頑張ったようです
猫騎士に連れられ、ゴロリは玉座まで招かれた
部屋を囲うように大きな旗が飾ってあった
玉座は一段段差があったあとに存在し
金と赤でいかにもといった色の椅子であった
玉座には部屋の中心に赤い絨毯があり
王の前ではそこは踏んではいけない
とゴロリは猫騎士に注意されていた
「表をあげよ」
「はい」
王の言葉に、跪きながら猫騎士は答えた
ゴロリも跪きながら、無言で顔を王に向けた
まず、ゴロリが驚いたのは
王が王冠を腕輪の様に着けていることだった
歳も中年くらいで、王にしては若いと感じた
何より、回りにいる幹部は
艶めかしい女性か筋肉質の男性の両極端であったので
なるほどとゴロリは思った
「その者がシノズカゴロリか」
「はい」
王が聞くと、猫騎士が答えた
どうやら本当に応対してくれるらしい
ゴロリは少し複雑な気分になった
「……先の戦いにて
その者は大きく貢献したそうではないか」
「いいえ。滅相もございません」
「我輩は嘘を嫌う……知らないわけではあるまい」
猫騎士があっさりと否定して
王は言葉を険しくしたように思えた
大丈夫なのか。ゴロリは心配していた
「……わたしはシノズカゴロリが
フール公に背負われているところしか見ておりません」
嘘はいってないな
ゴロリは感心するように前にいる猫騎士を見た
「……一度目にもフールは存在したが
被害は甚大であったと聞く」
「今回は竜の加勢が大きかったのではないかと」
「竜?」
……案外頑張ってるぞ
猫騎士の言葉に王が食いついて
ゴロリは少し安心していた
「……アベル・ドベッカ・ローズ
ケルル・ドベッカ・ローズの母親です」
女性でアベルとはどんな名付けだ
ゴロリは他人事のように思った
「ふむ。ではその者に褒美をやらねばならぬか」
「はい」
褒美だったのか
ゴロリは少し損した気分になった
「捜索せよ」
「へ、陛下、その者は巨大な竜であり……」
王の思わぬ指令に、猫騎士は分かりやすく動揺した
無理もないかもしれない。ゴロリはそう思った
「王城前の広場におろそう」
「し、しかしっ、そこには商人達が!」
「そんなもの我輩が直々にいっておく
それでよいな?」
「は、はい……」
王の言葉に体を小さくする猫騎士がいた
ゴロリはそんな猫騎士をみて
受付の男が顔を真っ青にした理由が分かった気がした
「では下がって良い。頼んだぞ、サラ准尉」
「お、仰せつかりました……」
やっぱり偉いんじゃないか。ゴロリは少し思った
猫騎士は立ち上がると、深く一礼して踵を返した
ゴロリも真似しようと、立ち上がった時であった
「ゴロリ、貴様の名は覚えたぞ
気が変わったらいつでも来るが良い」
どんな意味だ。王の言葉にゴロリは少し背筋が冷えたが
自分が笑顔と思える顔を浮かべ、一礼して踵を返した
「……なぜあんなことを?」
「さあな」
階段を降りきった辺りで
先頭を歩く猫騎士にゴロリは問いかけたが
猫騎士はとぼけるようにいった
「……正直、どこかに配属されるのかと」
「その力を過信しすぎじゃないか?」
その感は否めない
猫騎士の言葉にゴロリは少し思った
「……アケミとケルルには
俺がいないでも生きていけるようにしたい
というのが本音だ」
「そのためにだったら何にでもなると?」
「そうだ」
猫騎士はゴロリが言い終わって少し立ち止まった
「……聞かなかったことにしてやる」
そういって足早に歩き出す猫騎士の背を
ゴロリは追いかけた
「どうやってあの竜を見つける気だ?」
「貴様達のおかげか、竜の反乱はおさまった
山をしらみ潰しに調べてあの竜を見つける」
結構大変そうじゃないか
ゴロリは猫騎士の説明に社畜時代の自分を重ねた
「なにか手伝うことは?」
「……ケルルがいれば話が早いが」
「わかった。少しケルルと相談してみよう」
「ま、まさか本当に……」
ゴロリは猫騎士にああと短く返事をすると
立ち止まった猫騎士を追い抜かして、先を進んだ




