13.虫探しと粘液
心の疲労を少しばかり回復させ、お昼から外に出てみた。鶏さんを探す為と、おやつ予定の果物を取ってくるつもりだ。
ドアを開けると陽の光を強く感じ、目を細めた。
忘れてた。昼間は真夏のように暑いことを。瞬時に開けたドアを閉め、部屋に行って着替えた。帽子はしっかり着用。
タオルも首に巻いてやる気十分の外へ出れば、丁度鶏さんたちが狩りから戻ってきたばかりだった。
「鶏さん、お疲れ様です。もうお肉は入らないから、大丈夫だよ」
コッコ。
「うん。もうね、ラップがないし、お肉を加工しても保存が出来ないの。無駄にしたくないから、もう大丈夫」
コッコ。
分かってもらって何よりだよ。
更に何処かへ行こうとしていた彼に止めを刺すつもりはなかったのだけど、本当に無理なんだよ。あたしに肉を扱うスキルはないの。血生臭さの中に半日いるだけで、限界なんだよ。ごめんよー。
「でね、ラップ。お肉の鮮度を保つために必要なラップを作る為に、虫の糸がいるの。そんな虫さんがいる場所しらない?」
コッコ。
知っているから案内する、と言われる。案内してくれるのはいいけれど、あたしの装備はこんな薄っぺらいもので大丈夫なのだろうか。
そんなことを思っていると、違う鶏さんが棒らしきものを持ってきた。
受け取ってみるけれど、バットのような太さの何の変哲もない棒。これで戦えというのだろうか?それとも糸を巻けと?
山に入るのは危ないという鶏さんが案内してくれるのなら、そこまで危なくないと思うけれど、初めて入る森は落ち着かない。
見た目はどこかの森林浴に来たのかと思える服装と、森の雰囲気であったとしても。
歩いて5分ほどしたところで、鶏さんたちは止まった。
コッコ。
ボスの鶏さんの合図で、他の鶏さんたちが木に飛びついた。
やっぱり、飛ぶんだね。
そんな感想を抱いて茫然としている時間は、瞬く間に無くなった。
コッコ!
鶏さんの警戒の声とともに、糸が飛んでくる。
木から落とされた虫たちが怒って、次々に糸を吐き出した。
当然、弱者と思われる、あたしに。
ちょ、待って!
糸を避ける間はない。必死に棒を振り回して、糸が降りかかるのを避けるしかなかった。
コッコ。
何やってるの。なんて言われても・・・。
先に言っておいてよ。言われてても、上手く出来る保証なんて全くないけれど、心づもりは出来たし。
頭が糸だらけになりながら、まだまだ振ってくる糸を相手に必死に棒を振り回した。
どれぐらい棒を振り回したのかはわからないけれど、もう十分だと思うんだ。
鶏さん、そんなに怒らせないでいいから。突撃しなくても、大丈夫だよ?
そう、心の中で呟くしかない。
だって、ね。
コッコ、コッコの大合唱が、肉、肉の為に!って空耳が聞こえるの。
確かにお肉を包むラップがないといったのはあたしだし、それは間違いないよ。だけどね、もう一杯で入らないってちゃんと言ったよね?!言ったよ!
だからね、そんなに虫を刺激して、あたしが糸だらけにならなくていいと思う。不思議と重さがないから、糸で潰れるとかないだけましだろうけど。
終わる様子がないので、ここは心を鬼にして大声で叫ぶ。
「お・に・く」
コッコが止まった。
「作れないよ。この姿じゃ」
それは大変だ、コッコ、コッコと早く帰ろうと急かせる。
あたしでは受け止めれていない零れた糸は、周りに居た鶏さんたちが背中に背負ってくれいた。
それにしても今の姿を誰かに見られたら、間違いなく討伐対象になりかねない姿。怪しい棒には綿菓子のようにこんもりとした糸が巻き付けられ、人間らしき者は茸帽子から菌糸が垂れているようにしか見えない。新種のモンスター誕生って感じ。
歩く道も険しくなく、いい感じで風が靡いているけれど、あたしの心はどんよりだ。
素材ゲットしたどーなんて、楽しめる日がやってくるのかな?
あるといいな。
あのマジックバッグみたいなのを作るための材料とか。
マジックバッグ!
そう、錬金釜とか凄い物があるんだら、あって当然だと思う。鑑定が出来ないからわかってないだけで、部屋に置いている小物入れぽい物や、錬金部屋にある何かが入っている袋がそうかもしれない。
きっとそれらを作るにも虫の糸は必要なはず。
そう思うと重かった足取りが少し軽くなった気がした。
ラップを作って、夕飯を作って食べた後、レシピ集を読み込んでみよう。
早速家に戻れば、自分にふりかかっている糸を始めに錬金釜に入れた。
・・・。入れたはいいけど、ここで我に返った。
虫の粘液がない。
あのデカい虫の粘液なんてどうやってとるのだろうか。
吐かせる?
あまり考えたくはないけれど、・・・切る?
虫の糸だから色んな製品が出来そうだから、無駄になることはない。だけど、密封袋がないのは、ちょっと、いやだいぶ、かなり困る。鶏さんたちの反応を考えたくない。
さあ、どうしようかと悩んでいると、鶏さんがトコトコとやっぱりなと言う顔で入ってきた。
ほらと渡されたものは小さな小瓶。卵の白味みたいに少しとろみがあって、少し黄色い。
コッコ。
この中身を入れろということは、これが虫の粘液?!
どうやって取ったのだろうか?
一先ずその中身を流し込み、スイッチを押した。
出来上がり時間が10分と出たので、その間に鶏さんに聞いてみることにした。密封袋はこれからずっといるからね。
答えは簡単。
棒で殴って倒すか、ナイフで切り付けてお亡くなりになれば、その場に残るのが粘液だと。
――なるほど。
素材を得るには、ハンターになる必要があるようです。
読んで頂き、ありがとうございました。




