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〇〇一 女神の舞踏会



 瓦礫と化した城の中庭で、女がひとり舞っている。


 数時間前までは整備されていたであろう石畳や花壇は紅に染まり、かつての栄華は見る影もない……。


 満天の星空の下で踊るその姿は、妖艶でありながら狂気に満ちていた。


 声を発する者はいない。

 息づく者すらいない。


 観客となったのは、山のように積み重なった屍だけ……。

 彼らは文字通り死んだ目で、女の舞いを見つめている。


 女が軽快なステップを踏みながら観客(しかばね)の山に近付く。

 赤いヒールが石畳を打つたび、コツコツと楽しげな音が響く。


 女の手には、長い柄。


 その先端には、鎌。


 知る者が見れば一目で分かる……。

 死神が携える得物(ぶき)だ。


 女は声なき観客(しかばね)に向けて、鎌を振り下ろす。


 歓声の代わりに舞い上がるのは、淡い光と血飛沫。


 光が宙を舞うたび、女は愛おしそうに微笑む。


 ――これは彼女が主役の舞踏会。


 誰にも邪魔できない。

 邪魔できるはずもない。



 やがて女は踊り終え、その場に静かに立ち尽くした。


 すると、黒い獣が足元へと歩み寄ってくる。


 女はしゃがみ込み、武器を置き、黒い獣の頭を撫でた。


 黒と黄色のオッド・アイ。

 二本に分かれた立派な尾。


 黒猫だった。


 どこから来たのか分からない。

 だが、まだ生きた存在があったことに、女は心底嬉しそうに微笑む。


 黒猫を優しく両手で抱え上げ、立ち上がる。 


 そして――


 床へと叩きつける。


 さらに、足で頭を踏み潰す。


 ぐしゃりと、湿った鈍い音。


 黒猫の身体は砕けることなく、光の泡となり星空の中へと溶けていった。


 まるで最初から、存在しなかったかのように……。

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