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【4月7日より】ありあけの月 暁編【改稿中】  作者: 香居
【改稿中】三章 保元元年(一一五六)八月~九月

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己の姿は見えぬ(三)




「いや、うむ。嬉しくてな」

「わかりますわ」

「由良も聞いてみてはどうだ?」

「よろしいのですか?」

「余だけでは不公平になるであろう」

「殿のお心に感謝申し上げます。では、僭越ながら……」


 母上が愛らしく前置きなさった。


「鬼武者。わたくしは?」


 その問いに対して私ができることは、心を尽くした返答だ。


「母上は、天女様にございます。その美しいお姿と、私たちに注いでくださる愛情の深さ。父上を支えていらっしゃる内助の功。見目ばかりではなく、心の在りようが美しい母上は、天女様にございます」

「嬉しいこと……」

「由良。頬が染まっておるぞ」

「まことに嬉しいのですもの。以前の朝餉の折も、そう申してくれましたね」

「何? 由良はもう聞いておったのか」

「ふふ。毎朝、鬼武者と語り合うことのできる者の特権ですのよ」

「むぅ……母と子の語らいを邪魔するわけにはいかぬな」

「まぁ、殿。童のようなお顔をなさって」

「仕方なかろう」


 本日も、おふた方は仲睦まじいようで何よりだ。


 私が父上や母上と和やかに話をしている間。異母兄上方は──


「……朝長。お前のお株が奪われておるぞ」

「……計算をせぬ言い様は、破壊力も凄まじいですね。あの純真さは、少し羨ましく思います」

「我らには、ないものゆえな」

「そうですね」

「だからこそ。より愛おしく思うのだろうが」

「まことに」

「……守らねば、ならぬな」

「……ええ。〝闇〟があの子にふれるなど、考えたくもありません」

「官職の低い我らに、できることは限られるがな」

「……歯がゆいですね。己の立場が」


 何かを真剣に話し合われているようだった。

 極小さな声だったゆえ、一間(約一.八メートル)ほど空けて座す私の耳には届かなかったが。


お読みいただきありがとうございます。

またブックマークや評価などにも感謝いたします。

次回更新は、9月11日23:00頃を予定しております。


誤字脱字がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

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