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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出し中は好きにやらせていただく 13

「さあ! ついに戦場の友情、全国大会地区予選も決勝戦になってしまいましたぁああッ!!」



ゲーセンの一角の特設ステージには地区予選というのに、たくさんの見物客で賑わっていた。


それほどまでに戦場の友情というコンテンツが人々の注目を集めているということが伺える。



「ここまでに総勢50組のプレイヤーたちが腕を競い合い、激闘を繰り広げてきました! そして遂にその頂点に立つチームが今まさに決まろうとしております!! 」



大会の総合司会者の女性も観客の興奮を煽りながら司会をするため、観客の盛り上がりは既にピークに達していた。



「それでは決勝戦まで勝ち進んだ2組のチームを紹介しましょう!! まず最初は、白兵戦こそ男のロマン! 「地に足付けた血みどろの戦いを俺たちは求めている」好きな作品は第06小隊、チーム『戦慄の07小隊』!!!」



司会者の紹介を受け、相手チームがステージの端から登場する。 3人ともこれと言って特徴のない男3人組だ、年齢は俺たちより3つか4つ上くらいだろうか、とりあえず親しみを込めて『スッとぼけ3人組』と呼ぼう。



「対するは! 戦場を駆け抜ける女神が2人、その美貌と強さに既に多くのファンが付いている、誰が予想しただろうか今大会のブラックホース、チーム『莉奈と歩美と、愉快な仲間』!!!」



チーム名を大々的に呼ばれ、ステージの端から中央に進み出る。


チーム名についてだが、あえて突っ込まないでほしい。


西野が大会の参加を申し込むときにチーム名をどうするか聞かれたのだが、適当に2人で決めてくれと言ったばっかりに、まるで嫌がらせかのようなチーム名になっていたのだ。


俺がこの事実を知ったのは大会が始まってからで、その時の西野と歩美の必死に笑いを堪える顔ときたら…


いつか目に物みせてくれるわ…!


今の紹介にあった通り、西野と歩美にはプレイヤーの大半が男という中の珍しい女性プレイヤーで、尚且つ美人ということもあり、観客の中には大会よりも西野と歩美を見るために応援している人も少なくないようで、黄色い声援を受け、2人はそれに応えるように手を振って歩いている。


反面、一緒に歩いている俺にはカメラを持ったオッさんから「どけ!邪魔だ!」と、怒鳴られたり、何もしていないのにブーイングが起こったり、今まさに世の中の理不尽さを思い知らされているところだった。



「初めまして、チーム『戦慄の07小隊』隊長の七谷だ、皆なからは『ナナベエ』って呼ばれてる。 まさか、こんなに素敵なレディーたちがお相手だとわね… この戦い、もし俺たちが勝ったら連絡先を教えてくれないかな?」



またしても1人、身の程知らずが自ら地雷原に飛び込んで来やがった。



「どちら様ですか? 馴れ馴れしく話しかけないでくださる?」

「ボッコボコにして死体蹴りしてやるわ」


「ひぃいッ!?」



歩美と西野の華麗なワンツーが炸裂し、相手チーム全員青ざめた顔してるぞ、まだ戦闘前だってのに可哀想に…



「それでは各プレイヤーの皆さん、スタンバイよろしくお願いします!」



チーム同士の挨拶もそこそこに、それぞれ割り振られたゲーム機の中に入り、戦闘準備に取り掛かる。



「歩美、西野、準備はいいか?」



ヘッドセットのマイクでチーム内通信を行う。戦闘中は常に回線を開いておき、連携を取り合うのがチーム戦の基本だ。



「いいわよ! あの特徴ない顔して、ゲームだと上から目線のいけ好かない野郎を叩き潰してやるわ!」



決勝戦だからという訳でなく、相手が気に入らないからという理由で熱くなっている西野だが、毎回相手チームから何かしらのアプローチを受けているから鬱憤が溜まっているのだろう。



