球体
ゲリラの死体を隠したランスとジャックは、その後も回避、潜伏、探査、前進を繰り返し、最上階の謎の球体が待つ部屋の前へと辿り着いた。
他の部屋は基本的に扉はないが、ここには後から増設された立派な鉄扉がついている。
二人は慎重に扉へ近づきトラップの有無などを調べ、一通りの確認が終わると少し離れた暗がりに身を潜めた。
現状、判明したことは扉にトラップや施錠はなく、内開きで中に人の気配は確認出来ない。
以上のことを踏まえ二人は打ち合わせをすると、静かに前に進みゆっくりと扉を押して開いた隙間に身体を滑り込ませた。
広い室内は他とは違い赤い絨毯が敷かれ暖色系の照明が灯されている。中央には件の球体があり、それ以外のインテリアは何もない。
二人は警戒態勢を維持しながら球体に近づいた。
そして、球体から少し距離を取りそれを観察する。
それは直径約一メートルのサイズで、黒光りしながら五十センチほどの高さに浮き上がり、ゆっくりと回転していた。
「マジで何だこれ?」
「上から吊ってるってわけでもなさそうだな。」
頭を抱えるジャックに、球体を浮かせられるような仕掛けを探すランス。
「どうですか?何かわかりましたか?」
向かいの建屋で監視を続けるミツバから通信が入る。
「全くわからん。ローブの男を締め上げて聞き出すしかなさそうだ。」
ランスはため息混じりに返答した。
「おやおや、どちら様ですか?」
聞き慣れぬ声に二人が振り返ると、ローブの男が四名のゲリラを引き連れ部屋の入口に立っていた。
その光景にジャックは口角をわずかに上げ・・・
「探す手間が省けたな。」




