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【4月7日より】ありあけの月 暁編【改稿中】  作者: 香居
【改稿中】三章 保元元年(一一五六)八月~九月

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逢瀬の前夜は(五)




「近江。熱でも出て参ったか? 顔が(あか)──」

「な、何でもございません」


 慌てて私の言葉にかぶせ、染まった頬を隠すように袖をあてた。それから、


「……若様。他所(よそ)のご令嬢には、そのようなことを軽々しく口になさってはなりませんわよ」


 姉のような口調で叱りつけてきた。


「私は、己の思いを軽々しく口にしたことはないぞ。熱田のお祖父様も『よくよく考え、口に致せ』と仰っていたゆえ」

「……無自覚でしたら、朝長様よりよほどたちが悪うございます……」

「すまぬ。よく聞こえなかった」

「何でもございません」

「左様か。ともかく、明日は楽しんで参れ。そなたと仲綱殿が幸せならば、私も嬉しい」

「……ですから、その微笑みが……」

「ん?」

「何でもございません」


 今宵は近江の声がよく聞こえなくなるな。……私も休んだほうがよいのか?

 ふと思ったが、良い案ではなかろうか。これで近江も気兼ねなく明日の支度ができよう。


「近江」

「はい」

「私は御帳台に入るゆえ、そなたも下がってよいぞ」

「おかげんでも……?」

「特に障りがあるわけではないゆえ、案ずるな。童殿上のことを考えようと思っただけだ」

「ならば良いのですが……」


 私を案じながらも手早く寝衣の用意をする近江の有能さは、やはり私の世話係ではもったいない。そう思う反面、私のお付きであることに誇りを感じる。

 それらを感謝とともに伝えたところ、


「若様は、わたくしの心の臓を止めようとなさっているのでしょう」


 と愛らしく睨まれてしまった。その頬はふたたび染まっている。照れ隠しであることが伝わってきて、私は思わず笑みを深めてしまった。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、10月1日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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