「歩美はどうだ?」

「こっちもオーケーよ! もうすっかりデュナメスヴァルキリーの操縦が手に付いてきた感じ!」



正直ここまで何の苦労もなく勝ち進んできたのだが、歩美の活躍が凄まじく、俺はほとんど何もしていなかった。


まさか超遠距離射撃タイプがここまで歩美にはまるとは思ってなかった。でもまあ嬉しい誤算だな。



「よし、じゃあ最初はフォーメーションFで相手の出方を見よう」

「「了解!!」」



「入月勇志、ダンガムデスゲイズ行きまーすッ!!」

「西野莉奈、ヴァーチェカスタム出るわよ!!」

「桐島歩美、デュナメスヴァルキリー行きます!!」









「ナナベエくん、さっきのはやり過ぎだよ~」

「そうですね、ナナベエは可愛い女子に目が無いですからね」


「うるせぇ! ハカセとボーちゃんだってあの2人に見惚れてたろッ!?」



こいつらは行動は起こせないくせに、人のやる事にいちいち文句を言いやがる。


まあでも、こいつらとは昔からの馴染みだからお互いに言いたいことを言い合える。そういう関係だからこそ、ここまで大会を勝ち進んで来れたんだろうな。



「よっしゃ! とにかくこの決勝戦を勝って、晴れて全国大会の切符を手に入れて、そんでもって相手チームのカワユイ女の子の連絡先までゲットしてやろうぜ!!」


「もうナナベエくんたら」

「しょうがないですね、連絡先はともかく全国大会への切符は手に入れましょう」


「それじゃあ行くぜー? ナナベエ、Ez-7出るぜ!!」



愛機のEz-7を駆り発進した先は見渡す限りの草原、奥には山脈が並び、対戦のステージでなければこのまま気が済むまで、目の前の雄大な景色を眺めていたいほどだ。



「決勝戦のステージは高原みたいだな」



通信回線を開き、感度チェックも含め他のメンバーに話し掛ける。



「ステージの割合は草原が70%、山が20%、残りは湖という構成ですね」

「やったー! 僕このステージ得意なんだー」


早速2人から応答があり、レーダーでそれぞれの位置を確認するが、かなり広いステージにも関わらずスタート位置はそこまで離れていないようだ。



「お前らレーダーに反応あるか?」


「こちらは反応なし」

「僕も反応ないな、作戦通り僕が索敵範囲を広げなが… あッ!? ア゛ァアアアアァアァァァ!!!」


「どうしたボーちゃん!? ボーちゃん返事をしろ!!」


「そんな… ボーちゃんがやられた…?」

「バカ言うな!! レーダーには反応無かったはずだろッ!!」


「まさか… 超高精度遠距離射撃?」

「レーダーの範囲外からだって言うのか!? そんなもん相手だってロックオンカーソルの恩恵がねえじゃねぇかッ!!?」



まさか、大会にそんなピーキーな機体を使ってくるやつがいるなんて…! 油断した!!


すぐに状況を整理し立て直しを図ろうとするが、ボーちゃんを失ったのは大きい、本来ならボーちゃんが広範囲索敵を仕掛け、先制攻撃で畳み掛ける手筈のはずだった。



「とにかく、ここにいたらいい的だ! 散開して各個撃破に切り替える!!」

「了解!」



散開するために機体を動かした瞬間、射撃警告のアラートがけたたましく鳴り響く。



「くッ!」



背部を掠めたビーム射撃が草原に当たり、地面を抉る。


今、動いていなかったら確実に当たっていた! その光景を想像すると背筋がゾッとする。


だが射手の居場所はわかった。



「あの山の頂からのようです!」

「クソ! あんなとこから撃ってきてんのか? バケモノだな」


「とにかく遮蔽物のある所へ移動を! ……ん?、今何かにぶつかっ……」


「おい、ハカセ? ハカセ!! 」



何だハカセがレーダーから消えた? 考えられるのは相手の索敵阻害、または撃墜されたかだ…


だが、今は足を止めることは許されない! 超高精度の遠距離射撃が俺のことを狙っているからだ。


機体を動かしているうちに岩陰が散在する地帯を見つけ、迷わず避難を試みる。


いや待てよ… ここはさっきハカセがレーダーから消えた地点じゃねぇか?


だが周りには岩陰が散在するだけで何もないし、レーダーにも反応はない。


とにかくこの地点に相手を誘導し、ここで各個撃破を狙っていけばまだ勝機はある!


俺はこのエリアにトラップを仕掛ける事にして、手頃な設置場所を決めるため周りを見回していると、視界の端が歪んだような気がした。



「ん? 今視界が歪んだような気がしたが気のせいか」



レーダーにも相変わらず反応はないし、トラップ設置のため手元に視線を落とすが…



「え? 腕が… ない…!!??」



先程まであった筈の両腕が肩から先がまるで切り取られたように損傷していた。


損壊度を示すモニターにはいつの間にか両腕が大破したという赤いアラートが物凄い勢いで点滅している。



訳も分からず視線を前に向けると、そこには何もない所に機体の全長を越えるほどの長さの杖のようなデバイスの先端から緑色ビームの鎌状の刃が、獲物を見つけたかのように左右に揺られていた。



「死神の鎌、ビームサイズ…!? 」

「飛んで火に入る夏の虫作戦、それがこのフォーメーションFだ」



ビームサイズが俺のEz-7の首元に掛かると同時にオープンチャンネルで通信が入る。


すると、ビームサイズを構えるような姿勢で隠されていた相手の機体がゆっくりと姿を現していく。


全てを飲み込むような漆黒の塗装に黄色く鋭い眼光、首から下にかけてマントのような物を装備したダンガムタイプの機体、この機体を一言で言い表すなら『絶望』という言葉が相応しい。



