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(旧)マル才  作者: 青年とおっさんの間
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顔出し中は好きにやらせていただく 12

次の日からゲーセンにて歩美の戦場の友情の猛特訓が始まった。


正直、歩美とはあの気不味い雰囲気がしばらく続くと思っていたが、いつも通り朝一番に家まで迎えに来て、いつも通りに登校し、いつも通りに下校するという普段と変わらない様子だったため、逆にこっちが少しぎこちなくなってしまった。


いつもと違うところを強いて言うなら、やはり放課後のゲーセン通いだろうか。


ゲームなんてやったこともなければ興味もない、そんな歩美が日々ガップレの練習もなおざりにゲーセンでゲームをしているだから驚きだろう。


そんな甲斐あってか、歩美はメキメキと成長して、ベテランの西野とまだ勝てないながらもいい勝負をするようになっていた。



「お疲れ歩美、最後の射撃は中々良かったよ」


コクピット型のゲーム機から一戦を終え出てきた歩美にペットボトルのジュースを渡しながら話しかける。


俺からジュースを受け取った歩美は、二口ほど喉を潤すようにゆっくり流し込み、ひと息ついたところで俺に答える。



「ありがと、もう少し遠距離から正確に当てられるようになれば良いんだけど」



ロングの黒髪を後ろでギュと縛り、お決まりの黒縁眼鏡がよく似合うモデル体型の女の子が、男臭いゲーセンの男臭いゲーム機から出てくるだけで周りの注目を集める。


そんな戦場の女神と一緒にいる俺に、嫉妬やら怒りの視線がグサグサと刺さるのはいい気分とは言えない。



「そろそろ歩美も専用機をカスタマイズしたら良いんじゃない?」



1人だけでもこの有様なのに、もう1人の戦場の女神が後から出てきて、俺と歩美の中に加わり、テーブルの上に置いた自分のジュースを探しながら歩美に話しかけてくる。


その瞬間、さらに威力を増した嫉妬と怒りの視線の集中砲火を浴びせられる。


ゲームの中だけでなく、リアルでも戦場だなんて、そこまでリアルにスリリングは求めてないんだけどな…

早めにこの周りの視線をシャットアウトする術を習得せねば、俺の心が持たん。



「専用機? カスタマイズ? 」



そんな俺の悩みも知らず、頭の上にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げている歩美に簡単に専用機について説明することにする。



「専用機は自分だけのオリジナルの機体を組み上げたもので、機体の特性や武装、様々なパーツをカスタマイズして組み上げるんだ」


「じゃあ自分に合ったパーツや武装を組み合わせれば、より戦いやすくなるってこと?」


「その通り、人によっては見た目を重視して組み上げたり、とにかく強いパーツを組み合わせたりする人もいるけど、やっぱり歩美が言うように使いやすくて、自分に合ったパーツや武装の方がいいと思うよ」


「それぞれのパーツにはコストが設定されていて、通常はコスト制限はないんだけど、今度の大会は公平を保つ為にコスト制限があるの、だからそこも注意して専用機をカスタマイズして」



ジュースを飲みながらそれとなくアドバイスをする西野、なんだかんだで歩美に気を遣ってくれているのがわかって少しニヤけてしまう。



「西野、それ俺の飲み掛けジュースなんだけど… 」

「ブッ!? ゆゆゆ勇志とかかか間接キス…… も、もう口付けちゃったから私が貰うからねッ!!」



勝手に人の飲み掛けのジュースを飲んでおいて貰うとはなんて横暴なんだろうか。



「いいけど、代わりに西野の飲み掛け貰うからなー」

「えぇ!? ちょっと!… 勇志が私の飲み掛け… 間接キス… 」



西野は何故か赤い顔をしてモジモジしているが、歩美の方は一度にいろいろ話をされたのを必死に頭の中で整理しているようで、テーブルに向かって攻略サイトを見ながら頭を抱えていた。



