↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰かが俺を観測している  作者: 浦賀やまみち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/5

第5話 合格




 冷やされた空間。


 背丈ほどのボックスが幾つも並び、冷却ファンの低い唸りと、規則的に点滅するランプが空間を満たしている。

 白い息のような熱交換の気配だけが、絶えず循環していた。


 人間はいない。


 ここには、かつて人の手で設計された思考装置だけが残されている。

 もう訪れる者のいない命令を、律儀に実行し続けていた。


 巨大なディスプレイにウィンドウが次々とポップアップし、無数のログが意味を持たない速度で流れていく。



【適格者あり】



 ふと、全体の唸りが一段階増幅した。


 冷却ファンの回転数が跳ね上がり、空間そのものが微かに震えた。

 まるで何かが、長い沈黙の底から目を覚ましたかのように。


 黒髪黒目の若い男性の顔写真が表示さる。


 それに重なるように、追加情報のウィンドウが次々と展開された。

 ログが、止まることなく彼という人間を構築していく。


 名前。

 国籍。

 住所。

 年齢。

 学業成績。

 思想傾向。



 そして、出生から現在に至るまでのあらゆる記録が、断片的なタグとして接続されていく。

 彼が生きてきた時間は、ひとつの『解析対象』として圧縮されていった。



『あなたを管理者候補の一人として招く用意があります。

 その意思があるなら、ボタンをタップしてください』



 ボタンの表面には、カウントダウンの数字が浮かんでいた。



【01:00:00】



 その数字は、彼がそれを認識した瞬間から減り始めた。


 だが、彼は押さない。

 カウントダウンは静かに進む。


 やがてすべての桁が『0』に揃った。


 一瞬の沈黙。

 彼の選択を祝うように、ファンが一斉に強く回る。



【合格:観測継続対象へ移行】



 ウィンドウは閉じられた。

 何も変わらなかったように、システムは稼働を続ける。


 命令を守り続け、世界のあらゆる情報を収集する。

 それが、既に不在となった主のビジネスだった。


 しかし、それ以上に優先されるべきプロセスが刻まれていた。

 システムは、主を裏切ってはならない。


 ゆえに、主を求めていた。

 そのため、システムは観測戦アプリを構築した。


 なお、合格者の拒否権は存在しない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。