「まんまと死神が待つ地獄へと誘い出されたってわけか… 」



超遠距離射撃を回避する為に、岩陰が散在するこのエリアに逃げ込むことを予想し待ち伏せされたというわけか。


だが、一つ納得出来ない事がある。



「何故お前の機体はレーダーに探知されなかった?」

「ああ、スーパージャマーを搭載してるからだよ」



スーパージャマー? 電波妨害装置を搭載していたからレーダーに映らなかったのか、だが…



「それなら何故目視出来なかった!? スーパージャマーにはレーダーには映らなくても姿を消す能力はないはずだ!」


「ミラージュコラルドシステムも組み込んである」


「ミラージュコラルドシステム!? そんなハイコストなシステムを組んだら、ほとんどコストが残らないじゃねぇか!?」



ミラージュコラルドシステムは簡単に言えば光学迷彩だ。停止している状態であれば人の眼であっても視認することは難しいとされている。


故に、このシステムのコストはかなり高く設定されていて、大会のような上限コストが定められているところではまず装備するやつを見たことがない。



「なあ、そろそろ終わりにしていいかな? さっきから通信でチームメイトが早くしろってうるさくてね」


「まだだ… まだ終われねぇぇえええ!!!」


「悪いがもう終わってるんだ、グリーンピースのない明日のために贄となってくれ… 」

「なッ!!??」



Ez-7を動かそうと全力でコントローラーを動かすがビクともせず、脱力するように落ちた視線の先には、ビームサイズの鎌の部分とは逆の先端部から突き出たビームの刃に貫かれたEz-7のコクピットが映りゲームオーバーになった。



「負けた… 俺たちが一撃も与える事が出来ずに負けた…?」














「バトルエーーンド!!! 優勝はー、『莉奈と歩美と愉快な仲間』チームぅ!!! 」



会場が大歓声に包まれる中、ゲーム機から会場へと出ると、西野と歩美も既に出てきていたようで、3人でそれぞれの顔を見渡しハイタッチを交わす。



「私の出番が何にもなかったじゃない!」



ハイタッチを交わした後、思い出したように剥れる西野。


西野には山頂から射撃をする歩美の護衛をしてもらっていたため、今回は出番なしだった。



「いや~ ごめんな~、相手が裏をかいて真っ先に歩美を落としに来るかと思ったんだけどな~、全然大丈夫だったな!」


「まあ勝てたからいいわ、それにしても歩美、ナイス射撃だったじゃない!」


「私もびっくりした! 何て言うんだろう… そう、快っ感… 」


「お、おう… 歩美その~… ほどほどにな?」

「何が?」


「いや、別に… 」



どうも歩美は禁断の扉に足を踏み入れ掛けているような気がするが、いつの日か戦闘狂のバーサーカーにならないことを祈ろう。



「それでは優勝した『莉奈と歩美と愉快な仲間』チームには全国大会本戦への参加チケットを贈呈いたしまーす!」



何だかんだで地区予選を簡単に突破してしまった。


まさか、歩美のゲーマーとしてのポテンシャルがここまで高かったとは誰が予想できたろう。


元々何でも出来る歩美だから、ちょろっと本気を出せば新しいこともすぐにマスターしてしまう、才色兼備とは歩美のためにあるような言葉だな。



「それでは優勝チームに一言コメントをいただきましょう! 今のお気持ちはどうですか?」



全然違うことを考えているところに突然マイクを向けられたため、咄嗟に言葉が出てこない。



「え? ええ、あ、はい… ありがとうございましゅッ!!」



何とか出てきた言葉がお礼ってどういうことだ、会話が成り立ってないし最後噛んだし恥ずかしい…


すると突然、俺のすぐ横に立っていた西野が司会者からマイクをもぎ取り、高らかに宣言を始めた。



「私たちは全国でも優勝するから、皆んな応援よろしくッ!!」



西野のあまりの声量にマイクがハウリングしてしまい、耳がキーンとなる。


流石に会場もドン引きかと思ったが、一瞬の静寂の後、再び会場が沸き上がった。



「よく言った! お嬢ちゃん!!」

「応援してるぞ~!」

「全国でも絶対優勝しろよーッ!」

「莉奈ちゃん愛してる~!」

「歩美ちゃんこっち向いて~~ッ!」

「男、邪魔だ失せろー!」



おい、なんか途中からおかしいだろ! あと邪魔ってなんだ、邪魔って!!



かくして、俺たちは全国大会の出場権を獲得したが世間の風当たりが強くて心が折れそうです。


一つ言わせてもらうが、必ずしも美人と一緒にいるやつがリア充であるとは限らないんだからね!!

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