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ライラと『私』の物語【完結・後日談投稿中】  作者: GiGi
後日談 前編 第六章
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魔神復活 04 —深淵—









「……エリス……離せ、私も、行く……!」


「もう、セイジ! あなた、落ちたら死んじゃうでしょ!?」


 氷竜ルーの背中の上で、誠司はエリスに羽交い締めにされていた。


 ——リナの姿を見つけ、躊躇なく飛び降りたレザリア。そして、その後を追うように飛び降りたライラとグリム。


 残していったグリムの端末は、息をついて誠司の足を押さえつける。


「安心しろ、誠司。とりあえず皆は無事だ。むしろ、私たちまで参戦すると、状況が悪化する恐れがある」


 そのやり取りを憮然とした表情で聞いているバルカンの眉がピクリと動いた。


「……まさか、復活しちまったのかい、魔神がよ」


「ああ、そうだ。現在私たちは、魔神クワオアーと交戦中だ」


 バルカンは大袈裟に息を吐き、立ち上がった。そして、竜の背から飛び降りようと——


「——『麻痺毒の魔法』」


「……ぬおっ!……ぐっ、ジョヴェディ……!」


 身体が痺れ座り込むバルカンをチラと見て、併走しながら飛ぶジョヴェディは鼻を鳴らす。


「青髪よ、ワシが行く。それなら文句ないじゃろ?」


「ああ……と言いたいところだが、すまない、ジョヴェディ。今だけは私の指示に従ってくれ」


「……何故じゃ?」


 グリムの言葉に眉をしかめるジョヴェディ。グリムは静かに目を瞑り、厳かにつぶやいた。


「——ヤツは……女神像戦で私たちを苦しめた、あの『色彩』の力を使う」


「…………!!」


 その場にいる者、全員が息をのむ。


 それぞれの『厄災』の力を、乗算的に強力にしたような攻撃、『色彩』。


 あの時の光景を思い出し、すっかり動きを止めてしまった皆を、グリムは真剣な眼差しで見つめた。


「なので、慎重に動く必要がある。今現在、私がクワオアーに接触中だ。情報が集まり次第、私たちの動きを決める」









 駆けつけたグリムの端末たちは、クワオアーを取り囲んだ。それを虚ろな瞳で眺めながら、彼はつぶやいた。


「……羨ましいね、そこまで同時に動かせるなんて。ボクにはできない芸当だ」


「……キミも同じようなことができる、という認識で問題ないかな?」


 一体のグリムの端末が、短刀を構えながらクワオアーへと駆け出した。その刃を避けようともせず、肩口から斬られるクワオアー。


 しかし、飛び退くグリムを眺める彼の身体は、瞬時にして再生を終えていた。


「ボクは、君たちの世界で言うところのシングルタスクというやつでね。同時に複数の身体を生成したとしても、ろくに動かせないんだ。だけどね——」


 クワオアーの身体が、消えた。直後、一体の端末の背後に彼は現れた。


「——だからこそ、『深淵』にたどり着けたとも言える」


 グリムの端末に、クワオアーの手が触れた。その端末の動きは止まり——


 ——そして、まるで最初からいなかったかのように、その端末は消え失せた。


 クワオアーを取り囲み直した端末たちは、短刀を構え直しながら汗を滲ませる。


「クワオアーとやら。キミの言う『深淵』というやつは、もしかして『次元の境界』のことかい?」


 流れる風が頬を撫でる。静かに目をつむったクワオアーだったが——やがて彼は、肩を揺らし始めた。


「そうだよ。元アーティフィシャル()インテリジェンス()、グリム・イースターリリー。ボクは情報次元を操作できる『情報の特異点』となったのさ。ここまで言えば、君ならわかるだろう?」


「……なるほど、ね」


 平静を装いながらも、グリムの心臓が跳ね上がる。


 一つの仮説の立証、それは、この世界の真実の姿。


 そしてそれは、目の前の彼が冗談ではなく『星一つを消し去る』ほどの力を持つ、その可能性があることに他ならなかった。


 グリムは息を吐き、クワオアーににじり寄った。


「それで、キミはなぜ、莉奈を殺そうとする? 彼女とは初対面だろう?」


「それに答える必要は、ない」


 クワオアーが腕を振ると、『色彩』が瞬く間に円状に渦巻いた。蒸発していくグリムの端末。


 かろうじてかわした一体のグリムの端末を横目に、クワオアーはリナへと向かい歩み始めた。


 グリムは端末を生成しながら、クワオアーに回り込む。


「待て。それほどの力を持っていながら、なぜ手加減をする? キミなら簡単に、全ての私の端末を消し去ることができたはずだ」


 その質問にクワオアーは、感情のこもっていない瞳でグリムを見据えた。


「必要がない、からさ。別にボクだって、無駄に人を消したいわけじゃない」


「なら、なぜキミは『世界の滅び』を——」


 グリムの言葉を遮り、クワオアーはつぶやいた。


「……菱華莉奈には、ここで消えてもらう」








「——来るぞ、莉奈!『空間跳躍』で、逃げ続けろ!」


「ええっ!?」


 その言葉と同時に、クワオアーはリナたちの前に瞬時に現れた。


 合流していたティノアを横目で見て、クワオアーはリナへと手を伸ばす。


「『空間跳躍』!」


 リナは本能で離れた場所へと空間跳躍をした。いや、してしまったが——いけない、あそこにはライラやレザリアが残されている。


 リナが再び元の場所へと戻ろうとした時——


 ——クワオアーはライラやレザリアには目もくれず、再びリナの前へと現れた。


 空間跳躍で逃げ続けるリナに、グリムの端末が叫ぶ。


「——莉奈、手短に伝える! ヤツは、仮説通り全ての事象を扱える! そして、何故か狙いはキミだけだ、絶対に捕まるな!!」


「だから、なんでえっ!?」


 触れたら、消失。それは、先ほどのグリムの端末で証明されている。



 地面から生えてくる影の手が、リナを掴もうとする。


 大地が隆起し、リナの行手を阻む。


 石の牢獄が、リナを捕らえようとする。



 その『厄災』をも彷彿とさせる攻撃を、全て『空間跳躍』でかわしていくリナ。



 やがて。



 距離を空け、睨み合うリナとクワオアー。


 リナの額に、汗が滲む。冷酷な瞳で、クワオアーが見据える。


 互いに隙をうかがいあう二人だったが——



 ——その時、空間が揺らいだ。



 警戒し、跳躍しようとするリナだったが、この揺らぎ方はまさか——



 リナは上空に視線を向ける。目の前のクワオアーが眉をしかめる、その時だった。


 上空から降ってきた空間を断つ刃が、避ける間もなくクワオアーを両断した。



「——ねえ、魔神さん。リナを、いじめないでよ」



 宙に浮く、白の少女——ライラだ。





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