のように『乱の首謀者が藤原氏の長であった場合』が、まさにその例外(・・)の事案とされてしまった。


『朝廷をしのぐ勢いのある一族が反乱分子では困る』


 というもっともらしい根拠(こじつけ)により、首謀者とされた頼長卿所有の荘園は、すべて没収されてしまったのだそうだ。

 新たに長となられた忠通卿は、なんとか食い止めようと奔走なさったらしい。だが朝廷の──信西殿の策略には敵わなかった。藤原氏の長が所有していた荘園……規模を考えると、かなりの痛手となったはずだ。

 忠通卿のご様子からして、抱えていらっしゃるご心痛はかなりのものだろう。だが我が子の晴れ姿は嬉しく思われるらしく、表情が和らいでいらっしゃる。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、10月13日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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