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【4月7日より】ありあけの月 暁編【改稿中】  作者: 香居
【改稿中】三章 保元元年(一一五六)八月~九月

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逢瀬の前夜は(二)




 私はこうして写しの料紙にふれぬよう、宙で手筆をなぞるだけでも満足している。

 本日も、手元の写しが行成卿の手筆に変換されて映る。彼女(前世)の一途さの賜物だ。おかげで書の練習を兼ねつつ、行成卿の世界に浸ることができる。


 それから一刻ほど。

 伊行様の書で心を新たにした後、小さく息をついて顔を上げると、近江がいまだ気遣わしげに控えていた。……夢中になり過ぎたな。早く下がらせてやらねば。


「近江。明日は仲綱殿と出かけるのだったな」

「申し訳ございません。勝手を申しまして」

「何を申す。そなたの公休日をどのように使おうと、そなたの自由だ。ましてや一週間ぶりの逢瀬ではないか。私のほうこそ、そなたに申し訳なく思っているというのに」

「わたくしに?」

「うむ。私が童であるばかりに、そなたは〝世話係〟として、昼も夜もなく控えておらねばならぬ。〝元服後のお付き〟であれば、もう少し時間を融通してやれるのだがな……」


 私の元服まで、あと二年。

 仲綱殿も近江も、本心は早く婚姻を結びたいだろうと考えると心苦しい。


「若様がそのように思い悩むことはございませんのよ。これはわたくしの務めですもの」


 近江は、私の世話係であることに誇りを持っているようだった。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、9月23日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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