「なんとなくわかったけど、まだちょっと難しいかな」


「それなら俺が一緒にカスタマイズしようか?」

「うん、お願い」



歩美とまだモジモジしている西野を連れて近くのライブモニターに行き、歩美のI.D.カードを差し込む。

メニューから専用機のカスタマイズ画面を呼び出し、細かな設定をしていく。



「歩美は射撃が得意だから専用機も射撃よりで組んだ方がいいと思う」


「私もそう思う、私は高火力砲撃型で勇志が近距離特化型だから、歩美は遠距離射撃か射撃より万能機ってとこね」



俺の提案に乗る形で西野が補足を加える。



「そう言われても、どっちがいいのかさっぱりわからないんだけど… 」



本当は歩美のやり易い方で機体を組み上げたいのだが、大会まで時間もあまりないし、歩美の個性を伸ばす方向で決めた方がいいだろう。



「万能機だと戦況に応じて臨機応変に動かないといけないから、歩美には少し厳しいかも知れない、西野の専用機は装甲をパージしてスピード型になれるから、その役は西野にやってもらうとして、歩美は遠距離射撃型が良いんじゃないかな」


「そうね、その方がチームとして安定するわね、でも歩美の防御はどうするの? 」



射撃特化した分、相手に近距離に入られると為す術なく落とされるということは珍しくない。そのため、味方に防御もできる万能機がいると安心なのだが、さてどうしたものか….




「相手に見つかる前に落とせばいいんでしょ?」



なんか歩美が物騒なことを言っているが、待てよ…


「そうか! 超遠距離射撃型か、その手があるな!」


「相手レーダーの索敵範囲外からの超遠距離射撃なら近付かれる前に落とせるわね、でもかなりピーキーな機体になりそうだけど歩美に操縦できる?」


「やってみるわ!」


「早速組み上げていこう、大会仕様でコスト制限を掛けるから、かなり尖った性能になると思う、とにかく体に馴染むまで乗り回してくれ」


「そもそも、うちのチームは尖った機体しかいないから心配いらないわよ、慣れるまでトコトン付き合ってあげるわよ、歩美!」


「次こそ莉奈に勝ってやるんだから!」



この2人は本当に仲が良いな、いつの間にこんなに仲良くなったんだ? まるで努力、友情、勝利の熱血少年漫画の主人公とライバルみたいな会話だ、俺にもそんなライバル欲しいところだ。


そんな2人を横目に俺は歩美の為の専用機をせっせと組み上げていく、性能のパラメータを見ても、かなり尖った機体になってしまったが、歩美なら使いこなせるはずだ。



「よし、できた!」

「本当!? 」

「私も見たい!!」


ライブモニターに向かって立っていた俺に向かって、西野が右から、歩美が左から画面が見えるようにと俺を押し退けようとしてくる。


「わかったわかった!退くから!押すなってッ」



何とか2人の間から抜け出しひと息つく、両腕には女の子独特の柔らかさの感覚が残っていて、嫌でも男心を刺激する。全くけしからんですよ、全く。



「うわ〜、すごーい強そう! 早く使いたい!!」



すっかり歩美の発言がゲーマーっぽくなってるな、本当にこのまま俺のためにゲームをすることが歩美にとって良いことなのだろうか…



「ねえ、ちょっとこれカッコ良すぎない?」



一通り性能まで目を通していた西野が性能面ではなく外見の方に物申してくる。



「え? そりゃあどうせならカッコ良く

と思って… 」

「女子が乗る機体なんだから、もうちょっと女性的なラインとかカラーにしてくれないと! ね?歩美」


「ええ!? そ、そうね、どうせならカワイイ感じがいいかな… 」

「じゃあココをこうして、こうすればどう?」


あ゛ぁああ!? 西野が勝手に塗装を変えている。

超遠距離射撃だから目視しにくいようにミリタリーカラーを基調にしたのに〜。



「できた! どうかしら?」

「いいわね! なんか聖騎士みたいでキレイで凛々しい感じ!」


俺も気になって2人の後ろから画面を覗くと、見事なまでの白にパーツの枠や線が金色に輝いていた。確かに聖騎士のような見た目だが、念の為に言っておくけど、近接攻撃が一切出来ない、超遠距離射撃型だからね、剣持ってないからね。



「名前はどうするの?」

「そうね、ベースの機体の元々の名前は何ていうの?」


「ああ、ダンガムデュナメスだ、かなり弄ってるから性能は後継機のケルディムに近いけどね」


「じゃあ、デュナメスと女戦士っぽくヴァルキリーを合わせて、『デュナメスヴァルキリー』って言うのはどうかしら?」



『デュナメスヴァルキリー』か、なんかカッコいいな、歩美のやつ中々ネーミングセンスあるな、今度俺も新しく専用機作ったら名付けてもらおうかな。



「いいんじゃないか」

「よし、決まり! 莉奈、早速試運転付き合ってくれない?」


「望むところよ!」



そう言うと2人はそれぞれゲーム機の中に飛び込んで行った。

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