↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矮翼のセラフィム  作者: す
9/134

第9話 宮廷魔術師長と騎士団長(2) セフィロトの樹


「なんだよ」


「お前がセラフィムの魔術を解明したと聞いた」


「……誰に聞いた?」


「この間、ジール宰相にたまたま会って。その時に教えてくれたんだ」


「『たまたま』だと?あの曲者、何を企んでる」


 ヒルデは指で顎をおさえ、不審顔になる。


「クセモノって!いつもニコニコして人が良さそうじゃないか、ジール宰相。それにすげえ有能な人なんだろ?幼年の皇帝を支える、帝国の事実上の最高権力者……」


「あいつが『人が良さそう』だと?」


「うん」


 ヒルデはなぜか、呆れたように大きくため息をついた。


「……まあいい。確かに、セラフィムの魔術のことはだいたい分かった」


「本当か?帝立大学院の魔術博士たちすら解明できてねえんだろ?」


「大学院の教師ふぜいと一緒にするな。元カブリア王国宮廷魔術師、現トラエスト帝国宮廷魔術師の俺をなめてもらっちゃ困る」


「なんだよ教師をバカにするなよ……」


 ヒルデはかつて、カブリア王国の宮廷魔術師だった。

 それが王国を去り帝国の宮廷魔術師になったのは、セラフィムの襲来とは関係ない。

 三年も前に、その非凡な才能を買われて帝国に引き抜かれたのである。帝国支配下にあるカブリア王国は、泣く泣くこの逸材を手放した。

 しかも帝国は引き抜いたヒルデをすぐに、宮廷魔術師の中で最も位の高い、宮廷魔術師長に据えた。

 年齢はエスペルの三つ上、二十三才。

 帝国史上最年少の宮廷魔術師長である。


「セラフィムは『霊能』が極めて高い。奴らは霊界を操作してる。我々の魔術系統で言えば神聖魔法に近い」


「霊界?」


「ああ。攻撃が全く効かなくなるセラフィムの防御術、あれは肉体を霊体化させてるんだろう」


「つ、つまり、一時的に幽霊になるってことか?」


「そういうことだ。肉体の中に霊体があり、霊体の中にセフィロトがある。肉体を一定時間別の階層に飛ばしてるんだろうな」


「飛ばすって!でもあいつら、体だけじゃなくて着ている服も無傷だったぞ」


「幽霊が裸ではないのと同じ理屈だ。服や武器など身につけているものは全て自己同一化されており、肉体と同じように霊体化可能なんだ」


「なんて奴らだ……」


「そしてセラフィムの即死魔法は、セフィロトへの直接攻撃によるものだ」


「どういうことだ……?」


「まあ見たほうが早い、ちょっと可哀想だが、実験してみるか」


「実験?」


 ヒルデは席を立つと、奥から黒鼠を入れた籠を持って来てテーブルに置いた。


 黒鼠は鼻をひくひくさせながら、籠の中をはいずりまわっていた。


「この元気な黒鼠……。こうすると」


 ヒルデは黒鼠に向かって手をかざした。そして穴の開くほど黒鼠をじっと見つめる。


「な、なんだ?何してるんだ?」


 やがてヒルデの両の瞳の中に、円と線の図形――セフィロトの樹の図が浮かんだのを見て、エスペルは息を飲んだ。


「……見えた」


 言うと同時に、ヒルデはかざした手を前に押し出し、術名を口にした。


破魂クリファ・セフィラ!」


 と、黒鼠が倒れた。

 黒鼠はもう、目を瞑り微動だにしない。


「お、おいこれは……!」


 ガタン、と音を立ててエスペルは立ち上がった。

 ヒルデは得意そうな顔つきでそんなエスペルを見やった。


「同じだろう?セラフィムの即死魔法と」


「お、お前むちゃくちゃすげえな!俺にもできるか?」


 ヒルデは己の、セフィロトの樹の浮かぶ不思議な瞳を誇示するかのように、指で指し示した。


「霊能を鍛え、霊眼を開け。相手の魂が見えるようになれば、自ずと攻撃も可能になる」


「ヒルデ頼む……」


「いいだろう、訓練してやる。お前の威力なら……セラフィムも殺せるかもしれん」


 そういってにやりと笑って瞬きをすると、もう瞳は通常の状態に戻っていた。


「本当か!」


「面白そうな話してんじゃねえか、カブリア王国のお二人さん」


 男の声が飛び込んで来た。

 突然会話に入り込んで来た第三者に、二人ははっと振り向いた。


魔術設定


・精霊魔法

火炎魔法や氷結魔法。精霊の力を借りる魔法。神々の力を借りる場合も精霊魔法に含まれる。


・魔能

念動や透視。いわゆる超能力。使い手が少ない高等魔術。


・神聖魔法

悪霊を霊界に送るときに使う。いわゆる霊能力。


・破魂

霊を見る第三の目、すなわち霊眼を使って、現に生きている命の魂を見出し、それに殺意の念をぶつけていわば呪い殺す術。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。